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2019年11月12日14:43

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「マローナの素晴らしき旅」

東京国際映画祭にて。
マローナは茶色い雑種の牝犬。マローナとは、最後の飼い主になった女の子が栗(マロン)色の体毛から名付けてくれた名前。映画は彼女が生まれる前から始まり、事故死する間際に思い返す一生を描く。様々な事情で移り変わる飼い主の人間模様。犬の名も次々に変わる。犬と飼い主の関わりを、2D3Dハイブリッドの自由で豊かなアニメーション表現で描く。片時もじっとしていない流動的な表現とカラフルな世界に圧倒される。人物を捉える時も、その髪型や表情は常に変化し、まるでピカソのキュービズムのように多面的な魅力を放つ。
フォト
このスチル1枚見ただけで、絶対に私好みな作品と思ったのだけれど、大当り。(ポスターは可愛らしすぎて映画の魅力を伝えきれていない面がある)。
このスチルに描かれた飼い主の一人、オレンジ色の服装の軽業師の表現が取分けすごくて、服の縦じまが、それ自体が生き物のように服から離れ、操り糸や蛸の足のように自由自在に動いて軽業師としての彼の動きを表わしていくのには圧倒される。
アニータ・キリ監督の作品を彷彿させるようなハイブリッドな画面と社会的な訴えもあり、内容も豊か。そして何よりも飼い主に対する犬の健気さに泣かされる。
最後の飼い主の女の子が拾った当初は可愛がり、成長に従って犬に興味を示さなくなっていく辺り、自分にも覚えがあり、心が痛い。
冒頭で事故死することが示されているだけに、マローナが命がけで女の子の乗ったバスを追い、激しい車の流れの中を走るシーンには、うごめき続ける画面の驚きと共に胸を締め付けられる。かといって映画は決してセンチメンタルではなく、とても美しく優しい。

東京国際映画祭は参加を決めたのが遅かったので、他にも未見のアニメーション映画や目を惹く企画があったのだけれど、どれもチケットが取れなかった。残念ではあるのだが、この1本を観られただけで十分に満足。知名度の低い作品だからか、この回も客の入りは少なく、翌日の上映もチケットは余っていたようだが、これは本当に観られて良かった。何かの機会があれば是非お薦めしたい。万人向け。

ルーマニア・フランス・ベルギー合作、言語はフランス語。
アンカ・ダミアン監督(ルーマニア)。
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