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2020年02月28日18:51

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ナウシカ歌舞伎【前編】

新作歌舞伎『風の谷のナウシカ』【前編】ディレイビューイングを鑑賞。
2月18日(火)広島八丁座にて。15時から休憩を挟んで4時間強の長丁場。
平日の昼なので客席は半分くらい。
入場時に人物相関図を渡される。複雑なので良い対応と思う。売店で扱っていたらしい歌舞伎上演の際のパンフレットはさすがに完売だった。
フォト
暗闇の中に流れる和楽器のテーマ曲に胸がざわざわとし、花道の照明に浮かび上がる菊之助のナウシカを美しいと見た瞬間、心はもう舞台に吸い込まれる。
予告で観た以上に歌舞伎。
殊に、映画版より後が真骨頂。幕切れの、3階席まで届くメーヴェの宙乗りには感涙。
圧巻はクシャナの七之助。歌舞伎役者としての華と、クシャナという存在自体が相まったカリスマ性が輝くばかり。白を基調に金の飾りが付く衣装も煌めいて目を惹き付ける。
話も混沌とした原作漫画を簡潔にまとめて理解しやすい。
『ナウシカ』を見立ての芸である歌舞伎に仕立てたことが奏功。
贅を凝らしたVFXで再現したとしても、それは原作からは離れてしまうだろうから。
元々、人が扮装によって獅子や狐にもなる歌舞伎なので、腐海の蟲の扮装をした役者も、龍踊りのように長い棒で操る長大な蟲も、見る者が見立てることによって本物に見える。そこがすごい。
役者たちが花道で踏む六方や、要所での見得と名乗りに何度も息を呑み、衣装の引き抜きによる早変わりに目を見張り、長唄や囃子に聴き惚れ、様式化された立廻りを楽しんだ。
本水を使った王蟲の培養室でのユパとアスベルの殺陣は見応え充分。
全身ずぶ濡れのアスベルが花道で派手に衣装を絞り、観客に水しぶきを浴びせて嬌声が上がるなどのくすぐりも楽しい。
酸の湖のほとりでのナウシカと王蟲の幼生の心の交流を、菊之助と王蟲の精である子役の踊りで見せるなどの工夫もいい。子役のあどけなくも清らかな踊りに心洗われる。
生霊となってナウシカを苦しめる皇弟ミラルパを古典的な衣装と白塗りに隈取りで表わすのも歌舞伎の作法に適っていて感服。この隈取りは歌舞伎では霊を表わすらしい。
今までに歌舞伎の舞台中継やシネマ歌舞伎などを見ておいて良かった。何となくでも歌舞伎の約束事が分かり、ペジテのラステルなども、衣装を見ただけで高い身分の姫君であることが伝わる。
『ワンピース』を演目にしたスーパー歌舞伎を観劇した時も、『ワンピース』という題材と歌舞伎の和風な仕立てがとても良く合って感心したものだけれど、『ナウシカ』もとてもいい。日本人の心は相通じるものがあるのだな。
驚いたのは、薄気味の悪い蟲使いたちも、ちゃんと棒の先に何匹もの蟲が繋がって操ってみせるところ。再現具合がすごい。
かと思うとキツネリスのテトは大胆な縫いぐるみそのままで、これも歌舞伎の約束事。黒子が操ってみせる。操りのまま客席に分け入ってしまい、後を追うユパが苦笑し、観客を掻き分けながら狭い客席を通り抜ける場面などもあり笑いが起こる。
最初に映画のようなタペストリーの幕で粗筋を紹介したり、巨大な王蟲の作り物が登場したり、「金色の野」を布による波で表わしたり、工夫がすごく、長丁場でも全然見飽きない。
前編はナウシカがメーヴェに乗って旅立つまで。後編では巨神兵も出るらしい。テーマも掘り下げられることだろう。
料金が高いのでちょっと迷っていたのだが、これは観ておいて良かった。
写真はいずれもネットから。
フォト 開演前のタペストリー状の幕。
フォト 王蟲とナウシカ
フォト 金色の野に立つナウシカと王蟲の精
フォト クシャナ殿下
フォト メーヴェのナウシカ

ディレイビューイング用の収録は早い時期に行われたらしく、菊之助はまだ負傷しておらず、踊りも宙乗りも当初の構想通りに演じられている。
ちなみに、トリウマに乗る姿はこれ(ネットから)。
フォト
これはやや無理がある姿勢と思うが、菊之助もさぞや無念だったろう。芝居はなまものなので回を重ねて生きてくるものだろう。またいつか再演の機会があればと思う。
同時に、劇による上演はとても面白いので、例えば学芸会や学生演劇などで上演してみるのも一興かと思う(許されれば)。
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