皆様、ご無沙汰しておりました。一か月ぶりに美術展鑑賞であります。本日は府中市美術館にて5月10日迄開催中の「春の江戸絵画まつり ふつうの系譜 「奇想」があるなら「ふつう」もあります─京の絵画と敦賀コレクション」展の4月12日迄開催中の「前期」を観て参りました。その感想です。
いま、江戸時代の画家の中で、伊藤若冲や曽我蕭白ら「奇想の画家」が人気です。鮮やかな色やおかしな形にあふれた若冲の絵も、蕭白の奇怪な人物画も、強烈で奇抜で、心を揺さぶります。
しかし考えてみれば、「奇想」という魅力は、「そうではないもの」、つまり「ふつう」があって初めて成り立つのかもしれません。
実際、若冲や蕭白がセンセーショナルに登場した時代、一方には、誰もが美しいと思うものを描く画家がいました。平安時代に生まれた美に命を与え続けてきた「やまと絵」の流派の画家もいれば、中国伝来の水墨画の良さを浸透させた「狩野派」の画家もいます。また、若冲や蕭白と同じ時代に、同じ京で、未知の美に挑み、彼らに劣らない人気を得た円山応挙や原在中、岸駒らもいます。
敦賀市立博物館には、300点を超える江戸時代から近代にかけての絵画コレクションがありますが、若冲や蕭白の作品は一点もありません。いわば「ふつう」の美しさをたたえる作品が、徹底的に収集されているのです。
これまで、府中市美術館でもその一部を展示してきましたが、今回の「春の江戸絵画まつり」では、同館の全面的な協力を得て、選りすぐりの作品およそ100点をご覧いただくことにしました。
今迄「個人蔵」の借り出しが多くて画像を取るのに手間取っておりましたが、今回は敦賀市立博物館のコレクションと言う事で画像が集めやすかったのが嬉しい事でして「敦賀市立博物館 収蔵品データベース」
http://jmapps.ne.jp/tsuruga/ から画像をバンバンお借りしております。
それにしても、この一ヶ月正に息が詰まるような思いでいたので、こうして無事開催して下さって嬉しい限りでございます。ガラスケース越しでもやはり本物を観ると違うなぁと言うのが第一の感想でして、この一ヶ月間だけは東京に住んでいる身ながら地方に住んでいて思うように展覧会が観れない方々の苦悩が身につまされたのであります。
今回の特色は、流派別に江戸絵画のみならず明治期に活躍した幸野楳嶺や鈴木松年の作品迄紹介してあることでして、江戸時代からずれてしまうのは2015年に府中市美術館にて開催された「動物絵画の250年」と去年開催された「へそまがり日本美術」展以来の事であります。
流派別に並んでいるので「お勉強しています」感が強かったのですが、普段は時代の括りで展示されていて、琳派以外は割とバラバラに展示されてある作品を追っかける事が出来て、これはこれで新鮮でした。
やはり一連の流れを観ると自分が好きなのは円山・四条派の画家の作品でして、円山応挙先生の仔狗図をみると、あたかも我が家にワンコが出迎えてくれたような「ただいま」感があるんですよね。
この度の展覧会での収穫は岸駒から始まる岸派の作品と原在中から始まる原派の作品を纏めて観る事が出来て、これはありそうで実は無かった機会だったんです。岸駒さまは、四条円山派の勉強もしつつ、沈南蘋派の画風も取り入れたと言うことでその事が良く出ているのが『白蓮翡翠図』だと思っています。本作を観れたのが収穫の一つでありました。
そして、もう一つの収穫が幸野楳嶺先生の『雪中清水寺』を生で観れたことでして、久々に「美しい絵」を鑑賞出来ました。この方の弟子が竹内栖鳳画伯と言うのも頷ける話でありました。
http://fam-exhibition.com/futsu/
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