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2022年03月19日21:16
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TAAF長編コンペ�▲沺璽� 私の太陽
『マード 私の太陽』（My Sunny Maad）
2021、チェコ＆フランス＆スロバキア、1:21、ミハエラ・パヴラートヴァー
チェコ人の女性ヘラは大学でアフガニスタン出身の男性ナジールと恋に落ち結婚、彼の故郷の大家族の中で暮らし始める。
時代はタリバン崩壊後（ビンラディン殺害後）で、やや統制が緩んだ頃。アメリカなど他国民もここで職を得て働いている。
タリバン政権下のアフガニスタンを舞台に抑圧された女性を描く作品として、『カブールのツバメ』『ブレッドウィナー』が先行するが、時代がやや違うとはいえ、本作は前２作とは少し印象が異なる。
前２作の女性たちがひたすらに被害者として描かれていたのに対し、この『マード…』では単なる被害者ではなく、古い規範の社会に安住している現地の女性たちもまた加害者（抑圧者）の一部であり、社会的抑圧は女性だけでなく、大家族の家父長として家庭内でも社会でも振る舞わねばならない男性たちにも及んでいることを捉えている。
言われてみればごく当たり前の話で、それは日本でも全く同様なのだが、今までそこに気づいていなかったことを自覚、本作によって新たな目を開かされた思いがして非常に感銘を受けた。
また、男性の中でも大家族の家長である祖父が進歩的な考えを持ち、女性も学校で学ぶべきとの考えを明らかにするなど、現地の男性に対して画一的な描き方はしていない。
主人公のヘラが大学で出会った時は頼りがいある男性に見えたナジールが故郷アフガニスタンでは定職もなく大家族の中で存在感も発揮出来ず、結婚生活における旧弊な習慣にそのまま従っているなどの描き方をされていることにも驚く。
物語の救いはタイトルにもなっている「マード」少年。聡明だが筋萎縮症を患っており長くは生きられないことが示唆された上で、子供が出来ない主人公夫妻の養子としてあてがわれる。
彼が女性に全身を覆うよう強制されているヒジャブを被って、病んだ体を見せずに済むことを喜ぶ場面もまた、単に被害者的でない新たな視点を与えられたようで驚いた。
様々な出来事があった末に、夫ナジールが死に、ヘラは米国人と共に国外脱出の機会を得るのだが、土壇場で彼女はそれを放棄し、マードと一緒にこの地で暮らすことを選ぶ。
自由へと続く筈の飛行場から踵を返す彼女たちを包む大地は太陽で明るく照らされ始めている。
この作品がタリバン崩壊後の作品で、その時点では現在のタリバン復権は予想されておらず、新しい時代が来るとの見方もあったのだ。ラストシーンはそれを象徴している。
それだけに、その後の彼女たちの運命が気になってならない。太陽は今も照っているのだろうか。
また、若年での結婚を嫌って家から逃れた少女の行く末も気になってならない。無事でいるだろうか。
監督のパヴラートヴァーはチェコの作家。広島国際アニメーションフェスティバルでもグランプリを得た短編『レペテ』で名高い女性。その時は抽象的で前衛的な作風が目を引いた。今回の、絵も話もしっかりと具体的な長編に出会って、これも驚いた。作家の変遷を目の当たりに出来ることは嬉しく、コンペへの選出に感謝する。
鑑賞は３月11日（金）の選考委員トーク付きの回。それによると彼女は1961年生まれで、「プラハの春」を体験している世代という。
『マード 私の太陽』は最終日に今回の長編グランプリを獲得した。TAAFの長編グランプリ作品は多くがその後に一般公開されているので、本作にも展開を大いに期待したい。
2021、チェコ＆フランス＆スロバキア、1:21、ミハエラ・パヴラートヴァー
チェコ人の女性ヘラは大学でアフガニスタン出身の男性ナジールと恋に落ち結婚、彼の故郷の大家族の中で暮らし始める。
時代はタリバン崩壊後（ビンラディン殺害後）で、やや統制が緩んだ頃。アメリカなど他国民もここで職を得て働いている。
タリバン政権下のアフガニスタンを舞台に抑圧された女性を描く作品として、『カブールのツバメ』『ブレッドウィナー』が先行するが、時代がやや違うとはいえ、本作は前２作とは少し印象が異なる。
前２作の女性たちがひたすらに被害者として描かれていたのに対し、この『マード…』では単なる被害者ではなく、古い規範の社会に安住している現地の女性たちもまた加害者（抑圧者）の一部であり、社会的抑圧は女性だけでなく、大家族の家父長として家庭内でも社会でも振る舞わねばならない男性たちにも及んでいることを捉えている。
言われてみればごく当たり前の話で、それは日本でも全く同様なのだが、今までそこに気づいていなかったことを自覚、本作によって新たな目を開かされた思いがして非常に感銘を受けた。
また、男性の中でも大家族の家長である祖父が進歩的な考えを持ち、女性も学校で学ぶべきとの考えを明らかにするなど、現地の男性に対して画一的な描き方はしていない。
主人公のヘラが大学で出会った時は頼りがいある男性に見えたナジールが故郷アフガニスタンでは定職もなく大家族の中で存在感も発揮出来ず、結婚生活における旧弊な習慣にそのまま従っているなどの描き方をされていることにも驚く。
物語の救いはタイトルにもなっている「マード」少年。聡明だが筋萎縮症を患っており長くは生きられないことが示唆された上で、子供が出来ない主人公夫妻の養子としてあてがわれる。
彼が女性に全身を覆うよう強制されているヒジャブを被って、病んだ体を見せずに済むことを喜ぶ場面もまた、単に被害者的でない新たな視点を与えられたようで驚いた。
様々な出来事があった末に、夫ナジールが死に、ヘラは米国人と共に国外脱出の機会を得るのだが、土壇場で彼女はそれを放棄し、マードと一緒にこの地で暮らすことを選ぶ。
自由へと続く筈の飛行場から踵を返す彼女たちを包む大地は太陽で明るく照らされ始めている。
この作品がタリバン崩壊後の作品で、その時点では現在のタリバン復権は予想されておらず、新しい時代が来るとの見方もあったのだ。ラストシーンはそれを象徴している。
それだけに、その後の彼女たちの運命が気になってならない。太陽は今も照っているのだろうか。
また、若年での結婚を嫌って家から逃れた少女の行く末も気になってならない。無事でいるだろうか。
監督のパヴラートヴァーはチェコの作家。広島国際アニメーションフェスティバルでもグランプリを得た短編『レペテ』で名高い女性。その時は抽象的で前衛的な作風が目を引いた。今回の、絵も話もしっかりと具体的な長編に出会って、これも驚いた。作家の変遷を目の当たりに出来ることは嬉しく、コンペへの選出に感謝する。
鑑賞は３月11日（金）の選考委員トーク付きの回。それによると彼女は1961年生まれで、「プラハの春」を体験している世代という。
『マード 私の太陽』は最終日に今回の長編グランプリを獲得した。TAAFの長編グランプリ作品は多くがその後に一般公開されているので、本作にも展開を大いに期待したい。
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