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2019年11月12日03:58

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映画「天国と地獄」行政による司法への介入。

ナショナルシューズの重役たちが権藤邸に集まって、現在の社長を会社から追い出そうと画策していた。しかし権藤は他の重役たちと異なり、コストをかけてでも丈夫な靴をユーザーに提供しようと食い下がる。交渉は決裂し重役たちは権藤邸を去る。河西という権藤の秘書がお見送り。「権藤はなぜあんなに自信があるのか」という問いかけにも「さぁ、何故本人にお聞きにならなかったのですか?」と詰問を排除する。

実は、権藤は会社の実権を奪うため方々から自社株を買いあさっていた。今夜にも河西を大阪へやり話をつけてこようと公算していたのだ。やがて権藤邸に電話の呼び出し音が。受話器を持つ権藤に、電話の相手は「あんたの息子を誘拐した。3000万用意しろ」といって電話は切れる。しかし権藤の息子はリビングに姿をあらわす。

運転手・青木の息子が権藤の息子と間違えられて誘拐された。すぐに警察を手配して逆探知の用意を遂行。犯人から息子を間違えた、それでも権藤が3000万用意しなければ青木の子供は殺すと脅迫があった。5000万の小切手を持つ権藤に3000万の身代金を払う余裕はあった。が、身代金を払わなくては会社から逆に追い出される。そんな確執と戦う権藤だったが、否とは言えず、妻の後ろ盾もあって身代金を払う決心をする。

警察も本腰を入れて捜査に尽力する。犯人は特急こだまに乗れ、あとは乗ってから指示する、とだけ言って電話を切った。3000万を入れるカバンのサイズを指定された。そのカバンの中に刑事は特殊な化学成分を入れ、犯人がカバンを燃やしたり、捨てた際にはその場所が特定されるように仕掛けていた。

特急こだまに乗った権藤と刑事一行は熱海の手前で犯人からの電話を受け取る。「酒匂川の鉄橋からカバンを投げろ。子供はそれと引き換えだ」と言って電話を切った。犯人が指定したカバンのサイズはこだまの洗面室の窓の隙間から投げ出せる、という計算があった。権藤は車窓のすきまかカバンを投げ、共犯の受け子はカバンを手に入れた。子供は無事青木のもとに帰った。

さて、これから本格的なそうさ捜索ははじまる。木村功演じる若い刑事は脅迫電話に録音された音源の中に電車の特徴ある音をとらえ、専門家に聞いてもらった。それはパンタグラフではないポールと電線のこすれる音だと分かった。江の島近辺での操作が始まる。

青木の息子の供述などから犯人はインターンの学生竹内銀次郎が浮かび上がった。警察の包囲網は絞られた。竹内は薬剤を用いることに慣れていて、共犯をヘロインで殺していた。しかし警察はこの共犯者二人がまだ生きていて、次のコンタクトの際に竹内を逮捕しようと考え、もう一回犯行の再現をさせようと知恵を絞るのだが、これは行き過ぎ。それでも竹内は警察の罠に見事陥って、黄金町の麻薬街で純度の高い麻薬を注射して女を死亡させる。これで、共犯者を殺し行こうと別荘地へ足を運ぶ。

刑事たちは別荘の中と外で待ち構える。そしてあらわれた犯人を誰何して「竹内、これで貴様は死刑だ」と司法への介入ともとらえられる、警察の捜査から逸脱した暴挙に出る。
竹内は「丘の上で暮らす権藤一家が憎かった」と吐露。やがて死刑が確定され、教戒師の手も借りず、孤独に刑に処せられる。と、その前に一人だけ会いたい人物がいると担当に漏らし、権藤が接見に来る。「君はなぜ、私と君を憎し見合う両極端だと考えるんだ?」という権藤の問いにうすらざむぃニヒルな笑い声で対応する竹内。まもなく興奮した竹内は刑務官に連れられ、面会所から引きずり出される。

当時の黒沢作品は「正義感」がやたらと強かった。正義のための脱法も時として良しという考えだったのか。理路整然といかない映画手法に、悩まされる。
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