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2020年05月27日09:05

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『私の最高のハズレくじ』27話

ミナの家に泊まってから数日が経った。
世話になりっぱなしは気が引けるからとシルクは手伝いをしようとリキに話した。
ミナは大丈夫だと言うが、リキも身体を動かさないと落ち着かないからと軽い手伝いを受けに出た。
食器の片付けや洗濯物を干す手伝い(洗濯物を持つ係)、買い物の荷物持ち等々。
何というか、端から見ると同棲生活しているみたいだ。
2人が街中を歩くと周りから「付き合い始めたの?」と聞かれる。
リキは照れる素振り無く肯定も否定もしない。
ミナは顔を赤らめて満更でもない反応を見せる。
リキの手をチラチラ見て、手を繋いで良いのか腕を組んで良いのかと考えはするが行動には移せないでいた。
すると……

「うわぁぁーー!」

「キャァァーー!」

また何か事件が発生した様だ。
安静を言い渡されたリキだが、見に行くのは大丈夫だろうと走りだした。
ミナも少し遅れてリキを追い掛ける。

「おい、そっちに行ったぞ!」

「くそ!素早い奴だ…」

既に現場に着いた兵士達が対応していたが、どうにも手こずっている様だ。

「オイ!何か出たのか?」

リキが話し掛ける。

「……あぁ、奇妙なのが現れたんだ」

「人の様だが、人間離れした動きをして、なかなか取り抑えられないんだ」

「何処に行った?」

「建物を屋根から屋根へと飛び移っている」

そう聞き、視線を上げると丁度近くの建物の屋根に何かを発見した。
太陽の逆光により黒い影しか認識出来ないがキョロキョロと辺りを見渡しているみたいだ。

(……何だ、ありゃ?)

黒い影がピクッと反応し、リキの方をジーッと見てきた。

「………へっ?」

まさかコッチに来る気かと思った矢先、黒い影がリキに向かって飛び降りてきた。

「なっ!?」

太陽の光により一瞬反応が遅れてしまい黒い影がリキを覆い被さった。

「しまっ………」

不意を突かれ、やられると思ったら……

「リキさーーん!大丈夫で…す……かぁ?」

遅れて来たミナが呆気に取られた視線の先には。

「ペロペロ…」

「オイ!何をする!?やめろ、ガアル!」

「リキ イイアジ!」

黒い影の正体はガアルだった。
リキに抱きついたかと思ったら、ペロペロと顔を舐め回している。

「お前、何しに来たんだ!?」

「リキ アウ」

「俺に?」

「あ…あの〜…リキさん?この方は?」

ミナが恐る恐る聞いてきた。
ガアルに対する恐怖というより、恐らく2人の関係性でだろうが。

「こいつ、森で知り合った人獣のガアルっつーんだ」

「じ…人獣!?」

全員が警戒しだした。

「…どうした?」

状況を把握出来ないリキに兵士が答えた。

「知らないのか?人獣は人間とは馴れ合わないんだぞ」

「そうなのか?」

「ニンゲン ワタシタチ キケン イウ」

「ちょっとケンカが強いだけだろ?」

「リキ ワタシ ケンカ タノシイ イッタ」

「あぁ、お前、結構強かったな」

と、腕の包帯を見せるとガアルが驚いて聞いてきた。

「ソレ…ワタシノ……セイ?」

動揺しているガアルにリキは普通に答えた。

「ケンカすりゃケガの1つや2つはできるだろ?何をビビってんだ?」

この一言にガアルの表情は晴れやかになった。

「リキ イイニンゲン スキ」

またリキの頬を舐め回した。

「何すんだっつーの!?」

「スキ オス アイサツ マタ クル」

そう言い残し、ガアルは近くの建物の屋根まで登って森へと帰って行った。

「……何なんだ?」

人獣が現れた事に一同は驚きはしたが、何も被害は無かったそうだ。
ただ、兵士達はリキを不思議な目で見ている。
一体、どうやって人獣と慣れ親しんだのだろうかと。

「リキさん、行きましょう!」

リキの手を掴んで素早く現場を去ろうとする。

「お…おい、イテぇから引っ張るなよ!」

集まっていた兵士達も、特に大事にはならなかったから、業務に戻った。





シルクとロミオと合流して、家に入るとミナがリキを睨むように聞いてきた。

「リキさんは……」

「ぁん?」

「リキさんは、あのガアルって言う人が好きなんですか?」

「ハァ?何言って…」

「答えてください」

2人の会話を聞いたシルクは只ならぬ雰囲気を察しロミオに手伝ってほしいと家の外に出た。

「………」

「俺はガアルに好きとか嫌いとかの感情は持ち合わせてない。良いケンカ仲間が出来たと思っただけだ」

「本当ですか?」

「あぁ。てか、何でそんなにムキになってんだ?」

リキは恋愛に関して鈍い所が有るそうだ。
だから、ストレートに告げる事になった。

「私は……」

リキの両頬に手を添えて口吻を交わしていった。

「むぐっ…!?」

一瞬の出来事だけど、時が止まった様に長く感じた。

「………ふぅ〜〜…」

ゆっくりと顔を離しと、小さく息を吐いてリキに告白した。

「私は、リキさんが好きです!1人の男性として…大好きです!」

さっきまでムキになっていた表情がトロンと蕩ける様に崩れ、瞳に薄らと涙が浮かんでいた。
好意を寄せていたが、想いを告げるのはとても勇気のいる事だったそうだ。
少し間が空くと、今度はリキが口を開いた。

「そう言ってくれるのは嬉しいけど、俺を好きにならない方が良いぞ?」

ミナの身体が小刻みに震え出す。

「何故…ですか?私がケンカ出来ないからですか?」

「違う」

「では、どうして……」

「俺は…この世界の人間じゃねえんだよ」

「…………えぇっ!?」
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