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2022年03月20日17:07

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TAAF2022長編コンペ③ケース

『ケース』（The Case）
2021、イタリア、0:40、マウリツィオ・フォレスティエリ

アニメ絵寄りの3DCG作品。
異世界が舞台。戦時下の少年はバイオリンのケースだけを持ち、両親が工面してくれたチケットで避難船に乗り込み、戦火を逃れられる世界を目指す。
タイトルの「ケース」はバイオリンのケースのことで、中のバイオリンは少年が疎開する為の費用になった。
困難を経て少年たちは新たな土地に辿り着くが、そこには高い壁が立ち塞がっている。
壁の前で少年が空のバイオリンケースから取り出した想像のバイオリンを弾くと、その演奏によって壁が消えていく。
現実の難民の問題、芸術の力。
冒頭から流れるバイオリンの、哀切な弦の調べが強く心に響く。

イタリアのRAI（『名探偵ホームズ』等）の出資、ユニセフの協賛によって制作されており、エンディングではボート難民の実写映像が映り、「こどもたちの未来を守るのは私たちの義務です」とのメッセージが出る。
実話を元に作られており、先の映像には実際にバイオリンを持った子も映る。
全体的な絵の雰囲気や、船に乗り合わせた避難民の中にジャイアン風のいじめっ子と取り巻きがいること、主人公を助けてくれる折り紙を操る力を持つ少女、等どこか日本のアニメ風なものを感じるが、解説トークで登壇した、日本でも有名なコルピ・フェデリコさんの話によると、なんと日本のなかむらたかしさん（＋アバター）を意識したキャラクターデザインだそうで驚きつつ納得（それで、あの肌色）。
イタリアでも日本の名作劇場などが放送されており、その影響が強いそうだ。
名作劇場のなかむらたかしさんというと『ピーターパンの冒険』か？
コルピさんの話によると制作のメインがイタリア、CGがチュニジア、背景はシチリアで分業、コロナ禍でリモートによる進行になったそうだ。
トークでは時間が40分で一般公開には短いのを気にされていたが、むしろEテレ等で放送するには丁度いいのではないだろうか。
旅の仲間で優しい妊婦の女性が終盤で命を落としてしまうのがシビアで展開がややつらいのだけれど。
TAAF全体でもフランス作品が多く見えるのだが、実際にフランスのアニメーション制作が盛んになっていることで、イタリアやヨーロッパの人材がフランスへ流れて自国での制作が困難になっている実情もあるという。
監督のフォレスティエリはイタリアで最も有名なアニメーション作家の一人で、ベルリン映画祭の金熊賞候補にもなったことがあるという。
折り紙が取り入れられていることが気になるが特に言及はなかった。トークの最後にＱ＆Ａタイムでもあればと。

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