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2019年11月13日18:53

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映画「豚が井戸に落ちた日 」切符切りの恋。

もう二十年くらい前に観た映画で記憶も風化している。DVD化すらされていないので、あらすじもほぼ残っていない。ただ印象はドギツく筆者の心象風景の中で漂っている。

三流小説家のヒョソプは映画館でモギリをしている二十代のミンジェに慕われていた。そして同時進行形で人妻・ポギョンとは大人の関係にあった。印象的なのは映画のチラシになっていたミョンジェの映画館でのダウナーな姿だ。彼女は確か生活費を工面するために、アダルト映画のよがり声の声優のアルバイトか面接にも行っていた。

一言に切符切り=モギリ、といってもさまざまなドラマを垣間見るものだ。筆者は15歳の時、つまり中学生の時に銀座か有楽町の名画座に足を運び、「地上より永遠に」とマーロン・ブランドの映画の二本立てを観た。その際、モギリをしていた高倉美貴に瓜二つの女性に一目ぼれした。マセガキだった筆者は彼女を口説くのに必死で映画など忘れて木戸口に佇んだ。しかし気を張れば張るほど彼女は冷笑をむけ、やるせない思いとなった。その高倉美貴似のお姉さんは何度も同じような声をいろんな男どもから浴びせられたのだろう。

そんな切符切り、つまりミンジェが恋するくらいの魅力がヒョソプにもあったに違いない。彼女は毎日いろんな男性から切符を受け取り可視化できない情を交わしていたのだろう。一方、ヒョソプは嫉妬深いサラリーマン・ドンウの妻ポギョンにぞっこんだった。淡々と語られる映像の中には何一つ感情はなく、ただただ回転する日常だけが漂っていたに過ぎなかった。

葬式のシーンがあり、その中でドンウの被っていた紙袋が気になった。昔のスーパーのレジなどでもらえる神袋。儀式が厳かなだけに、何か笑ってしまった。それから数日たってドンウは郊外にある知り合い夫婦の棲むマンションに出かけたが、あまりいい顔もされずに、おまけにちょっとした欲望でセックスをしたくなった知り合いから「今日は帰ってくれ」的なことを言われ帰らされる羽目になる。ドンウは妻の不貞を暴こうとするも小心で何にも手がつかない。こういう男をフランス語でコキュという。高見順の作品に「故旧忘れうべき」というのもあったっけ。

たしかミンジェは小屋のような部屋に住んでいて、そこに映画館の従業員が訪ねてくる。男はみミョンジェに惚れていて、たしか恋敵のヒョソプを殺めてしまう。そんな絵展開だったような気がする。

ヒョソプ、ミンジェ、ポギョン、ドンウの四人の秋枯れした紅葉色のホン・サンスのデビュー作品。
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