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2016年02月20日10:53

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W. Somerset Maugham: Rain and Other South Sea Stories

William Somerset Maugham: Rain and Other South Sea Stories (Dover Thrift Editions)

  サマセット・モームは旅行家であつた。1916年、42歳の時にアメリカおよび南海諸島に赴き、その後、結核療養のためのサナトリウム入院をはさみ、1919年(45歳)には2度目の東方旅行。米国シカゴ、同中西部、カリフォルニアからハワイ、サモア、マレー、中国、ジャヴァなどを訪ねた。ゴーギャンが最後に住んだマルケサス群島中のラ・ドミニク島で取材し、この年『月と六ペンス』を出版、ベストセラーとなる。(岩波文庫『モーム短篇選(上)』の年譜による)

 1921年(47歳)、南洋を舞台とする短篇集『木の葉のそよぎ』(The Trembling of a Leaf)を出版。今回小生が読んだ ”Rain and Other South Sea Stories” は、上記の短篇集を改題したもので、中身は同じである。

 有名な「雨」(Rain)、「赤毛」(Red)、「エドワード・バーナードの転落」(The Fall of Edward Barnard)など6つの短篇を収める(他に1ページほどの断章2編、”The Pacific”と”Envoi”)。

 うち、「雨」、「赤毛」、「ホノルル」(Honolulu)は大昔に中野好夫訳(『雨・赤毛(モーム短篇集I)』(新潮文庫)で読んだが、内容はきれいさつぱり忘れてゐたから、初読に等しかつた。

 やはり “Rain” と”Red” がおもしろい。ただ、”Rain”もさうだが、少し長めの短篇だとやや作為が目立つ(“The Pool”など)。

 英語は平易な方だが、アーサー・クラークの本を読んだあとだと(実は平行して読み進めてゐた)、モームのやうな比較的癖が少い文章でさへ、技巧めいたものが鼻につくやうになる。

 本書を2016年(初版から95年後!)の時点で文句なくおすすめできるか否かといふと、微妙なところだ。モーパッサンやO.ヘンリー型の、そしてモームも属する、「一貫したおもしろいストーリーで読者を引つぱり、意外な結末を示してカタルシスを与へる」短篇よりも、チェーホフやマンスフィールド型の、人生の一断片を漠然と示す型の短篇に、現在の自分の好みが傾斜してゐるといふこともあるせゐかもしれない。

 日本語訳のうち、中野訳『雨・赤毛』は健在(長年親しまれた新潮文庫『月と六ペンス』は、2014 年に金原瑞人訳に取つて代られたが)、ほかにも岩波文庫『モーム短篇選』(上)には「エドワード・バーナードの転落」(行方昭夫訳)がある。ただし、残りの「マッキントッシ」(Mackintosh)、「淵」(The Pool)を収めた『太平洋 モーム短篇集II』(河野一郎訳、新潮文庫)は絶版である。

(了)

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