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2019年02月24日04:20

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華麗なるヒコーキ野郎(75年、米)

ジョージ・ロィ・ヒル監督とそのチームがロバート・レッドフォードと「明日に向かって撃て」「スティング」に続き、3度目のタッグを組んだ作品。
飛行機マニアやから言うんやないけど、アメリカ映画の最高傑作の1本やと思うねん。
1895年生まれのウォルド・ペッパーは第一次大戦で欧州戦線に従軍したものの、若すぎたため実戦参加が遅れ、まわりからも天性のパイロットと認められていたが、その腕を発揮する場所がなかったことを悔やみつつ、軍から払い下げのカーチスJN4ジェニーを駆ってバーンストーミングを営んでいた。

いまはどうだか知れへんけど、1970年代あたりまで、アメリカではさすらいの飛行家みたいのが居た。
「かもめのジョナサン」を書いたリチャード・バックの2作目「イリュージョン」の主人公はそうした人たちで、カーチスジェニー、ボーイングステアマンなど、旧式で簡素な複葉機で田舎の農場などに降り立ち、ひとり10ドルだかそこらで10分間の遊覧飛行を提供して暮らすパイロットたちをバーンストーマーと呼んでいた。
1920年代、アメリカ社会でもまだ飛行機は身近なものではなく、そういった職業の人たちもたくさん居たらしい。

遊覧飛行をしながら、でも自分はこの程度の男じゃない、いつかパイロットとして有名になってやると考え、さまざまな命がけの無茶を繰り返すウォルド。
空中サーカスでほかの人が出来ないような曲芸飛行をすればいいと思いついて相棒のアクセル、そしてその恋人と共に訓練に励むのだが、あまりに無謀な挑戦だったため、大きな事故を起こしてしまい、飛行免許を取り上げられてしまう。

途中からウォルドの相棒になるアクセルはB級アクション映画でよく見かけるボー・スヴェンソン。
同じ年にロッキーホラーショーで注目を集め、ようやく長い長い下積みから抜け出した29歳のスーザン・サランドンが途中まで出ている。
ジュリエット・ルイスのおとうさんで、西田敏行出演作の猪野学並みにクリント・イーストウッド出演作にたいてい出てた名脇役ジェフリー・ルイスがウォルドの軍隊時代の上官で元エース。
エースってのは、空中戦において、敵機を5機以上撃墜したパイロットに与えられる称号で、ジョージ・ペパード主演の「ブルーマックス」でもそのへんを細かく描写している。
エルンスト・ウーデットをモデルにしているらしい、71機撃墜の伝説的ドイツ人パイロット、エルンスト・ケスラーを演じるのはほかであんまし見たことのないボー・ブランディン。
そして音楽はあのヘンリー・マンシー二。

登場する飛行機は、まずウォルドの愛機、ふたり乗り(複座)のカーチスJN4ジェニー。
90馬力、最高速度120キロ、上昇限度3000メートルてのは、今の軽飛行機と比べてもかなり劣る。
1915年からWW1終戦までに6800機も作られた、アメリカで最初に大成功した練習機。
戦後は大量に安価で民間に放出されたので、アメリカ中を飛び回っていて、いまもかなりの数が現役で飛んでいる。
アメリカで見かけるクラシックバイプレーンと言えば、カーチスジェニーかボーイングステアマン。
これがヨーロッパやとデハビラントタイガーモスになり、ロシアならアントノフAn2となる。

模擬空戦でウォルドが乗るのは第一次大戦のイギリスを代表する戦闘機ソッピースキャメル。
7気筒のロータリー式(プロペラ軸を中心にエンジンそのものが回転する)130馬力、最高速度185キロ、ビッカーズ7.7ミリ同調機銃2、生産機数5500。
コマのようにくるくる回る運動性が売り物。

ケスラーが大戦中から駆る愛機は、フォン・リヒトホーフェンが愛用したことで知られる三葉のフォッカーDr1。
7気筒ロータリー110馬力、最高速度160キロ、上昇限度6000メートル、7.9ミリシュパンダウ機銃2、生産機数320。
上昇力に特徴があり、2000メートルまで3分45秒は当時としては驚異的。
技術的には二枚翼と比べて三枚翼のほうがトータルの翼面積が大きくなり、面積あたりにかかる荷重、翼面荷重を小さくできる。
翼面荷重が小さいということは、軽く高く上がりやすいということで、上昇力と運動性能には好影響を及ぼす。
ただし、空気抵抗が増えるため、速度は出しにくくなり、加速力に悪影響を及ぼすのと、揚力が大きいので着陸が難しい。

いかんいかん、飛行機が出てくると、ついついこういうことが気になってしかたない。
もっとおおらかかつ適当にストーリーを楽しめばええのに。
それにしても、ウォルドの最期はどんなやったんやろ。
もちろんおもしろい映画であることは間違いないけどな。

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