タランティーノ監督が『ヘイトフル・エイト』と撮るに当たって大きな影響を受けたと言うホアキン・ロメロ・マルチェント監督の『カットスロート・ナイン('72)』を観ました。
マカロニ・ウェスタン(スパゲッティ・ウェスタン)と呼ばれたイタリア製西部劇ですが、そのあまりの人気にヨーロッパ各国の映画人も次々とその製作に参入した結果、百花繚乱・玉石混交な有様となり、末期には西部劇とは名ばかりで過激で残虐、性的な描写で売っているような作品も多かったと言います。
本作は、”ユーロ・トラッシュ・シネマ”とも呼ばれるそんなB級西部劇を代表する一本とのことです。スペインとイタリアの合作でして全体の作りはとことんチープなのですが、その一方で過激なまでの残虐描写だけは念入りに撮影されています。そりゃ、タランティーノが狂喜乱舞するわけです。
とにかく、ハリウッドの西部劇ではあり得ないような残虐な描写がてんこ盛りでした。銃で撃たれて目玉が飛び出したり、腹を切り裂かれて内蔵がはみ出したり…特撮は実に素朴でアマチュア映画レベルではありますが、そのプリミティブな感じがむしろ不思議な迫力があってついつい見入ってします。暴力シーンはありますが、いかにも西部劇な撃ち合いとかは無いのも特徴ですね。
脚本はそれなりに練られているように感じました。感じましたが、それぞれは魅力的なのですが、きっと監督が思いついて挿入してしまったのだろうと思われるようなシーンが脈絡なく入ってきたりして映画としてどうなのかなと思わされつつも、かなり自由に撮影されている雰囲気が伝わってきて楽しいです。こういうところもアマチュア映画っぽい。
西部劇の名を借りて、やりたい放題って映画でした。
これも映画だなと、そんな感想です。
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