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2020年01月24日11:13

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『読まれなかった小説』感想

〜「雪の轍」で第67回カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞したトルコの巨匠ヌリ・ビルゲ・ジェイランが、1冊の本をめぐって繰り広げられる父と息子の軋轢と邂逅を、膨大なセリフと美しい映像で描いたヒューマンドラマ。知人の父子の物語に魅了されたジェイラン監督が、自身の人生も反映させながら完成させた。作家志望の青年シナンは、大学を卒業してトロイ遺跡近くの故郷へ戻り、処女小説を出版しようとするが誰からも相手にされない。シナンの父イドリスは引退間際の教師で、競馬好きなイドリスとシナンは関係が上手くいかずにいた。父と同じ教師になって平凡な人生を送ることに疑問を抱きながらも、教員試験を受けるシナン。父子の気持ちは交わらぬように見えたが、誰も読まなかったシナンの小説が2人の心を繋いでいく。2018年・第71回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品〜<映画.comさんより>

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短くまとめた私のツイートバッド(下向き矢印)
「トルコ発。『雪の轍』の時同様、敷居が高そうだなと身構えていたら、にこやかにすんなり道を通された。膨大な会話の応酬は、時に哲学的でハッとさせられる。作家志望のシナンも、父親も母親も、もどかしさを抱え、葛藤している。美しく、かつ、意味深き描写の数々。ラストは驚きと安堵」

わからなかったら、どうしよう。難しかったら、どうしよう。
あまり馴染みのない国の作品を観る時には、いつも、不安がよぎる私。
でも、この作品の場合は、次から次へと台詞がどんどん押し寄せてきて、しかも、単調な会話もあれば、貴重な格言如きもバシバシ出てくるので、とにかく「一つも逃したくない」って、私、スクリーンに食い下がってましたあせあせ

中でも、日本人に響きそうと思った会話がこれバッド(下向き矢印)

「神を信じない国は犯罪が少ない」
「(そうかもしれない)だが、自殺は多い」

(シナンとイスラム導師2人が、一緒に歩き始めて、絶えることのない、長い、長い、議論をしながら、道を横切り、坂を下り、とある軽食店までたどり着くまでの間に出てきた一部)

シナンは自分の小説を出版したい。
父親は教師をやりながらも、水が出そうもない井戸を掘っていたり、あとは、競馬に夢中。
シナンはそういう父親を軽蔑していて、父親と同じようになることはあり得ないとは思って(願っているが)とりあえず、教員試験は受ける。
母親は火の車の家計に頭が痛い。
だが息子に「この結婚は間違いじゃなかったのか?」と聞かれても「幼い頃はよくわからなくて結婚してしまったけど、でも、分別のつく今でも、同じ夫を選ぶ」と言い放つ。

シナンは出版資金のために父親の大事な犬を・・・。

そうそう、シナンが、橋の人魚の像(一部壊れていた)を、わざと川に落として、そのまま街中に逃げて行った場面の、迷路のような場所に入り込んだところも、良かった。

口論場面がとにかく多いのだけど、美しき風景の数々に心は冷静さを取り戻す。
樹木を揺らす風、打ち寄せる波、カモメの群れ、霧から一面の雪へ。。。

その他、井戸や犬や赤ん坊や蟻を使っての、夢か現実かわからない不可思議ないくつかの場面も印象的。

兵役から帰ってきたシナン。埃をかぶって、積み上げられている本の山。
母親は読んでくれていなかった。父親は?
父親の財布の中から見つけたもの。

シナン「本のタイトルは野生の梨の木。あのいびつな梨の木は、僕と父さんのようだ」

そして、エンディング。心が打たれました。。。

ヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督の言葉
「父親が隠しているものは息子の中で明かされる」ということわざがあります。弱さ、習慣、癖など、人は父親から特定の特性をどうしても受け継いでしまうのです。これは、自分の父親と同じ運命を辿ることを受け入れる青年の物語です」

迷ったけど観れて良かった。
ラストのあの境地にたどり着くには、189分必要だったんだと納得。4つ☆


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