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2020年09月18日17:18

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アンソニー・ホロヴィッツのMoonflower Murdersを読んだ

アンソニー・ホロヴィッツの新作Moonflower Murdersを読んだ。
本当に面白い、絶対のお勧めです。
アンソニーは、ジェームス・ボンドもの、シャーロック・ホームズものでも有名だったが、Magpie Murdersで一躍世界的なベストセラー作家になった。
しかも今回の本の裏フラップ(ジャケット)には日本で8つの受賞をしたと誇らしげに書かれています。
(なんと、Moonflowerの183頁にも日本語版のアティカス・プントをジェームス・テイラーが持っているとある)

「スーザン・ライランド」シリーズの2作目(作中の探偵アティカス・プント)は期待以上に面白い。大長編(608頁)です。翻訳なら900頁は超えるかも。
ダブルのWho-done-itが楽しめます。どちらもすごく面白い。

元編集者スーザン・ライランドが主人公で、途中「Atticus Pund Takes The Case」が224頁あり、その後また事件を調べその解決を図るストーリーです。

今回の2作目はきっと世界中でベストセラーになるでしょう。米国では11月発行ですが、一般のHC(UK版)のサイン本は米国では予約売り切れです。
既に発売から2週間でサイン本は数倍の値段で取引されています。


Moonflower Murdersではアンソニー・ホロヴィッツが読者に仕掛けています。
「アガサ・クリスティ」フアンの多い日本の賢明な読者なら100頁を読むまでに仕掛けは普通に読めば分かります。

小説の中の小説シリーズ3作目Atticus Pund Takes The Caseを読み終えたら、失踪したセス(セシリー)みたいに「犯人が分かったわ」と言いたくなります。
英語の文章は易しく誰にでも読めます。アンソニーの陽気で明るいタッチを楽しんでください。
まさにクリスティ・タッチを満喫しながら読んでください。

元編集者スーザン・ライランドは、恋人のギリシャ人とクレタ島でおしゃれなホテルを経営して、のんびりと楽しく暮らしていたのだ。
そこへ、英国のサフォークでホテルを経営しているトレハーン夫婦が彼女を訪ねてきたところから始まる。
二人はスーザンに娘を探して欲しいと相談を持ち掛けてきたのだ。

8年前に彼らのホテル「ブランロー・ホール」で宿泊客のフランク・パリスが殺された。
それも、彼らの娘セス(セシリー)とエイドンの結婚式が行われている間に、顔を滅多打ちにハンマーで殴打されて、殺されたのだ。そして翌日自室で殺されている死体をメイドが発見した。
警察は部屋に残っていたパスポート、財布などからパリスに間違いないと断定し、ホテルの使用人ステファンを殺人犯として逮捕したのだった。
ステファンの血の付いた証拠、盗んだ現金が見つかり、自白して事件は解決、彼は刑務所で服役していた。
ホテルのスタッフや、経営者夫婦、娘セシリーの夫エイドンは、ステファンは絶対に人殺しをする人間ではないと訴えたが、警察は証拠、前科があり、ロマ(ジプシー)だからと一切受け付けなかった。

それから8年が経過して、最近娘のセスが、アラン・コンウエイの「Atticus Pund Takes The Case」を読んで「犯人が分かった」と両親に電話していたが、両親には興奮した娘セスの意味が分からなかったのだ。この電話はホテルのスタッフにも聞こえていた。
しばらくすると、セスが姿を消し、行方知れずになったのだ。

警察はセスが何らかの事件に巻き込まれた恐れがあると、捜査を開始したが手掛かりはなかった。
セスは誰かに誘拐されたのか、自発的に姿を消したのか。真犯人に殺されたのか分からなかった。
そこでブランロー・ホテルの経営者夫婦は、スーザンに1万ポンドで調査を依頼してきたのだ。
スーザンは申し出の1万ポンドでクレタのホテルの経営も助かり、ロンドンにも帰ってみたくなり引き受けたのだ。
そして、サフォークのお洒落な「ブランロー・ホール」へスーザンが来た。

経営者夫婦、娘婿、セスの姉リサ、スタッフも暖かくスーザンを迎えてくれた。
しかし、面談した印象は事前の予想に反して別の、数々の裏の顔が見えてくる。
トレハーン夫妻、娘セスとエイドン夫婦も表面とは違う話が耳に入ってきたのだ。リサも失踪した妹セスとは不仲だった。セスの娘の子守の女性はスーザンにいやな態度を示した。

殺されたフランク・パリスも、近くに住む妹夫婦との間に、遺産問題を抱え、殺された日に訪ねていた。しかもフランクはゲイで、アランや、ジェームスとも旧知の仲だった。アランの友人のカーン弁護士もフランク、その妹も知っていた。

当時ホテルのスパでトレーナーをしていたライオネルは「ホテルは最低だった」と言った。経営者はケチだし、ステファン、料理スタッフ以外のほかの人たちは嫌いだった。
ステファンは正直者で、真面目に働いていた。宿泊客のお金を盗んだのは、ステファンでなく、メイドのナターシャだとみんな知っていたと。

スーザンはコンウエイの友人だったジェームスに会い、3作目の事を聞いたのだ。
アラン・コンウエイは探偵プントものを2作書き、売れて金銭的に余裕があり、次作を書く意欲に欠けていたのだ。しかし、フランクが殺されたことを知り、「ブランロー・ホール」に宿泊してみたのだ。
そしてホテルから帰るなり、「犯人が分かりました」と言い、急に創作意欲がわき書き出したのだと。それを彼はプント3作目として小説として書いたのだ。

早速、スーザンは「Atticus Pund Takes The Case」を読み始めた。

ムーンフラワー・ホテルで経営者のハリウッドの世界的に有名な女優メリッサ・ジェームスが殺されたのだ。
当然第一の容疑者は夫フランシス・ペンドルトン、それから映画出演を拒否され大損した映画プロヂューサー、ホテル経営で横領していた夫婦、使用人親子だった。
作者コンウエイは実話をもとに経営者、スタッフを別名で登場させるミステリーを書いた。

それを読んで、真犯人が分かったとセスが言ったのだ。しかし、スーザンには分からなかった。登場人物は似ているが、これがフランク・パリス殺しとどう繋がるのか。
小説の中の小説、これが本当に面白い。絶対に楽しめます。

これ以上書きません。読む楽しみ、ホロウィツの仕掛けた謎を解く楽しみを味わってください。
本当に面白いです。

アンソニー・ホロウイッツもMoonflower Murdersが売れたら、必ずアティカス・プントの次作を書くとペンギンのインタビューで答えてます。ホント次作が早く読みたいものです。

余談
MoonFlower Murdersの高級書店Waterstones 社のサイン入り限定版は、サイン入り、ボーナス短編「ディナーは8人前、デザートは7人前」が付き、最初、最終頁のイラストが一般HCよりカラフルです、エッジがブルーでペイントされ、月の上弦、満月、下弦の7つが描かれた凝ったものです。(ラッキーにも私とボンド命さんは限定版を入手)

(スーザンがWaterstonesから限定版発行の話があったと95頁に出てきます。アンソニーがこの限定版の出版を誇りに思っていることが分かるでしょう)

しかも、限定版の定価はなんと一般HCと同じ£20です。これが不思議です。
ウオーターストンズの全店のほか、フォイル書店でも限定版を発売。
これが面白いです。(そう刑事フォイルに名前を使われたクリストファー・フォイルズが経営している本屋です。TVフォイル刑事にもカメオ出演))

アンソニー・ホロウィッツは実によくしゃべります。何本かインタビューを見ましたが、楽しいおじさんです。質問に即答します。実に分かりやすい英国英語です。

余談:アラン・コンウエイの小説をリー・チャイルド、ピーター・ジェームスが賞賛しているという文言は両ベストセラー作家の了解を得たのか?(お遊びだから、いいのでしょうね)
余談2:本のジャケットも意味があります。
    コンウエイの小説を読みだしてフランク殺しの犯人が分かりましたが、この人物がプントの事件の犯人なのか、間違えたかと疑問を持ちました。流石にうまいです。
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