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2018年12月11日23:00

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ぼぎわんが「来る」



なんで「ぼぎわん」をカットしたのか、よっぽど中島哲也監督は「ぼぎわん」という言葉が嫌いなのでしょうか。
普通に「ぼぎわんが来る」の方がホラーっぽくてキャッチーで、楽しいと思うのですが。
何か意味があってやったのかと思ったら、映画の中でもほとんどこの言葉は登場しないのです。
「来る」だけじゃ、NHKの集金なのかヤクルトの宅配なのかエホバの証人なのか、さっぱり分かりません。

原作は先に読んでいました。
少し前ですが、日本ホラー小説大賞を受賞した作品が中島監督によって映画化される事を知って、興味を持ったのです。
中島監督と言えば、代表作はいくつかありますが、僕にとっては「告白」の印象が強いです。

これも先に原作を読んでいたのですが、完璧な映像化だと思いました。
監督は作品を選んでいます。
原作を知っていると、ただそれを確認するだけの映画になる場合もあるのですが、中島監督は必ず原作を超える勝算を持って取り組んでいるのだと思います。
「渇き」は原作を読んでいなかったので、あの悪ふざけがどこまで監督によるものなのか判断できませんでしたが。

原作の感想ですが、良い部分と難しい部分がありました。
三章からなる作品で、すべて語り手が異なる上、その語り手によって前の章の印象がガラリと変わるという仕掛けになっています。
そして、それぞれの章にクライマックスの恐怖シーンがあって、それぞれそこに向けて盛り上げるわけですが、最初の2つの章は非常に映像的で、確かに映画化したら面白いというものでした。

問題は最後の章で、一応物語を終わらせる重要な話ではあるのですが、一番退屈で地味な内容なのです。
恐怖に理由や理屈を付けると、途端に冷めてしまったりするものですが、残念ながらそうなってしまっていると感じました。
更にクライマックスは真っ暗な闇の中での戦いとなっており、そのまま映像化したら本当につまらないのです。
この最後の章を大胆にアレンジする事が、この映画の面白さを決める一番のポイントだと思いました。

当然、中島監督ならその辺は上手くやるだろうという期待を持って観ましたが・・・。
さすが、やってくれました!
「告白」はかなり原作に忠実な内容でしたが、この作品についてはかなり大胆に構成を変え、映画として最適なリミックスが行われていて、これが完璧に成功していたのです。

原作の持つ「面白い部分」と「弱い部分」を監督なりに取捨選択をし、「面白い部分」には大きく要素を加え、「弱い部分」はバッサリ切り捨て、ほとんど別物にしています。
原作の恐怖シーンは中盤にまとめ、前半はじっくりと前振りを長く置く。
そして懸念だった終盤の戦いは、映像的に非常にユニークかつ賑わいのある祭り感全開でガンガンに盛り上げる!
人によってこの改変は評価が異なると思いますが、個人的には素晴らしいと思うし、こうであるべきだよね!と共感しました。

奇しくも公開中の名作ホラー「ヘレディタリー」と被る部分も多く、家族というものが生み出す地獄や超常現象の扱い等、比べてみると面白いと思います。
作風は全然違いますが、どちらもアイデアと毒がたっぷりです。

あと、映画版の問題点としては、これはもうラストでしょう。
ここを我慢してきちんとまとめておけば、かなり万人向けの作品になったと思いますが、最後に思いきり悪ふざけをしてしまいました。
原作では逆に、実にオーソドックスながらもきちんとした終わり方をしているのですが。
何と言うか、監督の「いわゆるよくあるJホラーには絶対にしたくなかった」という思いを感じました。

確かにいつものグズグズとした人情劇場(大きな声を出した人が一等賞!)が始まらなかったのは良かったと思いますが・・・。
オムライスとは・・・。
まあ、僕は楽しく笑わせてもらいましたが、あまりにも唐突な終わり方に「いったい何がどうなった」と呆気に取られる人が続出するでしょう。

とにかく絶対支持をしたい楽しさ、面白さ。
監督の思い付きを漏らさず盛り込んだ、デラックス仕様です。
ただ、後ろに座っていた女子グループは賛否がガッチリ分かれていましたが、監督のサービス精神が完全に裏目になる人もいるとは思います。
冗談か本気か、分からないくらいが面白いと思う人にこそオススメしたい作品です。

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