イーオンプロ製作の007シリーズ第25作『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ ('22)』を観ました。
子供の頃から変わらず強い思い入れのあるボンド作品の最新作であり、ダニエル・クレイグ最終作と言う事で当然劇場封切りされたらすぐに観に行くつもりだったのですが、いざとなったら気が進まないな…とか言っているうちに上映が終了してしまい、ソフトも購入する気になれず、最近Amazonプライムで配信が始まってようやく観たのです。それにしても、配信開始から結構空いてしまったくらいです。
事前情報はほぼ入れてませんでしたし、上映開始後の感想や評判も一切触れないようにしていました。それでも、なんだか気乗りしなかったのですよね。
強いて言うなら、イーオンプロ製作のボンド映画全24作と、他社製作のボンド映画2作品を封切り前に一ヶ月かけて全部通して観たと言うのがあるかもしれません。
誤解を恐れずに言うと、時代と共にジェームズ・ボンドも変化しており、もはや、現代のジェームズ・ボンドは私が大好きだったジェームズ・ボンドとは違うモノになっているのではないかと、そんな事を全作品を通して観ていて思ってしまったのです。
6代目ジェームズ・ボンドに就任すると発表された時からダニエル・クレイグには賛否両論があったのは知っています。しかし、私の場合はそいういう事ではなくて、権利問題で揉めてそれまで定期的に製作されていたボンド映画が一度断絶があり、復活したピアース・ブロスナンが5代目ボンドとして就任した第17作『ゴールデンアイ』から、変わってしまったな…との印象を拭えないわけです。
じゃあダニエル・クレイグのボンドがつまらなかったかと言えば、決してそんな事はないですけどね。特にサム・メンデス監督の『007/ スカイフォール』とか実に好みの作品でした。同じサム・メンデス監督でも『007/ スペクター』には派手にずっこけさせてもらって、シリアル作品の次にはコメディが来ると言うボンド映画の初期からの伝統はしっかり受け継がれているな〜とも思わされましたがw
では、今回のダニエル・クレイグ最終作となる『007/ ノー・タイム・トゥ・ダイ』はどうだったかと言うと…
卒業記念アルバムみたいな作品だったかな、と言うのが率直な感想です。
ダニエル・クレイグを中心にしてジェームズ・ボンドらしさを目一杯詰め込んだ作品だなと言う感じでしょうか。ボンドカーも次々乗り換えるし、ボンドガールも目先を変えながら次々と登場して実に目まぐるしい。それらに加えてQの開発した秘密兵器もちゃんと活躍するし、それらを目一杯活かしたアクションシーンも満載で飽きさせるところが無いのが素晴らしい!
しかし、同時にそれだけなのが実に残念でもあるのです。
とにかく脚本は弱くて、敵も味方もいったい何をしたいのかが良く分からないがツラい!ボンド映画で脚本が弱いのは当たり前なのでそれが欠点とはなりませんが、その割に思わせぶりなキャラクターがたくさん出てきて思わせぶりな仕草とかしますからね。なんか、そう言うの要らないかな?と思ってしまう。
冒頭でそのテーマ曲をアレンジした劇伴が流れ、ボンドが生涯の伴侶との新しい生活を模索しているところで、これは唯一ボンドが結婚した『女王陛下の007』をモチーフのひとつにしているのだろうな、と気づくようになっているところはニヤリとしましたが。
正直言えば、ダニエル・クレイグ主演の一連のボンド映画は、やはり私が好きだったかつてのボンド映画とは違うシリーズと言う認識を新たにした最終作となりました。これはこういう作品なのだと、これはこれで面白かったな!と言うのが率直な感想ですね。
時代だなと思わされた黒人女性の007であったり、ボンドの意思と血脈を守り育む決意をするヒロインとか、ちょっとボンドの世界にはそぐわないなと感じましたが、それらもまた時代性なのでしょう。作品のテーマを曲げるほど社会への配慮が必要な時代があったな…といつか再び観た時に思い出す事でしょう。
エンドクレジットには『JAMES BOND WILL RETURN』とありました。ダニエル・クレイグは降板しますが、また新たな配役でジェームズ・ボンドは帰ってくると言う事ですよね。
私は原作小説も好きでイアン・フレミングによる本はすべて読んでいるのですが、別作家によるボンドシリーズにはどうしても手が出ないでいます。観ないとは言いませんが、それと同じように一歩引いて向き合う事になりそう。
ジェームズ・ボンドと言うコンテンツは、とっくに役割を終えていたのだろうなと感じたダニエル・クレイグ=ジェームズ・ボンドだったかと。
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