新しいアニメ映画が公開されるので、やたら新海誠がTVに出ている。
新海誠のアニメは「秒速5センチメートル」「雲のむこう、約束の場所」「君の名は」「星を追う子ども」「言の葉の庭」を観た。
純子が「星を追う子ども」と「言の葉の庭」は面白かったけど「君の名は」はつまらなかったと言う。
確かに高校生男女の体が入れ替わってしまうというのは大林 宣彦の「転校生」以来繰り返されてきた設定だし、過去と現在が錯綜するというのもSFにはありふれた話で新鮮味は無い。
ただ新海誠は風景の描写は素晴らしい。
特に光の描写が。
「となりのトトロ」を初めて観た時に背景の美しさに
「この映画の主人公はトトロでもメイでもサツキでも無い。日本人が誰しも心の中に持っている日本の田舎の原風景だ」
と思った。
新海誠の場合、都会の風景が美しい。
電車のスライドドアのレールモールの光沢、垂直にそびえる無機質なビルに当たる太陽の反射光、そんなもの都会人たちは気にも留めていないが、新海誠はそこに引っ掛かってしまうらしい。
新海誠は長野県の諏訪湖の近く、小海町という山の中の田舎出身だ。
初めて東京に出てきた時、都会のこういう些細な事が印象的で心に深く刻まれたのだろう。
「星を追う子ども」は宮崎駿へのオマージュで、トトロ、ラピュタ、もののけ姫、なんでも入っていると感じた。
諸星大二郎(もろぼしだいじろう)も入ってるなと思う。
諸星大二郎は同じ長野県の軽井沢出身である。
新海誠はSFファンであるから、地元のSF漫画家を読んでいない訳がない。
そもそも新海誠が影響を受けている宮崎駿が諸星の大ファンで
「風の谷のナウシカ」は宮崎が原作を作って、諸星に漫画化して欲しかったらしい。
ナウシカのアニメ製作中に原画で参加していた庵野 秀明(あんの ひであき)がデスクに諸星の漫画を置いていたら宮崎がやって来て手に取り
「ここが良いんだよなあ」
と熱く語っていたという。
「もののけ姫」のディダラボッチなんか、諸星作品に頻繁に出てくる火炎土器のイメージだもの。
「言の葉の庭」は静かな作品だ。
雨のシーンが続く。
これは実写か?と思うような風景の描写だ。
溜った雨の滴に木の葉が重さに耐えきれなくて滴を振り落して跳ね返る瞬間の微妙な揺れ方
「ああ、そうそう、そういう感じ見たことがある。」
とデジャブを起こさせる。
美に対する感受性の強い人は、至るところに美を感じているらしい。
それを取り出して
「ほら、良く見ればこんなに綺麗でしょ?」
と掌に載せて示してくれる。
コンピューターグラフィックを使ってるんだろうけど、ハリウッドの様に実写に見えるように作っているのではなく、アニメ風に作っている。
そもそも新海誠はゲーム業界出身なので、コンピューターグラフィックは得意なんだろうが。
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