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2019年05月17日01:36

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猫とスミレとスルメ粥

定時制高校のころ、家賃払えない状態で、食うものがなかったとき、腹が減ってしかたがなかったんだけれど、非常用になんとか二合くらいの米だけがあった。

さりとておかずはなく、ふと見たら何週間かまえ食い残したスルメだけがあって、どうしたものかと思案したあげく、ええいままよと、炊き上げた米の中にスルメと塩を入れそのまま粥にした。

思いっきり米をふやかして粥にするのは、米を何倍にもふやしてお腹いっぱいになる生活の知恵である。

グツグツグツグツまつこと10分。

その炊き上がった粥のうまいことうまいこと。

ほんのり米の甘みとスルメの香り。

声をあげるくらい上手かった。

横にいる飼い猫がニャーニャー声をあげる。

「ええか、わしんちは今これだけしか飯はないんぞ、これ食うたら終わりじゃ。また飯が買えるまで苦労かけるが、まっちょってくれよ。」

というと、猫はわかったといわんばかりにこちらを見つめている。

しかし今でも思う。スルメ粥はうまかった。

後から調べて見ると、そういう料理が存在しているらしく、スルメは調理の仕方によっては良いダシがでるのだそうだ。

匙で自分の口と猫の口、交互に粥をすする。

猫はいうまでもなく猫舌なので、食わせる前にフーフーする。

その日一日、粥で腹一杯になった銀次郎と猫は、すやすや昼寝に興じたのである。

窓にはコーラのビンに挿した白いスミレだけが飾ってある。

春にはスミレが山に咲いている。それを採ってきただけの飾りだがどんな花であれそれが近くにあると勇気をもらえる。不思議なものだ。

明日のことはわからない、一ヶ月先のことなどなおわからない。

でもお腹がいっぱいになるということはいいことだ。

猫が無邪気に口を開け寝ている。

この前白いスミレを見かけて、ふとそんなことを思い出した。
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