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2019年12月15日20:10

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【映画】 宇宙人東京に現わる  (1956年、大映)

今年もあと半月となった。自宅で雑事を済ませ、そのあと、古い映画でもDVDで見ようと思ったのである。

 「宇宙人東京に現わる」  (島耕二 監督/的場徹 特技監督、1956年大映)


生まれる前の映画である。日本初の本格的カラー空想特撮映画ということだ。以前からDVDが発売されていることは知っていたが、宇宙人のデザインがチープだし、タイトルの字体もなんとなく変だし、まあB級ドタバタ映画かなと思って、実はしばらく敬遠していた。見てみると意外と面白いのである。もちろん荒唐無稽な話には違いないが、そんなことを言ってはSF特撮映画は楽しめない。

冒頭に登場する駅は「新町」と表示されているが、撮影されたのは京王井ノ頭線の高井戸駅。現在の高井戸駅とは隔世の感がある。走る電車も1900形だったり、帝都電鉄時代の車両だったり、こんなところも楽しめる。

さて、本題。謎の飛行物体があちこちで目撃される。天文台長の小村博士(見明凡太朗)は、新聞記者と行きつけの居酒屋で飲んでいるが、新聞記者の突っ込みにも明確に回答できない。「学者は九分通り分かっていてもあとの一分が分からなければ、何も分からないのと同じ」という。まさに科学者の良心!

天文台に勤める磯部徹(川崎敬三)は小村博士の自宅を訪問し、この異変について話し合うが明確な結論は出ない。一方、小村の従兄弟で物理学者の松田博士(山形勲)は、この現象に懐疑的だ。そんな中、各地でヒトデ形の奇妙な生物が目撃され、騒ぎは大きくなる。記者は天文台に説明を求めるも、明確な答えは出せない。帝劇のスター青空ひかり(苅田とよみ)の公演中にもヒトデ形の生物が現れ、劇場はパニックになる。

実はヒトデ形の生物はパイラ星人であった。地球訪問の目的は、地球の危機を伝えるためであったが(そう、侵略目的ではないのだ)、地球人は一目見るなり恐怖でパニックになり、とても伝えるどころではないと、円盤に戻り報告する。それならば地球人の姿に変身して潜入するしかないということになり、パイラ人の感覚では醜いが、地球人にとっては美人である「青空ひかり」の姿に変えて、再び地球上におりたつ。

そんな大スターに変身したら却って目立ってしまうが、案の定、公演を終えた本物の青空ひかりに、「君は日光で死んでいたぞ」という落語みたいな話になったり、パイラ人が化けた青空ひかりは女子高生に囲まれてサインを求められたりする。

青空ひかりが日光で死んでいたというのは一時的に意識を失っていただけで、小村、松田、徹の父の磯部(南部彰三)の3人の博士が家族らとともに日光で休暇を楽しんでいた時に発見され、東京にいっしょに帰ることになる。しかし、青空ひかりにそっくりのこの女は、自分の名前すらも分からないという。記憶喪失だ。仮に「銀子さん」という名前を、小村の娘、多恵子(永井ミエ子)が付けてあげた。

その銀子は松田家がしばらく預かることにするが、銀子は松田博士が原水爆以上の破壊力をもつ元素「ウリウム101」を研究していることを知り、直ちに取り止めるよう迫る。ノートを見ただけで「ウリウム101」だと分かるとは、この女は一体何者なんだ...

他にも銀子の不可思議な様子が見られ、学者たちは宇宙人が化けた者ではないかと思い始める。そこに銀子さんが現れ、そのとおりであると告げ、地球来訪の目的をようやく伝えることが出来た。

それは、地球の軌道に向かって新天体Rが接近しており、これを粉砕しない限り、地球は消滅するというものだ。そのためには地球上のあらゆる核兵器を打ち込むしかない。しかし、世界各国に訴えるも相手にされず、それどころか松田博士が原水爆よりも強力な破壊力を持つ元素を発見したことを公表したために、それを売れという怪し気な男に拉致され監禁されてしまう。

ついに新天体Rが接近し、その影響で地球上に天変地異が起こり始める。ようやく世界も危機を察し、原水爆の発射に同意する。しかし、全ての原水爆を打ち尽くしても効果はなかった...

こうなると、「ウリウム101」を使うしかないが、松田博士は行方不明だ。しかし、天変地異のおかげで、監禁されていた場所の壁も壊れ、なんとか脱出、パイラ星人に助けられ、憔悴しきった状態ながらも天文台に向かった。理論さえ分かれば、組み立てるのはパイラ人ならお手の物。パイラ星人の円盤で組み上げた「ウリウム101」を搭載した爆弾をRに打ち込んで、見事Rは粉砕され、地球の危機は去ったのである。


科学者がそれぞれの分野で活躍しつつ危機を乗り越えようとするという話がいい。無責任な発言もせず、慎重に行うところなど、科学者のあるべき姿をきちんと描いている。外国との交信はもちろん英語で行うが、ここも字幕なしなのが、却ってリアリティを持って見える。奥様方は自宅では和服でいることも多いのも、この時代らしくてよい。

主題としては、核エネルギーを戦争目的ではなく、平和目的に使おうということで、分かりやすい。パイラ人は「地球は問題にならないくらい進んでいる」らしいので、原水爆が効果がないことも分かっていて、敢えて打ち込ませたのかもしれない。これで地球上に原水爆は全くなくなったからね。

惜しいのは、やはりパイラ星人のデザイン。もっとどうにかならなかったのかと思うが、これをデザインしたのは、かの岡本太郎らしい。

生まれる前に公開された映画も、こうやって見ることが出来る。いい時代だ。
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