「この国。」
石持浅海
原書房
五話の連作短編集。
一見日本にも似た、一党独裁の管理国家。
国家に対する反逆は最も罪が重く、小学校卒業時には児童の将来が決定され、他国の女性は売春という働き口を求めてこの国にやってくる。
そこで起きる事件の犯人とは、この国自身なのではないか。
一話目の「公開処刑 ハンギングゲーム」がとにかく秀逸で、掴みはがっちり。
先に別の本で読んでいたのですが(「第一話」著者のシリーズ物一話目のみを集めたアンソロジー)、続きを読むのが楽しみで仕方なかったですからね。
シリーズを通して描かれる、治安警察官の番匠少佐と反政府運動家である松浦の頭脳戦も見物。
経済は発展し戦争も起きず国民の生活水準は高い。
しかしひたひたと水面下で育まれる強烈な殺意。
自由と引き換えに得たものは何か。そして失うものは。
この国、我々が済む現実の日本の未来を、考えさせられる一冊でした。
(古)
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