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2019年03月26日08:51

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不便

航海術上の三大発明は、六分儀、羅針盤、クロノグラフと言われている。
このみっつが揃って初めて自船がどこにいて、どれくらい進んでいるかがわかるから。
クロノグラフってのは要するに時計のことで、昔は時計なんてものは暖炉のある大広間に置いてあるか、教会の塔に作り付けられてるようなものであり、外に持ち歩くものではなかった。

船に積むクロノグラフはそれくらい貴重で重要なもんやったわけやけど、18世紀も終わる頃になって、小さな時計を作る技術が確立し、懐中時計なるものが世に出た。
歴史ものの映画やドラマで、紳士がチョッキの下の方にある専用のポケットから取り出しては、パカッと蓋を開けて見てるのがそれ。
ジーンズの右前のポケットの内側にあるちっこいポケットもじつは懐中時計用に作られたものの名残りなんやで。

常に最先端の装備を身に付ける戦場でも時計と言えば懐中だった時代は長く続いた。
19世紀後半が舞台の西部劇や、20世紀初頭の日露戦争を描いた作品でもやっぱり時間見るときはチョッキか上着のポケットから懐中時計を出していた。
いろんな説があるけど、いちばんそれらしいと言われてる革命的使用法が生まれたのは第一次大戦中のヨーロッパ戦線。
時間を見るのにいちいちポケットから時計を出していては面倒だということで、懐中時計を加工して手首に巻きつけるのが流行った。
腕時計自体はもう少し前から作られてたけど、特殊で高価なものやったから、金持ちしか持てなかったので、そうする人が多かったとか。

そこから腕に巻いて使う時計の文化が生まれ、さらなる小型化と量産によって第二次大戦が始まる頃には庶民にまで行き渡っていたとのこと。
ちなみにいまでも売られてるカルティエのサントスは黎明期の飛行家、飛行船であちこち飛び回ったアルベルト・サントス・デュモンからの注文を受けて作られたものが原型になってるから、サントスと名づけられている。

昨日、腕時計を忘れて出かけたら、自転車乗ってるときに時間がわからんでえらく不便してもてね。
それでこんなことを思い浮かべてしまった次第やったりしちゃったりしたりして。


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