「……ぅ〜〜ん」
見慣れない天井が視界に入った。
「………ぅっ!?」
身体を起こそうとすると、目眩と頭痛がしてくる。
「お目覚めですか?」
ベッドの傍にミルフィーユ王女が立っていた。
「お前……何をした?」
「申し訳ありません。お食事に薬を混ぜました。王子様を逃がさない為に」
「まさか、エミリオの敵討ちか?」
「いいえ。あの男の話は全て本当です」
「じゃあ、何でこんな扱いを?」
「王子様を私の……私だけのモノにしたいのです」
ミルフィーユは着ていたドレスを脱ぐと純白の下着姿になり、ベッドに身を乗り出した。。
「ウフフ……」
妖しげな笑みを浮かべて近付いてくる。
「っ……オイ、妖精!シルク!!」
「あの妖精でしたら、そこに」
シルクは窓際にある鳥籠の中で倒れていた。
「アイツに何をした?」
「同じ薬で眠っているだけです。いずれ目を覚ましますよ」
ゆっくり手を差し伸ばしてリキの腹部をなぞっていく。
「……っぅ」
「素晴らしい筋肉ですね。服の上からでも分かりますわ」
今度は胸元に抱き付いてきた。
「あぁ……何て至福な時でしょう!このまま時が止まれば良いのに」
そう言いながら、リキの服を捲っていこうとした。
「オイ!身体を見たら殺すぞ?」
薬のせいで少し力が弱まっていて、もし強引にいかれたら押し負けるかと思ったが、ミルフィーユ王女はあっさりと止めた。
「失礼しました。王子様のご機嫌は損ねたくありませんので。お詫びに…」
「ウブッ………」
「どうですか?王子様。私の程よく育った2つの果実は?」
自分の胸元に顔を埋め、ゆっくりと左右に動かしていく。
「ムグ…ぐ……」
「ウフフ…ウフフフフ……王子様のも見せてもらえます?」
ズボンのジッパーへと手を滑らせ、開ける前に少し撫でていく。
「おま…何やって……」
「何やってんのよーー!?」
窓の方から聞こえる怒声。
シルクが起きたんだ。
「目が覚めたのね?妖精さん」
「アンタ、リキに何しようとしてんのよ!?」
「黙って見てなさい。これから私と王子様が1つになるんだから」
「1つにって……お前!?」
「王子様の為に…この時の為に身を清めてました。ご覧ください」
ミルフィーユ王女は下着を脱ぎ捨て霰もない姿をリキに見せた。
少し頬を赤らめているが、何も隠すこと無く堂々とアピールする姿にリキは思わず全身を眺め「ゴクッ」と生唾を飲んだ。
ムクッ……
「!……嬉しいですわ。私を見て元気になってくださるなんて」
テントを張ってる箇所を触り再びジッパーを開けようとする。
「ダメダメダメダメ!?それ以上はダメー!」
「うるさいですよ?いくら王子様の付き人でも騒がしくしたら怒りますよ」
と言うか、何でこんなに必死に止めようとしてるのだろうか。
自分でも分からないけど、目の前で行う事が許せない。
その気持ちだけで、何度も止めろと叫び続けた。
「王子様、今こそ1つに」
「お前、本気でヤる気か?」
「勿論です。ウフフフフ…」
「ダメエエエェェェエエーーー!!」
バキィィン!!
「何っ!?」
突然鳴り響いた破壊音。
「えぇっ!?」
リキは驚いた。
鳥籠にいたシルクが人間と同じ大きさになっているからだ。
「……ウソ!?大きくなっちゃった!」
シルク自身も驚いていた。
人間と同じ大きさになるなんて、自分自身にそんな力が有るなんて思いもしなかった。
羽はちゃんとある。
飛ぶ事も可能。
だったら、やることは1つ。
ヒュン!
ミルフィーユ王女に向かって一直線に飛び、体当たりで吹っ飛ばした。
「うぁっ!?」
ベッドから転げ落ちるミルフィーユ王女。
「リキ、動ける?」
「少しフラつくが……お前、デカくなれんの?」
「それは後で!逃げるよ!」
リキの腕を引っ張り窓へ向かって行った。
「王子様!?」
「あばよ!」
そう告げると外に飛び出していった。
予想以上の高さに「げっ!?」と青ざめたがシルクが両腕を掴んで飛行していく。
「リキ、あんまり保てないから早めに降ろすよ?」
数メートルの高さの所でシルクの身体は元に戻ったが、リキは無事に着地できた。
「ふぅ〜〜……流石に焦ったなぁ」
「グラン王国まで歩ける?」
「問題無えさ」
「大有りですよ?」
「!?」
待ち構えていたようにナーバスが現れた。
「お城に戻っていただきますよ」
「嫌だと言ったら?」
「力付くで連れ戻します」
両者戦闘体勢に入った。
シルクは少し離れて見ることにした。
…………ッタン!
ナーバスが静かに、そして素早く間合いを詰めていく。
ヒュンッ
「くっ……」
左後ろ回し蹴りをガードし、負けじと同じ左後ろ回し蹴りで反撃したが、ナーバスは顔色を変えること無く左手で受け止めた。
「……やるじゃんか?」
「そちらも、なかなか良い蹴りですよ」
ほぼ同時に左足を戻し、至近距離での攻防が始まった。
「……このっ!?」
ナーバスの攻撃は素早く重みがある。
さっきの蹴りも防いだ箇所がビリビリと振動が伝わってくるから、なるべくかわす様にしていく。
(……少し距離を取るか)
リキが2、3歩下がると読み取った様に右前蹴りをしかけた。
「ぐおっ……!?」
胸元を蹴られ、更に数歩下がる。
追撃が来ると思ったが、ナーバスは構えたまま動かなかった。
「何だ?余裕のつもりか?」
「いえいえ、これでも警戒しているのですよ?薬が効いてる筈なのに、意外と動けてますからねぇ」
「伊達にケンカしてねぇんだよ!」
リキが反撃に出た。
蹴りと殴りを休む間も無く続けていくがナーバスは悉く防いでいく。
(………くそっ!?)
「良い攻めですが、荒々しいですね」
「これが俺流なんだ…よ!」
蹴りあげると、舞い上がった土がナーバスに振りかかった。
「ぐっ……」
少し目に入り、動きが鈍った所を更に攻めにいった。
「使えるモンは使う!卑怯呼ばわりは通じないからな!」
目を瞑って顔を守る体勢になったナーバス。
「オラァっ!!」
ドスッ……
「ぐぅ……」
腹部への膝蹴りに確かな手応えを感じた。
「もう一丁!」
ドガッ!!
「がぁっ……」
「リキ!?」
吹っ飛ばされたリキ。
ナーバスのカウンターではなく、横槍を入れてきた者が現れた。
「師匠、助太刀します」
メイドのサーラだ。
柄が鉄製の箒でリキに突きを放ったのだ。
「ッテェ〜〜…随分遅れて来たもんだな?」
「ミルフィーユ王女を慰めるのに時間が掛かりましたので」
「フゥ〜〜…今のは少し危うかったので、なかなか良いタイミングでしたよ」
「恐縮です」
(……ヤバいなぁ)
そう思った途端に2人が攻めてきた。
「……チッ!?」
2人の息の合った攻撃はリキに反撃の隙を与えなかった。
どちらかの攻撃を防げばどちらかの攻撃を受けてしまう。
同じ方向から来たかと思えば、前後からの挟み撃ちが来る。
「うぅ〜〜…」
見ていたシルクが堪らずリキの加勢に入った。
攻撃しても効かないだろうから、2人の目の前を飛び回って気を反らそうと考えた。
「すみませんが…邪魔です」
サーラが箒でシルクを叩き飛ばした。
「ギャアーッ!?」
「!?……シルク!!」
目の色を変えたリキがサーラに攻撃を仕掛けた。
「そうされては隙が出来ますよ?」
ナーバスの蹴りがリキの横腹に入ったが、リキは怯まずサーラに攻撃した。
ガァァーーン!!
「ぅっ……」
リキの前蹴りを箒で防いだが、手放してしまいそうな振動がビリビリと伝わってくる。
「ラァァッ!!」
殴りかかろうとしたが、ナーバスに羽交い締めにされ動きを封じられた。
「こっ……放せやっ!?」
「やはり貴方は侮れませんね」
「……今の一撃、防いでなければ気絶したかも知れません。申し訳ありませんが、暫く眠ってもらいます」
サーラが姿勢を低くして力を溜め始めた。
「ハァァッ!」
箒の柄の先端をリキに向け一直線に放った。
(……ぐっ!?)
ギィィーーン!!!
大きく鳴り響く金属音。
間一髪の所で箒を止めたのは一本の刃。
「私も混ぜてもらえるかしら?」
現れたのはミュー隊長だ。
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