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2019年05月21日20:08

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【読書】 最近読んだ本 備忘録

最近読んだ本の備忘的メモ。

●「山田耕筰」 (後藤暢子著、ミネルヴァ書房)

日本における西洋音楽受容の先駆者である山田耕筰について書かれた、耕筰研究の第一人者による著作である。原点ともいえる横須賀での幼少期の音楽体験、ベルリン留学時の研鑽の日々、そして「何か違う」というモヤモヤした気分が、たまたま行ったモスクワでスクリャービンの音楽に接したことで青天の霹靂、それまでの「借り物の音楽」から「自らの内なる音楽」に目覚める。小山内薫との出会いで、音楽のみならず演劇と融合した楽劇へと進み、詩人たちとの交遊の中で、歌曲の数々を生み出す。一方、交響楽団を指揮して自作の作品や欧州のクラシック音楽を演奏するも、決して順風満帆とはいえなかった。現在は「赤とんぼ」や「この道」や「からたちの花」など歌曲作品ばかりが知られるが、先駆者として交響曲やピアノ曲、劇音楽やオペラなどにも優れた作品を残したことは、もっと知られてもいいと思う。音楽は、作るのではなく生むのである。


●「こんなに違う通勤電車」 (谷川一巳著、交通新聞社)

都市生活者には欠かせない通勤電車であるが、実は結構「違う」のである。関東と関西の違い、大都市圏と地方都市の違い、日本とアジア諸国の違い、アジアと欧米の違い、このような内容について述べた本である。東京圏は人口過密地帯ゆえに「大量輸送」に主眼がおかれるのは仕方ないこと。地下鉄を介した直通運転も、東京圏にて著しい形態だ。海外に目を向ければ、都市交通先進国といえる韓国では完全IC化されており、運賃も共通化、すなわち日本のように社が違う線を乗り継ぐたび初乗り運賃がかかることはない。国毎に通勤電車の考え方や運賃制度などが異なるが、どれがいいということではなく、それぞれの国の事情が反映されているのだ。


●「日本未確認生物事典」 (笹間良彦著、角川ソフィア文庫)

タイトルからはUMAのことを書いた本とも想像できるが、ここで取り上げているのは日本の民衆史に登場する幻人、幻獣、幻霊など、「実在しないのに実在する」不可思議な生物である。天狗、轆轤首、鬼、河童、人魚、猫股、九尾狐、多頭大蛇、土蜘蛛などについて、日本や中国の古典などの膨大な文書を渉猟してまとめたもので、そこに登場するこれらの生物について、特徴や確認された場所などを詳細に記している。実在する生物や現象を見誤ったものであると説明できるものも多いが、なぜそのような見誤りをしたかを考えると、日本人の豊かな想像力と精神性が見えてくる。世の中が便利になり、ネット全盛時代の現代は、そのような生物も出にくくなったのだろうか...


●「風土記から見る日本列島の古代史」 (瀧音能之著、平凡社新書)

八世紀のはじめに国ごとに作成された「風土記」。「古事記」や「日本書紀」が天皇家の史書であるのに対し、地方の文化や歴史を書いたものだが、現在は「常陸」、「播磨」、「出雲」、「肥前」、「豊後」の五つのみが現存し、あとは他文献に引用された断片に依るしかないが、そこには「記紀」とは違った神の捉え方など地方の信仰や、風俗、歴史、文化などが書かれていて、違った視点での古代日本が見えてくる。「記紀」では天皇ではないのに「風土記」では天皇と書かれていることもあり、興味深い。「浦島太郎伝説」や「天女伝説」のルーツも、「風土記」に見ることができる。温泉や歌垣など、「記紀」からは読めない民衆の暮らしも見えてくる。古代史の魅力へと誘う好書である。
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