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2019年09月18日01:34

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『キリシタン音楽入門』

私が子供の頃好きだった
『TVムック 謎学の旅』というテレビ番組があります。
日本テレビ『金曜ロードショー』の次の枠で放送していた
30分の深夜番組で、
放送期間は(『謎学の旅』となる前の『TVムック』時代も含めて)
1985年から1992年までの7年間。
内容は知的教養紀行ドキュメンタリーといいますか、
日常の身の回りにある文物の由来や起源を探るために
毎回レポーター(何人かのレギュラーが持ち回りで務める)が
日本各地どころか海外にも足を延ばして取材するという、
とても深夜の30分番組とは思えない贅沢な作りの
日本たばこ(JT)一社提供のバブルで羽振りが良かった頃の番組です。
具体的な内容をいくつか挙げてみると、
児玉清がソース(いわゆるウスターソース)の起源を求めて
イギリスのウースターシャーにまで足を運ぶ
『究極の和洋折衷!? ソース誕生秘話』、
山内賢が名古屋や伊勢神宮まで駆けずり回って
エビフライのルーツを訪ね歩く
『江戸前洋食? エビフライ誕生の謎』といった調子
(題材は食べ物ネタが多かったですが、そればかりでもないです)。
我が家のビデオライブラリーには
本放送当時にビデオ録画したものをはじめ、
その後放送番組センターの配給により
UHFの地方局で再放送されていたものなど、何本か残っておりまして、
今でも定期的にそれらを観返しています。

そしてそのうちの一本に
『秘伝400年!古老が歌う謎の洋楽』というタイトルがあります。
レポーターは岡本信人。
内容はと言いますと、
長崎県は生月島の隠れキリシタンの伝統を守る島の古老の
口伝えで歌い継いでいる「歌おらしょ」(oracion=祈り)が、
かつてスペインの一地方で歌われていて
現在はほとんど絶えてしまった聖歌であったというもの。
日常の中の謎を探る普段の『謎学の旅』とは少々毛色が異なっていて、
全編を専門家の皆川達夫の研究成果に拠っています
(なので岡本信人はレポーターというよりほとんどナレーション担当)。
しかしながらこの回は
隠れキリシタンの秘伝をカメラに収めている貴重な記録であるばかりか、
そのキリシタンの歌おらしょと、原曲の聖歌を
一節ずつ交互に映しながら比較するということまでやってのけている、
めっぽう面白い映像となっています。
お経の様に変容してしまったおじいちゃんの歌おらしょと
美しい合唱による聖歌が「同じ曲」だとわかる瞬間は
笑ってしまいつつも不思議な感動がこみあげてきます。

その皆川先生は、現在もキリシタン音楽の研究を続けておられるようで、
先日近所の新刊書店で、近著の
『キリシタン音楽入門〜洋楽渡来考への手引き』を購入してまいりました。
発行は2017年4月。約2年前の新刊です。
版元は日本キリスト教団出版局で、価格は1600円+税。
この本が2年前からずっと書店の棚にあることは知っていまして、
時折立ち読みでツマミ読みしていたのですけど、
ついに「私が買わなければ、これ誰も買わないだろうな」と
重い腰を上げて買ってしまった次第。
『謎学の旅』で取り上げていた隠れキリシタンの歌おらしょのことも
もちろん一章を割いて取り上げています。
むしろテレビで端折られた部分も精緻に書かれていて、
番組ではずいぶん簡略化して紹介していたのだな、とわかります。
ただいかんせん紙の本ゆえ、
肝心の歌を実際に聴くことができませんので、
その点はテレビに分があります。
(歌おらしょをはじめとした、このあたりのキリシタン音楽は
 皆川先生の手によりまとめてレコード化CD化もされたようですが、
 価格も高く、あまり一般的ではない作品のようです。)
この皆川先生、近年は
筝曲の『六段の調』がグレゴリオ聖歌の影響を受けているという
着想に執心されているご様子で、
この本の最終章もそれで締めくくっています。
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