自分は男は口下手でいいと思っていた。
薩摩隼人に憧れたときもあり、西郷だとか、東郷だとか、下手したら一日に2−3口しか発しない男達の逸話を聞いて、自然に男とはそれでもいいのだと思っていた時期が合った。
口巧者などろくなことにはならない。
それがTV出演を断る理由のひとつとなっていたのだが、どうもそうもいかないようだ。
経営者となってわかったのだが、起業というものはそれ自体常に膨張本能を持っている。
どんな仕事であれ、いつかは下がり調子の時が来る。
雇われ人ならまだいいが、配下を何人か持つようになると、業績が下がったからといって給料を払いませんというわけにはいかない。
自分は過去勤め人の時、経営者から賃金を払ってもらえず、苦汁を飲んだことが何度もあった。
自分は思う、たとえ自分が食わなくても、配下には金を払うべきだ。
一方で、会社としてひとつ仕事にこだわっていると、いつか人に飽きられて、時代の要求にもあわずに、取り残される日が来る。
ある程度時代のニーズに合うような仕事は常に模索していくべきだ。
じゃないと収入が下がるときがあっても上がるときがない。
ただ業種を広げていくとなると、どうしてもプレゼンスの能力が必要になってくる。
どういう形態でビジネスを展開していくのか、購買層の年齢はいくつなのか、損益分岐点はいくらか、説得力がないと資金が調達できない。
資料を基にビジネスの話をしていくしかないのだが、相手も必ず儲けられるという説得力がないと、資金は出してもらえない。そらそうだろう、損するとわかっていて金出す人はいない。
銀次郎自身は、常に時間があれば六本木ヒルズだとか、銀座だとか、浅草、上野、街をさまよい歩いていて、人の着ているもの、会話、そんなこんなで流行や景気を探るようにしている。
そこでひらめいたものを商売にして、そのカンはだいたいあたるのだが、見たこともない人を前に
「・・これはカンです」
とはいえない。
こういうおっさんになって、自分に足りないものをすごく後悔している。
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