人付き合いができないフィンセント・ファン・ゴッホ(ウィレム・デフォー御大)は、いつも孤独だった。唯一才能を認め合ったゴーギャン(オスカー・アイザックさま)との共同生活も、ゴッホの行動により破たんしてしまう。しかし、ゴッホは絵を描き続け、後に名画といわれる数々の作品を残す。
この映画にゴッホの「伝記映画」を期待すると完全に外されます。これは見た人を感動させる為の映画では無くて、見た人が何かを拾う類の映画だと思って観た方が良いと思います。一言で言ってしまえば画家でもあるジュリアン・シュナーベルさまが脚本も書き、編集もして、作中の絵もお描きになって監督・製作迄してしまったのですからジュリアン・シュナーベルの「オレ様映画」(褒めています)であります。
この映画の主役はゴッホを演じていたウィレム・デフォー御大なんですが、実のところゴーギャンがこれほどまでに輝いている映画も今迄の「ゴッホ映画」の中には無くて、ポール・ゴーギャンを演じたオスカー・アイザックさまの熱演はもっと賞賛されても良いと思っております。
この映画の真の見どころは、150年近く歳月を経ても変わっていないアルル地方のロケでして、「ゴッホの描いた絵」の風景が其の儘再現されているのにはただただビックリ!
そして、予想外で嬉しかったのがルーブル美術館での撮影でして、ドノン翼のグランドギャラリーにてドラクロワの『アルジェの女たち』やジェリコーの『メデューズ号の筏』そして、ヴェネローゼ作ルーブルで最も大きな絵画である『カナの婚礼』等の絵が観れたのにはホント嬉しくて涙が出てしまいました。
そして、ゴッホが語る先達の画家。フランス・ハルス、ベラスケス、ゴヤ……それに合わせてイメージ画が流れるところも同様でして、自分の好きな場所は此処だったんだと再認識。
この映画を観ていると、ウィレム・デフォー御大が全身から幸せオーラを発散しているカットが何か所かあって、生涯を通じて不遇な生活でありましたが、内面的には不幸では無かったのだと思い、せめてあの世では兄弟仲良く暮らして行けると良いよねと思ったのでありました。
最後になりますが2019年のアカデミー主演男優賞は、『ボヘミアン・ラプソティ』のラミ・マレックさまが受賞しましたが、去年は『グリーンブック』のヴィゴ・モーティセン御大、『バイス』のクリスチャン・ベールさま、『アリー・スター誕生』のブラッドリー・クーパーさまと稀にみる高レヴェルの闘いであったと思います。『グリーンブック』を観た時は、『ボヘミアン〜』が無ければ受賞かなぁと思っていたのですが、今回本作を観て考えが変わりました。それほどのなりきりぶりであります。
https://gaga.ne.jp/gogh/
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