リキの危機に現れたミュー隊長。
「おまえ…何でここに?」
「フフフッ」
優しくリキに微笑むと剣をリキに、いや、リキを抑えてるナーバス向けた。
「むっ!?」
剣を避けようと直ぐ様後ろに下がった。
「貴方を迎えに来たのよ。余計なお世話だったかしら?」
「……いいや、今回は礼を言うぞ」
「…………リキ」
怪我をし弱々しく飛んでいるシルクを見てミュー隊長が「どっちがやったの?」と聞き、サーラが自分だと答えた。
「私の友達を傷付けた罰、受けてもらうわよ」
「良いのですか?彼はダメージを受けてますよ?」
「ちょうど薬の効き目が切れてきた所だよ。まだまだやれるぜ?」
不良と護衛隊長VS執事とメイドと言う何とも奇妙な組合せの戦いが始まった。
ドガガガガ………
入り乱れた戦いは、優劣を見極めるのが困難だった。
ナーバスとサーラは、長い間タッグを組んでいた事も有り阿吽の呼吸で戦っているが、リキとミュー隊長は臨機応変で戦っている。
寧ろ、リキ達の方が難しい戦いの筈なのに互いの考えを読み取っているみたいだ。
ほぼ同時に距離を取る4人。
それほど時間が経ってない筈なのに、4人共、肩で息をしている。
「驚きましたね?お二方はタッグを組んだ事が有るんですか?」
「初めてだよ」
「廃墟の時は、私が邪魔しちゃったみたいだしね」
「それでこの連携……お見事です」
「ハハハハ!敵に称賛されるとはな」
「ですが、我々とではキャリアの差が有ります」
「それがどうした?俺にとっちゃケンカはキャリアとかじゃねえんだ。強い奴が勝つ!それだけだ!」
再び動き出した。
誰が誰を攻撃しているのか分からない大乱闘は、時の流れを忘れる程激しかった。
ドガッ!!
「ぅあっ!?」
ミュー隊長の一撃を受けたサーラがその場に蹲った。
「ぬぅっ?!」
残ったナーバスはリキとミュー隊長に挟み撃ち状態になり暫く2人を見た後、両手を挙げて降参の意を表した。
「参りました。長い事戦ってきましたが、これ以上タフな戦いは出来ません」
フゥ〜っと、ゆっくり肩を降ろすミュー隊長と、ドカッと地面に腰を降ろすリキ。
「マジで疲れたわ〜ぁ。歳の割に戦うじゃねえか?」
「お国の為、王女の為に日々鍛練していますので」
「し…しょぅ……すみま…せん」
「仕方有りません。これまでの相手とは違いますので」
「王子様……」
4人が、特にナーバスとサーラがミルフィーユ王女が来た事に動揺した。
「ミ…ミルフィーユ王女!?」
「行ってしまうのですか?王子様」
寂しくも威圧感のある瞳でリキを見てくる。
だが、リキは平然と答えた。
「また遊びに来てやるよ。だから、そんな顔すんな?」
その言葉にミルフィーユ王女は微笑んだ。
「王子様の言葉は信じます。また、ご馳走を用意しますね」
「今度は薬入れるなよ?」
ミルフィーユ王女がペコッと頭を下げたのを見てからリキはシルクを肩に乗せてミュー隊長と一緒にグラン王国へ戻って行った。
「……ミルフィーユ王女」
恐る恐る声を掛けるナーバス。
「王子様が来られた時の為の準備をします。今度はちゃんとしたおもてなしを致します」
「は……はい……」
「シルク、ケガは大丈夫なの?」
「は…はい、何とか」
「なぁ、何で迎えに来たんだ?」
「貴方の帰りを待ってる人がいてね。とても、心配そうだったから私が代わりに来たの」
「……そっか」
「あの2人、結構強かったでしょ?」
「メイドはともかく、執事は相当な奴だったなぁ」
「そうでしょうね。ナーバスは世界中を旅した元格闘家だからね。あらゆる武術を経験してるのよ」
「だからかぁ……」
「私でも勝てるか微妙な所よ」
「………オイ、お前は俺が倒すまで誰にも負けんじゃねえぞ?」
(ドキッ!?)
「………それって、どういう…」
「リキさーーん!!」
元気な声で呼んできたのはミナだった。
いつの間にか、グラン王国に着いていたようだ。
ガシッ
「お…オイ!」
勢い良く抱きついてきたミナに少し戸惑いながらも受け止めた。
「すみません。帰って来てくれたのが嬉しくて」
「1日居なかっただけじゃんか?」
「リキさんを取られるんじゃないかって不安だったんですよ!」
女の勘とは怖いものだ。
薬を使って無理矢理ヤられそうになったのだから、その不安は当たってた。
(………?)
シルクは少し気になった。
さっきまで、楽しく話していたミュー隊長の笑顔が乾いた様に見えていた事に。
「……あれ?シルク、そのケガは?」
「向こうでのゴタゴタに巻き込んじまってな」
「でしたら、直ぐに医者に見せないと!」
ミュー隊長が念のためにと、予め医者を手配してくれていたから、治療はスムーズに進んだ。
「とりあえず、暫くは安静だって」
「………そっか」
こういう時、異世界で良かったと安心した。
元の世界だったら、 何も分からずパニックになってただろうし。
「すぅ〜〜…すぅ〜〜…」
痛みを感じさせない安らかな寝息を立てて寝ているのをリキは安心して見ていた。
「ちっせぇクセに無茶しやがって。……やっぱ、根性有るな」
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