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2021年09月11日18:07

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【読書】 最近読んだ本 備忘録

最近読んだ本の、備忘的メモ。

●「すし物語」 (宮尾しげを著、講談社学術文庫)

昭和35年に刊行された本の文庫版である。そもそも、すしというものは何であるかに始まり、すしの歴史、江戸前と関西のすしの違い、すしのたね、すしの握り方、すしの用語、すし調理師の職人気質、すしと客、すしに関する文献の紹介、すしを詠んだ川柳、有名なすし店の紹介、全国各地のすし模様、すしに関する小噺、等々、すしについてのあらゆる話題を綴った本で、楽しい本である。日本人ですしを食べたことのない人はいないだろうが、そんなすしも実にさまざまで奥が深いのである。さあ、鮨屋に直行だ。


●「ハビタブルな宇宙」 (井田茂著、春秋社)

地球以外に生命が存在する星はあるかと考える時、どうしても太陽系と、地球の生物をイメージしてしまいがちだ。しかし、そうした「地球中心主義」、「人間中心主義」から離れて、地球上の生物とは全く別様のかたちもいくらでも有り得るのだという視点に立つと、今まで見えなかったものが見えてくる。太陽系とは全く違った、中心星の至近距離を回っている大型惑星がいくつも発見されるようになったのも、その効果である。とても地球上の生物が棲息しえないような環境でも、地球とは違ったかたちの「生命」がないとはいえないのである。ここ数年、「ハビタブルな星」の観測も進展していて、興味深いテーマである。


●「山に生きる人びと」 (宮本常一著、河出文庫)

山には様々な人々が生活していた。平地で暮らす人々は通れないような山中の往来の道も、独特のものがあった。狩人、サンカ、杣人、木地屋、マタギ、焼畑農業者、鉱山師、炭焼き、修験者、落人の末裔等々、山に生きる人々も実に多様だ。山人文化独特の宗教のようなものもある。宮本氏はフィールドワークを重ねて、これら山の人びとの、失われゆく姿を丁寧に調査して記録している。山の人々も、山人ならではの技術を活かして作ったものを売ったり、労働力として関わったりして、里の人々とも徐々に交わっていくこととなるのである。


●「幻の弦楽器ヴィオラ・アルタを追い求めて」 (平野真敏著、河出書房新社)

ヴィオラ奏者だった著者が、ある日楽器店のショーケースの片隅に、未知の楽器を見かける。一見大きなヴィオラという感じだ。借りて弾いてみると、たちまちその音に魅了されてしまう。この楽器は「ヴィオラ・アルタ」といい、ワーグナーなども愛した楽器であること、ドイツで一時期大量に作られたが、戦後突然姿を消してしまったことなどが分かってくる。平野氏はヴィオラ奏者からヴィオラ・アルタ奏者に転じ、演奏活動を続けることになる。ヴィオラ・アルタ奏者は世界でただ一人かと思っていたら、思いがけずもう一人の奏者とも出会う。2人で弾くとソロで弾く音とは違う、まるで澄んだオルガンのような響き。この本をたまたま手にしなければ、私もこの楽器のことを知ることはなかっただろう。一度その音を聴いてみたいものだが、昨年平野氏は亡くなってしまい、再び幻の楽器になってしまうのだろうか。


●「地中の星」 (門井慶喜著、新潮社)

ロンドンで見た地下の鉄道を東京にも走らせたい。その一心で、資金も経験もない状態で誰もが不可能だと嗤う中、大隈重信の元に押しかけ、渋沢栄一も口説いて、なんとか計画をスタートさせた早川徳次。浅草−上野間で建設工事を始めるも、地上は市電も通り、人通りも多い繁華街だ。ただ掘ればいいのではない。前例がないだけに工事も試行錯誤の連続であった。この本は、何度か困難に会いながらも、それを克服して、ついに日本初の地下鉄を開通させた早川徳次と技術者たちの、熱き闘いの物語である。地下鉄は上野からさらに神田を経て新橋まで通り、渋谷から新橋まで延びてきた五島慶太の地下鉄とつながり、現在の東京メトロ銀座線になっている。
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