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2012年11月28日01:18

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スペイン旅行記(2)マドリード(2)プラド美術館

プラド美術館は世界でも指折りのコレクションを持っています。こういうところに放置されたらきっと出て来られない…ので、限られた時間でガイド付きツアーで効率よく有名な作品を見て回ることができるのはありがたいです。結局自力で行ったとしても、休みに限りがある限り、「短時間で効率よく見て回る」ことしかできませんから…。

まず館内に入りますと、ガイドさんがどんどん先を行くのについて行きます。そうして立ち止まった最初の作品は…
ボスの「快楽の園」です。
実物はやはり大きいです。すごいなー、細かいなー。
それからずーっと進んで行って広いギャラリーに出ました。
ティツィアーノの「アダムとエバ」があります。後にルーベンスが模写したのですが、以前までそのルーベンスの模写が並べて展示されていたそうです。

その向かいにはティントレットの「弟子たちの足を洗うキリスト」
ずいぶん横長の絵です。しかもデカイ。さらに、ポイントがどこにあるかよくわからない絵です。中央部分には「最後の晩餐」を行っているはずのテーブルで弟子たちが飲み食いしています。右端の方でキリストが弟子たちの足を洗っています。ずいぶん端っこに主題が描かれているのです。
さらに絵の左半分の中ほどがずっと奥にアーチがあってその奥に外の風景が描かれています。そこが消失点になっているのです。主題の部分と反対側に消失点を設けているのです。ガイドさんがそこを指して右の方に立って「こちらから見てください」と言いますと、左の方に全ての物が収束していくように見えます。しかし次に左の方に移動して見てみますと…左にある消失点がずいぶん右に方に移動して中心近くに見えるのです。たぶん、理屈では成り立っているのでしょうけれど、こんな風に立ち位置で絵が変化してみえるのは不思議な感じがしました。


さて、部屋を移動していよいよスペイン三大巨匠に行きます。
まずはエル・グレコ。「三位一体」の大きな絵を見ます。そして同じ部屋の「胸に手を当てた貴人の肖像」を見ます。宗教画の三位一体は神々しい光に包まれ、人物や天使が浮き、幻視でも見ているような非現実的な世界です。しかし貴人の肖像は胸に手を当てるしぐさに崇高さを感じながらも現実に生きている人間の息づき、リアルさを感じます。グレコは現実の人間と、聖なるものをきちんと区別して描いていたのです。同じ部屋には十字架を背負うキリストの絵もありましたが、十字架を背負う受難の中にありながら、キリストの瞳は現実を越えたものを見ているような光を宿しています。

隣の部屋へ行きますと、縦長のおっき〜〜〜い絵が三つ並んでいます。左からキリスト昇天、磔刑図、洗礼図です。宗教的法悦にあふれた、非現実的な表現を駆使した異空間です。
もうちょっとゆっくり見たいな、と思いながら次へ。

スペイン三大巨匠の二人目はヴェラスケスです。
楕円形の大きな部屋に来ました。ガイドさんが案内する位置に立ち、向こうを見てくださいと言われました。そうしたら、反対側の壁に「ラス・メニーナス(女官たち)」が!まずこの離れた位置から見るのがポイントです。壁の向こうに昔のスペイン宮廷が現れたように感じます。さて、そのほかの絵を見ながら少しずつ近づいて行きましょう。そのほかの絵…まずすぐ横にはフェリペ4世晩年の小ぶりの肖像画。年を取って疲れたような表情まで映し出すヴェラスケスの腕。そしてこの長い顎、やっぱりフェリペ4世はハプスブルクでした。

その隣には王子の騎馬像。まだ子供です。それから大きな王妃の騎馬像。
それからマルガリータ王女の肖像。よく見るものよりは成長した姿です。髪の毛や服のレースの繊細な表現に驚きます。しかも近くによると、けっこう荒いタッチなのに、離れるとものすごくリアルに見えます。
さていよいよ「ラス・メニーナス」の近くまで来ました。本当に大きな絵です。しかも至近距離ではやはり筆のタッチは荒く見えるのですが、離れて見ますと髪の毛の柔らかな流れ、服の装飾、布の質感などがとてもリアルに見えます。フェリペ4世時代の宮廷をまるごと絵の中に閉じ込めたようです。たしかに、この絵はプラド美術館の至宝と言っていいでしょう。
さらにこの部屋にはフェリペ4世の騎馬像もあります。王妃の騎馬像と対になります。王宮前の銅像はこの絵を基にして作られたとか。

そこから移動しますと、ルーベンスの「三博士の礼拝」という、かなり、ずいぶん、バカでっかーい絵があります。ただし礼拝されている生まれたてのキリストは左の端の方に居て、あとはずっと右までたくさんの人物の群像です。さらにのちに右の方に継ぎ足しをして、ますます人物を増やしてしまう…しかもその中に自分を描き入れているとか。
さらにギャラリーを進んでいきますが、歩きながらルーベンスの「三美神」があるのがチラリと見えました。少佐が「三段腹」と評するような、たるんだお肉の女性が三人。

それからスペイン三大巨匠、三人目はゴヤ。
まず国王カルロス4世一家。
気弱そうな国王に対して中央に堂々と目立っている王妃。国王っていったい誰?な絵で、しかも王妃は権力を握ったいやらしさを感じるような、お世辞にも美しいとは言えない姿を描いて不興を買わなかったのかと思いますが、ドレスが豪華に書かれているのを見て満足したとか…。

ナポレオン圧政を描いた、ほぼ同じ大きさの絵。
「マドリード、1808年5月2日」
「マドリード、1808年5月3日」
5月3日は「マドリード市民の処刑」としても有名です。

「裸のマハ」と「着衣のマハ」も並んで見られます。本当にそっくりなポーズですが、よく見ると裸の方がクッションやレースが繊細に描かれています。着衣はカモフラージュで、裸の方が本命の絵だったんですね。
ここでガイドさんが、この絵はどこかおかしくありませんか、と言います。どこだろ…と考えていたら、「首が描かれていない」ということです。確かに首が見えず、頭が不自然に身体にくっついているように見えます。これは実在のモデルはいない、架空の人物の絵だと言うことを表しているんだそうです。そう言われたら、もうこの絵は頭だけ浮きあがったヘンな絵にしか見えません。

それから「黒い絵」のシリーズが並んだ部屋に行きます。本当に黒い絵ばかり…。
そこを出たら最後の一枚、「ボルドーの乳売り娘」。精神を病んだような黒い絵の時代を経て、最晩年にやわらかな光に包まれたようなおだやかな女性の絵を描いたのです。これは印象派の先駆的な絵でもあるということです。

これで見学は終わり。
トイレ休憩にしばらく時間を取ったのでミュージアムショップに行きました。図録はどんなのがあるか見てみましたが、まずものすごくごっついのがありました。日本語含め各国語。まあ、この美術館ですから…。でもこんなごついの、持って帰れない、読めない。いろいろグッズもあってウロウロしてたらレジの近くにプラド美術館100選という手ごろな大きさの本がありました。ちゃんと日本語も。これにしようと思いました。
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