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2020年01月27日21:43

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恥ずかしながら、帰って参りました「ペットセメタリー」


(ご注意)お旧作と本作の内容に触れていますので、情報漏えいに敏感な方は読まない事をお勧めします。

ペットセメタリーという映画は、オリジナル版が非常に有名です。
昔、様々な友人に「今まで観た映画で一番怖かった映画は?」と聞くと、高い確率でこの映画をあげていました。
どんな映画なのかは、そこで聞いた話とテレビCMだけで大体分かりましたが、正直積極的に観たいと思いませんでした。
ホラーは大好きでしたが、悲しいお話は苦手だったのです。

結局、オリジナル版をちゃんと観たのは本当に最近で、wowowで放映された時でした。
非常に面白く、また凶悪な映画だと思いました。
そもそも救いの無いお話に加え、非常に嫌らしい演出が随所にあって、子供の頃観たら随分ショッキングだっただろうと思ったのです。
猫の死体が地面にベッタリ張り付いているのを剥がして持ち上げるシーンのリアルさ、お父さんと生き返った息子がバトルしている頭上で、死んだお母さんがブラブラしているシーン等々。

そして、何よりも小さな子供がドデカいトラックに轢かれるシーンです。
完全に見せ場として、ガンガンにサスペンスを盛り上げる演出をしているのもエグイのですが、その後の両親が嘆き悲しむシーンの地獄も辛すぎる・・・。
こういう、通常のエンターテイメントでは配慮するような部分をちっとも配慮しなかったからこそ、語り継がれる作品になったのだと思います。

今になってこの作品をリメイクするという企画、相当困難である事は間違いありません。
どのように挑戦したのか、興味があったので観てみました。

観ている間にお感じたのは、非常に丁寧にオリジナル版を踏襲しているな、という事です。
いくつか、はっきりと変えた設定はありますが、そこ以外はほとんど同じ様な展開で終盤までいきます。
もちろん、特殊メイク等、今ならではのグレードアップした部分はあるし、どっきりビックリシーンは随所に足されています。
普通によく出来たホラー映画として楽しめる内容なのは間違いありません。

それだけに、意図的に変えた部分が目立つかもしれません。
と言うか、オリジナル版を知っている人に目配せする様にも感じるシーンがいくつかありました。
オリジナルと同じと見せかけて・・・違いました!みたいな。
こういうの、かえってオリジナル版のファンの神経を逆撫ですると思うのですが・・・。

まあしかし、この映画の一番の見せ場はラストでしょう。
オリジナル版の終わり方というのはこの映画の印象を決定づける部分で、人間の悲しさ、どうしようもなさを感じさせる、とても大事な場面です。
ここまで完コピしたら、完全にただのカバーとなってしまうわけで、どうしたって手を加える必要がある。
果たしてどうだったかというと・・・。

同じくスティーブン・キング原作の映画で「ミスト」があります。
あれの原作のラストと映画版のラスト。
これが、オリジナル版とリメイク版の違いに似ていると感じました。
この先の展開を予想させつつ、あえてそこまで描かないで余韻を残すのがミストの原作の終わり方なのに対し、映画版では思い切ってその先まで完全に描き、まるでブラックジョークの様な「あるだろう展開の一つ」を提示していました。

今回のペットセメタリーも、展開は一部変わるものの、要はオリジナル版のその先を描いているわけです。
しかし、その違いによる印象はミスト同様、まるで違ってきます。
悲しい余韻を残すオリジナル版と違って、ショッキングさのみを強調した終わり方になっているのです。

これは・・・オリジナルのファンが一番激怒する方法を選んでしまったと思いました。
基本は忠実なのに、一部だけ変えてしまう。
しかも、一番重要な部分を安易に変えてしまう。
これは、一番批判されやすいやり方だと思うのです。

「ミスト」も、あのラストにするなら、そこへ向かうまでの内容も改変する必要があると思います。
ブラックな笑いを強調するなどして、なるほど、ここへ落とされるわけかと納得できる様に、全体のテイストを変える方が良かったと感じます。
今回のリメイク版ペットセメタリーも、丹念に家族のトラウマや愛情を描いたわけですから、それが活かされるラストにするべきだったと感じました。
もし、このラストにこだわるならショック映画として割り切り、ビックリ演出をテンポ良く繰り出し、ブラックな味付けをしたら良かったと思います。

みんなゾンビになって、ゲームのサイレンに出てきたみたいに、微かに残る記憶に従って家の中で生活を続けるというハッピーエンドも良いし、悲しい感じまで踏襲するなら心中エンドでも良い。
家族みんなで力を合わせて街を襲って、世界の終わりが始まるというのも楽しい。
今回のラストにあともう一捻りあったら、オリジナル版と差別化できて納得したかもしれません。

これは「新感染」を観た時に思いついたのですが、父親のゾンビが心の中では娘を愛おしく抱きしめているのに、実際は食べてしまっているというラストです。
よくゾンビ映画では、ゾンビになってしまった恋人や家族に噛み殺されてしまうという悲劇が描かれますが、そのゾンビにも微かな記憶があって、しかしその習性には抗う事が出来ないという点を描いたら、ゾンビというものの悲しさが描けたのではないかと思ったのです。

このリメイク版ではただのモンスターになってしまいますが、恥ずかしながら生き返って来てしまった家族の心を描いてみせたら、また深いドラマが描けた様な気がします。
「時には死の方が良い」というセリフを、思いきり観客に実感させるような作品になって欲しかったですね。

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