1950年代のロンドン。仕立屋のレイノルズ・ウッドコック(ダニエル・デイ=ルイス御大)は、英国ファッション界で名の知れた存在だった。ある日、ウエイトレスのアルマ(ヴィッキー・クリープス御嬢様)と出会った彼は、彼女をミューズとしてファッションの世界に引き入れる。しかし、アルマの存在が規則正しかったレイノルズの日常を変えていく。
この映画の題名になっている「ファントム・スレッド」とは、服の内側に忍ばせるお守りのようなものと後で読んで知ったのですが、監督であるポール・トーマス・アンダーソンさまは、自分にとりまして『ブギー・ナイツ』と『マグノリア』でものの見事に「ご縁の無くなった監督さん」になってしまったことを再追認する一本でありまして、同じ作風のものを金太郎飴の如く生産するのはクリエーターにとりまして苦行でありましょうが、最初の二作品が文字通り「わたしの為の映画」だったので「あっちの世界」に行ってしまったお姿を観るのは痛々しいのでありますが、本日曙橋で行われるミニコンサートでこの曲が掛かると知って観てみたんですが、やはり違っておりました。「あちら側」の世界に飛び込んでも、何らかのシグナルを受信出来たら良かったのですが、それも叶わず。今回主演されたダニエル・ディ・ルイス御大の引退作と言う事ですが、この人も映画に翻弄された人でして『マイ・ビューティフル・ランドレット』で映画デビューを果たして、『マイ・レフト・フット』で初のアカデミー主演男優賞を受賞。本作でもタッグを組んだポール・トーマス・アンダーソン監督の「あちら側の映画」の一本目である『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』で二度目のアカデミー主演男優賞を受賞。一時期、俳優業を引退してイタリアで靴屋の修行をしていたんですが、マーティン・スコセッシ監督に説得されて『ギャング・オブ・ニューヨーク』にてカムバック。これもアカデミー主演男優賞にノミネートされて2012年の『リンカーン』で史上初となる三度目のアカデミー主演男優賞を受賞。今回で引退後はファッション・デザイナーの道を目指すそうですが、今度こそ本当に引退されて静かな余生を送って欲しいと願っている御一人であります。
http://www.bitters.co.jp/phantomthread/
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