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2022年03月20日20:35

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TAAF2022長編コンペ④ボブ・スピット

『ボブ・スピット－人間なんてクソくらえ－』（Bob Spit-We Do Not Like People）
2021、ブラジル、1:30、セザール・カブラル

ボブ・スピットはブラジル人の漫画家アンジェリの生み出した漫画のキャラクターで、アンジェリの頭の中にある世界滅亡後の砂漠に住んでいる。アンジェリは漫画の展開の為にボブを殺そうと決めるが、ボブはそれに抵抗し、世界を超えて漫画家の元へやって来る。

珍しいブラジルのストップモーション長編。
実は、最初にTAAF公式プログラムで見た時に、これは今回の長編コンペのハズレ枠だろうと思った。TAAFは４本の長編がコンペで上映されるのだが、伝統的に(？)１本は何故これを選んだか不思議な出来の作品が混じる。おそらくは手法とテーマや制作国のバランスを考えての選考なのだろうが、観る側としては全部が素晴らしい出来の作品を望んでいるので、ちょっと困ることが多いのだ。
で、今回もこの『ボブ』がそれと思ったのだが、実際に観てみると意外なカルト作だった。日本のストップモーションの話題作『JUNK HEAD』にどこか通じる気もする。
始めのうちは設定が全く分からずに混乱するが、事情が次第に分かってくると意外と観られる。漫画の世界と、生みの親の漫画家がいる現実世界が交差するメタ映画だ。
しかも、漫画家の世界は映画内現実な訳で、その漫画家当人も実写で現れたりしてメタ度が高い。結構、観る人を選ぶと思う。
正直、これがコンペに入ったのは今回の一次選考委員の資質によるものが大で、別の顔ぶれだったら入ったかどうかは疑問だ。大衆性を重んじるTAAFよりも先鋭的な作品を好む新千歳の方が向いていると思うし、アニメーション映画祭で公開するよりも、もっと別の映画祭で上映したなら後々もカルト作として評価されるのではないかと思う。

話も骨子は分かるが、細かい部分は原作を読んででもいないと正直よく分からない。
ロックなボブをポップスター代表のエルトン・ジョンのミニチュアのような怪物が集団で襲って来るのも観ていて反射的に面白いのだけれど、これもよく考えると分からない。
しかし、すごいのはストップモーションの技術で、人形は特に上手くはないし、作りも拙い。が、観ていると、人形の、特に映画内現実世界の漫画家などの人形の、仕草や表情が驚く程に細かくてリアル。ああ、人間はこんな時こういう指の動かし方をするなという妙な納得感があふれる。関節の動きもしっかりしている。ロトスコープを使っているのではないかと推測されるが、実のところは分からない。トーク付きのプログラムは別のプログラムとかぶっていたので未見。何か明かされたのだろうか。
最終日には優秀賞を受賞。もしかしたら今後、何らかの展開があるかもしれない。土居さんとか好きそうであるし。解らない部分を誰かスパッと解説して欲しい。

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