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2018年01月10日21:39

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【映画】人間は自分が観たいものしか観ようとしない『嘘八百』

鑑識眼はあるが、なかなかお宝に出会えない古物商の則夫(中井貴一さま)は、娘のいまり(森川葵御嬢様)を車に乗せて千利休の出生地である大阪府堺市にやってくる。彼はある蔵つきの屋敷へと導かれ、その家の主人らしい佐輔(佐々木蔵之介さま)と出会う。佐輔は則夫に蔵を見せることにしたのだが……。

騙したつもりが騙されてと言うお馴染みの話の展開なのですが、この作品がちょっと違うのは。お互いにとある老舗の古美術商から痛い目に遭った被害者同士であり、その古美術商をギャフンと言わせる為に贋物制作に勤しむのでありますが、作っている内に段々と本来持っていた創作意欲が湧いてきて「騙そう」と言う欲望が薄くなっている。何とかして一儲けしようと言う作品には何とも言えない厭らしさがどことなく付きまとうものですが、映画の中の楽茶碗を見ている限りでは、そうした「嫌なところが無い」んですね。映画の最後にBunkamuraギャラリーのスタッフが陶器の制作に関わっていたことが判るのですが「今様」の綺麗な器でございました。

最初の土を採るところだけは「まさか、それは無いだろう」と思ったものの、それ以外の工程はかなりキッチリと撮られていて轆轤を使わず手で作陶すると言う様式を踏襲しているように感じられたのであります。

それにしていても作陶に関しては昔の儘のイメージしか持たなかったものですから窯を作るところからはじめなくても、手頃なサイズの窯ってあったんですねぇ。

話が横道に逸れてしまいましたが、「大概の人間は自分の観たいものしか観ない」と台詞にもありましたが、この映画のオリジナルではなく。古代ローマ中興の祖であるユリウス・カエサルの有名な言葉。今回の真の悪党である二人が「観たいものを観る」様は留飲が落ちた気が致しました。

今回の設定でも文化庁の役人が登場し、重要文化財指定を付けるところなどは「永仁の壺」事件を彷彿とさせるものがありましたし、ボストン美術館にある「浮世絵の正倉院」ことスポルティングコレクションと奈良の本家正倉院を比べた自虐ネタも健在。

本作で光っていたのは中井貴一さまが何時の間にかこれだけの存在感を持った役者に育っていたことと、佐輔の妻を演じていた友近姐さんが実に自然な感じでこの人は芝居をさせても上手い人だなぁと思ったのでありました。

映画とは関係の無い余談になりますが、これを観たのがTOHOシネマズ日本橋でして、映画が終って直ぐに三井記念美術館にて鴎(カモメ)為らぬ鵺(ヌエ)と言う三代目道入が作った楽茶碗を観て帰途に着いたのでありました。

http://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/278173
(赤楽茶碗 「鵺」)

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