近頃、マスコミやブログ、ツイートで「多数決が民主主義ではない」という発言をよく見かけます。
国会でも野党の代表は与党が多数決で決定してしまうことを非民主主義的な行為として厳しく非難しています。
でも、私は健全な民主主義運営のためには多数決原理は欠かせないと信じています。いや、民主主義に限りません。主権者全員の合意が得られないならば、より多くの主権者の意見を採用するしかないと思うのですよ。
が、「多数決≠民主主義」という人は、そもそも多数派の意見を採用するのは民主主義ではないという見解のようです。
普通、多数派であっても話し合いに応じないことはなく、たいていは議論した後に決を採ります。しかし、決を採るのは多数派が『間違った』意見を引っ込めてからにすべきという主張ですね。
多数決を否定する根拠に挙げられているのが、まず「ポピュリズム」というキーワードです。
大衆や大衆に選ばれた代表の大多数は愚かなので、ずる賢く悪意ある扇動者の間違った方針に導かれてしまう。だから、そういう多数派の『間違った』決定は主権者の意見とみなさなくてよいという見解です。
そして、多数決を否定する人が本当の民主主義として高く評価するのが、デモ活動などの実力行使だったりするわけです。
大衆全体からすれば少数であっても、『正しい』主張をして行動する彼らこそ真の民衆、主権者であり、彼らの要求を政府に押しつけるのこそ本当の民主主義だというのですよ。
これって、危険思想なのではなかろうか?
たとえ手続きとして合法であっても『間違った』政策は潰せ、『正しい』政策を実行せよ。
これは何が正しいか明白であり、しかもなおかつ主権者の多数派は間違った方を選んでいると考えているからです。
もしそうならば、対策は一つ。間違いを犯さない超人が決定し、その他は実行する。
実際、そういう方針に従って国を運営した、あるいはしている人たちは存在します。そんな国はたいてい民主主義を標榜しています。
しかし、これは民主主義でしょうか?
そして、彼らは『正しい』政治を続けることができるでしょうか?
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