旅に行けるのは、自分の意思や懐具合だけだと思ってはならない。お金がなくても、チャンスが巡ってきさえすれば、それは可能になる場合がある。この8月には、ふだんは80歳をこえた母に会いに田舎にいくのが通例だが、5月の連休に足を運んだこともあり、年休や夏休暇を利用して、ふたつの旅に縁があった。
もう私は映画や本と同様に旅も、縁だと思うようになってきている。自分の意思で決めてもいいのだが、むしろ向こうからやってくるようなところがあり、行ったことがなければ、やってくるままにそのチャンスをいい知らせと思って、乗ることにしている。
今年はめずらしく、夏前にふたつの異なった方々から話があり、�…傘�・伊勢・名古屋の東京から西へ向かう旅は、若い人たちから一緒に行かないかと。伊勢神宮はひとりではこの年になっても行く気はなかったが、一度はみておかないと話も何もできないと思い立って出かけた。行ってよかったと思う。いろいろなしきたりがあるとは聞いていたが、基本的なことだけで、外宮→内宮の順で参拝した。詳細は時間のあるときに書きたい。
次に、昔の友人から先輩が秋田に帰ったので、会いに行きませんかと声がかかり、お盆前に車で出発し、先輩に再会、数日を秋田ですごし（白井晟一の建築物を訪ね歩いたーこれは写真を紹介したい）、その後、日本現代詩歌文学館に立ち寄ったりして（藤田文江の資料をコピーした）、陸前高田、福島と車で巡って現状の視察をした。
福島の原発のすぐ近く（危険地域まで）車なら行けるということだったので、野馬土というＮＰＯの方にご案内いただき、細かな解説を受けながら3時間かけて福島を回った。考えさせられることしきりだったが、忘却にまかせて次の時代に日本は行こうとしてるのだなと実感した。
ある程度人は忘れていくことも大事なことだと思うが、元号が変わり、オリンピックが来て、どんどん先へ進めていこうとするベクトルにまかせて、視線を切っていくような力が故意に働いているように思う。私は福島がこうだからオリンピックはやめろとか、そういうつもりはない。そのことは別々でもいいから、こちらはもう忘れてもよい、というのは違うなと思った。津波があったところには、人が住めないので、平地でだだっ広くても草が生えているばかりだ。また原発周辺の家々は、そのまま放置されてゴーストタウンで、廃炉作業をする工事関係者のすまいがあるだけだ。
こういったことが日本のここで起こって8年でまだこの状態だというのは、もっと知られていいし、忘れてはいけないと思う。忘れない状態で、オリンピックもやればいいと思う。こういう場所が日本にある、それはそう簡単には変わらない、この認識を持ち続けておいて、現状のあれこれをみないと、何か間違った方向へいくような気がした。
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