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2019年11月12日23:23

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【音楽】 B→C 伊藤美香ヴィオラ・リサイタル

今日は平日だが、行きたい演奏会があったので、仕事が終わったあとは急いで初台に向かった。「B→C」という名称で継続している、東京オペラシティのリサイタル・シリーズの一環で、今日はヴィオラの伊藤美香さんだ。ちなみに‘B→C’とは、バッハからコンテンポラリーへ、という意味である。

伊藤美香さんは、日本人作曲家の作品を積極的に演奏している方で、オーケストラ・トリプティークの団長でもある。トリプティークの演奏会ではすっかりお馴染みの方だが、今回はヴィオラ・リサイタルである。プログラムも当然、日本人作曲家が中心になる。

 ・鈴木行一: 響唱の森
 ・J.S.バッハ: ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ第2番
 ・マルティヌー: ヴィオラソナタ
 ・西村朗: 無伴奏ヴィオラソナタ第3番「キメラ」
 ・真鍋理一郎: ヴィオラとピアノのための「長安早春譜」
 ・矢代秋雄: ヴィオラとピアノのためのソナタ

   ヴィオラ: 伊藤美香/ピアノ: 新垣隆
   会場: 東京オペラシティ・リサイタルホール (19:00 開演)

この中で、知っていたのはJ.S.バッハの曲くらいで、あとは初めて聴く作品ばかりだ。演奏機会が少ない日本人作曲家のヴィオラ作品が聴けるという、貴重な演奏会でもあるのだ。

最初の鈴木行一の曲から、独特の響きに引き込まれる。ピアノとヴィオラが対立しながらも、やがては響き合うのだそうで、そういわれて聴けばそんな感じである。続いてのバッハは、もともとはヴァイオリンとピアノの曲だが、それをヴィオラで弾くということで、少し違った雰囲気に聞こえるものの、今日はおまけの演奏といったところか。次のマルティヌーのソナタは初めて聴く曲だが、あまり印象に残らなかったのは、きっと聴き方が悪かったのだろう。

休憩のあとは、西村朗さんの「キメラ」だ。この曲だけはピアノがなく、ヴィオラ独奏だ。「由来が異なる遺伝子情報を持つ細胞が一個体内に混在する架空の生物」であるキメラ。そのイメージ通り(?)の、なんだか正体の分からない不思議なものを体現したような音楽である。2017年の作品ということで、冒頭からして「クラシック音楽」とは全く違うのである。以前なら「訳の分からない現代音楽」と思ったかもしれないが、今はこういう音楽がスッと聴けるようになっている。聴いていて面白いのである。西村朗さんの作品はCDでも結構聴いているためもあるだろう。その西村朗さんが客席にいらした。演奏終了後に、伊藤さんに呼ばれてステージで挨拶をしていた。(さっきまで、西村朗さんがいるのに気付かなかった。)

続いては、真鍋理一郎さんの「長安早春譜」である。これもまた、独特の響きである。ヴィオラの音が胡弓のようにも聞こえ、音色や旋律の微妙な「揺れ」がアジア的雰囲気を醸し出しているのである。この曲も全く初めて聴く曲ながら、面白く聴くことができた。最後の矢代秋雄さんのソナタは、落ち着いた聴きやすい旋律で、最後は「クラシック音楽」に戻ってプログラムを締めたという形になったようだ。

ヴィオラが主役の演奏会自体が、ヴァイオリンなどに比べて圧倒的に少ないと思うが、実はヴィオラの名曲は多く埋もれているのだということが分かる。

プログラム終了後に、伊藤さんのトークがあった。高校までヴァイオリンを弾いていたが、「そんな弾き方ではヴァイオリンが壊れる。ヴィオラにしたら?」と言われ、ためしにヴィオラを弾いてみたら、「これだ!」と、しっくりきたのだそうだ。「以前から日本人作曲家に興味があり、これからも作品を多く紹介していきたい」、「家で弾いていても、それはただ弾いているだけ、聴く人がいて初めて演奏者になる」など、いろいろな話をされた。

最後にアンコール演奏があった。これは日本人作曲家ではないのですが、とわざわざ断った上で、レベッカ・クラークという英国の作曲家による「古いイングランドの旋律によるパッサカリア」を弾いた。これも全く初めて聴く作品だが、これがまた素敵な曲であった。

素敵な夜の一時であった。
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