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2020年06月01日08:28

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『私の最高のハズレくじ』32話

「……ぅ〜〜ん」

見慣れない天井が視界に入った。

「………ぅっ!?」

身体を起こそうとすると、目眩と頭痛がしてくる。

「お目覚めですか?」

ベッドの傍にミルフィーユ王女が立っていた。

「お前……何をした?」

「申し訳ありません。お食事に薬を混ぜました。王子様を逃がさない為に」

「まさか、エミリオの敵討ちか?」

「いいえ。あの男の話は全て本当です」

「じゃあ、何でこんな扱いを?」

「王子様を私の……私だけのモノにしたいのです」

ミルフィーユは着ていたドレスを脱ぐと純白の下着姿になり、ベッドに身を乗り出した。。 

「ウフフ……」

妖しげな笑みを浮かべて近付いてくる。

「っ……オイ、妖精!シルク!!」

「あの妖精でしたら、そこに」

シルクは窓際にある鳥籠の中で倒れていた。

「アイツに何をした?」

「同じ薬で眠っているだけです。いずれ目を覚ましますよ」

ゆっくり手を差し伸ばしてリキの腹部をなぞっていく。

「……っぅ」

「素晴らしい筋肉ですね。服の上からでも分かりますわ」

今度は胸元に抱き付いてきた。

「あぁ……何て至福な時でしょう!このまま時が止まれば良いのに」

そう言いながら、リキの服を捲っていこうとした。

「オイ!身体を見たら殺すぞ?」

薬のせいで少し力が弱まっていて、もし強引にいかれたら押し負けるかと思ったが、ミルフィーユ王女はあっさりと止めた。

「失礼しました。王子様のご機嫌は損ねたくありませんので。お詫びに…」

「ウブッ………」

「どうですか?王子様。私の程よく育った2つの果実は?」

自分の胸元に顔を埋め、ゆっくりと左右に動かしていく。

「ムグ…ぐ……」

「ウフフ…ウフフフフ……王子様のも見せてもらえます?」

ズボンのジッパーへと手を滑らせ、開ける前に少し撫でていく。

「おま…何やって……」

「何やってんのよーー!?」

窓の方から聞こえる怒声。
シルクが起きたんだ。

「目が覚めたのね?妖精さん」

「アンタ、リキに何しようとしてんのよ!?」

「黙って見てなさい。これから私と王子様が1つになるんだから」

「1つにって……お前!?」

「王子様の為に…この時の為に身を清めてました。ご覧ください」

ミルフィーユ王女は下着を脱ぎ捨て霰もない姿をリキに見せた。
少し頬を赤らめているが、何も隠すこと無く堂々とアピールする姿にリキは思わず全身を眺め「ゴクッ」と生唾を飲んだ。

ムクッ……

「!……嬉しいですわ。私を見て元気になってくださるなんて」

テントを張ってる箇所を触り再びジッパーを開けようとする。

「ダメダメダメダメ!?それ以上はダメー!」

「うるさいですよ?いくら王子様の付き人でも騒がしくしたら怒りますよ」

と言うか、何でこんなに必死に止めようとしてるのだろうか。
自分でも分からないけど、目の前で行う事が許せない。
その気持ちだけで、何度も止めろと叫び続けた。

「王子様、今こそ1つに」

「お前、本気でヤる気か?」

「勿論です。ウフフフフ…」

「ダメエエエェェェエエーーー!!」

バキィィン!!

「何っ!?」

突然鳴り響いた破壊音。

「えぇっ!?」

リキは驚いた。
鳥籠にいたシルクが人間と同じ大きさになっているからだ。

「……ウソ!?大きくなっちゃった!」

シルク自身も驚いていた。
人間と同じ大きさになるなんて、自分自身にそんな力が有るなんて思いもしなかった。
羽はちゃんとある。
飛ぶ事も可能。
だったら、やることは1つ。

ヒュン!

ミルフィーユ王女に向かって一直線に飛び、体当たりで吹っ飛ばした。

「うぁっ!?」

ベッドから転げ落ちるミルフィーユ王女。

「リキ、動ける?」

「少しフラつくが……お前、デカくなれんの?」

「それは後で!逃げるよ!」

リキの腕を引っ張り窓へ向かって行った。

「王子様!?」

「あばよ!」

そう告げると外に飛び出していった。
予想以上の高さに「げっ!?」と青ざめたがシルクが両腕を掴んで飛行していく。

「リキ、あんまり保てないから早めに降ろすよ?」

数メートルの高さの所でシルクの身体は元に戻ったが、リキは無事に着地できた。

「ふぅ〜〜……流石に焦ったなぁ」

「グラン王国まで歩ける?」

「問題無えさ」

「大有りですよ?」

「!?」

待ち構えていたようにナーバスが現れた。

「お城に戻っていただきますよ」

「嫌だと言ったら?」

「力付くで連れ戻します」

両者戦闘体勢に入った。
シルクは少し離れて見ることにした。

…………ッタン!

ナーバスが静かに、そして素早く間合いを詰めていく。

ヒュンッ

「くっ……」

左後ろ回し蹴りをガードし、負けじと同じ左後ろ回し蹴りで反撃したが、ナーバスは顔色を変えること無く左手で受け止めた。

「……やるじゃんか?」

「そちらも、なかなか良い蹴りですよ」

ほぼ同時に左足を戻し、至近距離での攻防が始まった。

「……このっ!?」

ナーバスの攻撃は素早く重みがある。
さっきの蹴りも防いだ箇所がビリビリと振動が伝わってくるから、なるべくかわす様にしていく。

(……少し距離を取るか)

リキが2、3歩下がると読み取った様に右前蹴りをしかけた。

「ぐおっ……!?」

胸元を蹴られ、更に数歩下がる。
追撃が来ると思ったが、ナーバスは構えたまま動かなかった。

「何だ?余裕のつもりか?」

「いえいえ、これでも警戒しているのですよ?薬が効いてる筈なのに、意外と動けてますからねぇ」

「伊達にケンカしてねぇんだよ!」

リキが反撃に出た。
蹴りと殴りを休む間も無く続けていくがナーバスは悉く防いでいく。

(………くそっ!?)

「良い攻めですが、荒々しいですね」

「これが俺流なんだ…よ!」

蹴りあげると、舞い上がった土がナーバスに振りかかった。

「ぐっ……」

少し目に入り、動きが鈍った所を更に攻めにいった。

「使えるモンは使う!卑怯呼ばわりは通じないからな!」

目を瞑って顔を守る体勢になったナーバス。

「オラァっ!!」

ドスッ……

「ぐぅ……」

腹部への膝蹴りに確かな手応えを感じた。

「もう一丁!」

ドガッ!!

「がぁっ……」

「リキ!?」

吹っ飛ばされたリキ。
ナーバスのカウンターではなく、横槍を入れてきた者が現れた。

「師匠、助太刀します」

メイドのサーラだ。
柄が鉄製の箒でリキに突きを放ったのだ。

「ッテェ〜〜…随分遅れて来たもんだな?」

「ミルフィーユ王女を慰めるのに時間が掛かりましたので」

「フゥ〜〜…今のは少し危うかったので、なかなか良いタイミングでしたよ」

「恐縮です」

(……ヤバいなぁ)

そう思った途端に2人が攻めてきた。

「……チッ!?」

2人の息の合った攻撃はリキに反撃の隙を与えなかった。
どちらかの攻撃を防げばどちらかの攻撃を受けてしまう。
同じ方向から来たかと思えば、前後からの挟み撃ちが来る。

「うぅ〜〜…」

見ていたシルクが堪らずリキの加勢に入った。
攻撃しても効かないだろうから、2人の目の前を飛び回って気を反らそうと考えた。

「すみませんが…邪魔です」

サーラが箒でシルクを叩き飛ばした。

「ギャアーッ!?」

「!?……シルク!!」

目の色を変えたリキがサーラに攻撃を仕掛けた。

「そうされては隙が出来ますよ?」

ナーバスの蹴りがリキの横腹に入ったが、リキは怯まずサーラに攻撃した。

ガァァーーン!!

「ぅっ……」

リキの前蹴りを箒で防いだが、手放してしまいそうな振動がビリビリと伝わってくる。

「ラァァッ!!」

殴りかかろうとしたが、ナーバスに羽交い締めにされ動きを封じられた。

「こっ……放せやっ!?」

「やはり貴方は侮れませんね」

「……今の一撃、防いでなければ気絶したかも知れません。申し訳ありませんが、暫く眠ってもらいます」

サーラが姿勢を低くして力を溜め始めた。

「ハァァッ!」

箒の柄の先端をリキに向け一直線に放った。

(……ぐっ!?)

ギィィーーン!!!

大きく鳴り響く金属音。
間一髪の所で箒を止めたのは一本の刃。

「私も混ぜてもらえるかしら?」

現れたのはミュー隊長だ。
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