今日は午前中は所用で出かけ、昼過ぎに帰宅。午後は、先日からの続きで、日本人作曲家の作品を聴きまくった。前回までに登場していない作曲家を中心に、適当に手持ちのＣＤからチョイスして聴いた。
今日聴いたのは次のとおりである。
●小倉朗
・日本民謡による五楽章
・オーケストラのためにブルレスク
・交響曲 ト調
・弦楽合奏のためのコンポジション
・オーケストラのためのコンポジション 嬰へ調
芥川也寸志指揮 新交響楽団 (1978)
小倉には日本民謡を素材にした作品が多く、その日本民謡に味付けをした「五楽章」や、津軽民謡に基づく「弦楽コンポジション」は面白い。「ブルレスク」は派手な曲をと依頼されて作ったもので、芥川作品に近い雰囲気を感じる。交響曲も、「底抜けに明るく活気に富んだ音楽」ということだが、なかなか味がある。小倉の交響曲はこれ以外に破棄された作品が２曲あるそうで、そのうち１つはあまりにブラームス的なので、「オグラームス」とからかわれたそうだ。この「オグラームス」も聴いてみたいが、譜面も音源も残っていないだろうな。
●宍戸睦郎
・交響曲
・鍵盤のための組曲
・合唱組曲「奥鬼怒伝承」
秋山和慶指揮 東京交響楽団 (1994)
國越純子 (ピアノ) (1997)
森明彦指揮 Vokal Akademie Chor Japan (1989)
尊敬する作曲家を聞かれると躊躇なくベートーヴェンと答え、心のいちばん深いところで琴線にふれるのはベートーヴェンであるといい、音楽の根源的存在としてのベートーヴェンを強く意識しているという宍戸。そんな宍戸の交響曲は、別にベートーヴェンの模倣ではないが、奥深いところでつながっているのだろう。第１楽章と第３楽章で乱打されるティンパニが印象的な曲だ。鍵盤のための組曲は、日本の国籍とリズムを意識して書かれた曲とのこと。「奥鬼怒伝承」は、哀しさ、静寂さ、そして５曲目の「豊年唄」の迫力！
●矢代秋雄
・ピアノ三重奏
・弦楽四重奏曲
田中千香士 (ヴァイオリン)／安田謙一郎 (チェロ)／アンリエット･マリー・ピュイグ=ロジェ (ピアノ)
武藤伸二 (ヴァイオリン)／兎束俊之 (ヴィオラ) (1982)
矢代は、交響曲、ピアノ協奏曲、チェロ協奏曲を生で聴いている。そこで今日の自宅ＣＤ鑑賞は室内楽を聴くことにした。ピアノ三重奏曲は若い頃の作品だが、しみじみと良い曲だなと思う作品で、個人的にも大好きな曲である。「作曲なんて平気でいくらでもできる」と言っていたのを師に注意され、じっくりと時間をかけて慎重に作った作品とのことだ。そして、パリ留学の総決算といえる弦楽四重奏曲。「音楽外的なもの」を作品に入れることを嫌った矢代だが、妹の訃報に接して追悼作品として作曲された。そう思うと、悲痛な響きに聞こえるが、良い作品である。
●石井眞木
・幻想的バレエ｢輝夜姫｣
石井眞木指揮
芝祐靖 (龍笛)／宮田まゆみ (笙)／八百谷啓 (篳篥)／近藤克次 (日本太鼓)
サークル・パーカッション (1988)
和楽器によるバレエ音楽である。ストーリーはもちろん「竹取物語」によるが、実は細かいところで異なる複数の「竹取物語」があるため、バレエの台本としてどうまとめるかに悩んだという。石井は、川端康成編纂の「竹取物語」と、山形県最上郡につたわる「かぐや姫」を参考にしたという。大編成のオーケストラとは異なる独特の雰囲気で、文字通り幻想的な音楽である。ひたすら弱音で展開する前半、その後宴で盛り上がり、争いの場面では打楽器が炸裂する。やがて月から迎えが来て、月に帰る場面で再び静寂が訪れる。
●貴志康一
・月
・水夫の唄
・竹取物語
・猟師の歌
・花見
・龍
・ヴァイオリンソナタ
木野雅之 (ヴァイオリン)／木野真美 (ピアノ) (2003)
「竹取物語」で思い出し、貴志のヴァイオリンとピアノのための曲集を聴く。６曲からなるヴァイオリン曲集はベルリンから出版され、録音も何種類かあるが、改めて聴くと、日本情緒あふれるメロディーに、いろいろな手法を組み合わせて、魅力的な曲集に仕上がっていることが分かる。ちなみに、「竹取物語」は湯川秀樹博士のノーベル賞受賞の際に、ストックホルムの晩餐会でも演奏された曲だ。私がノーベル賞を受賞した時は、何の曲がいいかな？ （と、書いてみただけ） ヴァイオリンソナタは、未整理の資料の中から発見された曲で、2003年のこの録音が世界初である。こういう「宝」がまだ埋まっているのが、日本人作曲家である。
●小杉太一郎
・六つの管楽器のためのコンチェルト (��)
・弦楽三重奏のための二つのレジェンド (��)
・舞踊曲「トルソー」 (��)
・舞踊組曲「戰國時代」 (��)
・双輪 (��)
�ゝ伐�アカリ (フルート)／小林裕 (オーボエ)／万行千秋 (クラリネット)
チェ・ヨンジュン (ファゴット)／森博文 (ホルン)／辻本憲一 (トランペット) (2012)
��高木和弘 (ヴァイオリン)／成田寛 (ヴィオラ)／江口心一 (チェロ) (2011)
�Ｂ湿昭酥� (ピアノI)／猿田泰寛 (ピアノII) (2010)
�ぞ�杉太一郎指揮東京交響楽団 (1968)
�セ嚇沈畛� (第一箏)／曽我部壽子 (第二箏) (2010)
小杉は「サイボーグ００９」や、「宮本武蔵」シリーズ、「渡り鳥」シリーズの音楽で知られるが、作品の多くは楽譜の所在が不明になっていた。それが、2007年以降に発見されて、小杉自身の指揮による演奏音源を加えて、このＣＤとなった。軽妙洒脱なフランス風の、どこかプーランクっぽい(？)コンチェルト(六重奏)、一転して日本的雰囲気の三重奏曲、ピアノ連弾によるちょっと洒落た音楽の「トルソー」、そして圧巻はオーケストラによる「戰國時代」だ。ドラマチックな音楽である。最後の「双輪」は、映画「犬神家の一族」で竹子(三條美紀)や松子(高峰三枝子)が弾いている曲である。
●大澤壽人
・ピアノ五重奏曲
・ピアノ三重奏曲
マイ・ハート弦楽四重奏団／藤井由美 (ピアノ) (2006)
忘れられた天才作曲家といわれた大澤も、21世紀になって演奏される機会も増えてきた。交響曲第１番、ピアノ協奏曲第３番(神風協奏曲)、コントラバス協奏曲は生でも聴いたので、今日は室内楽のＣＤにした。五重奏曲では、大澤の室内楽の特徴でもある四分音も用いられる。当時としては前衛的な手法であったが、そのような音楽が受け入れられるには21世紀まで待たなければならなかったとは。この四分音は日本の音楽に見られる「こぶし」であり、西洋クラシック音楽の音階だけでは表現できないのだ。作品は和洋折衷、その「和」の部分のこだわりである。三重奏曲も第２楽章あたり、なかなか良い。
●三木稔
・三味線協奏曲
野澤徹也 (三味線)
澤田由香 (篠笛)／高橋聡子 (笙)／山口賢治 (尺八)／阿部大輔 (尺八)
櫻木亜木子 (琵琶)／松村エリナ (二十絃筝)／桑子裕子 (二十絃筝)
小林導恵 (十七絃筝)／若月宣宏 (打楽器)／片岡寛晶 (打楽器)
最後は三木の三味線協奏曲でしめよう。三味線協奏曲といっても、三味線とオーケストラではなく邦楽器のアンサンブルである。何やらおめでたいような賑やかな出だしで始まり、舞踊音楽っぽく聞こえたり、悲しげなわらべ歌っぽい旋律も出てきたり、文楽や歌舞伎のような雰囲気になったり、さらに途中で琉球音楽っぽい響きも出てくるし、短い曲の中で邦楽器が次々に鳴りながら変化するのを楽しむ音楽であるといえる。あえていえば、邦楽器の名手たちが集まって余興に演奏した、という風情の曲だ。（ＣＤの収録時間が12分43秒しかなく、他の曲は入れられなかったのかと思ってしまう。）
今日はこのぐらいにしておこう。このシリーズ(？)、いつまで続くかな。手持ちの日本人作曲家のＣＤを全て聴き直すなら、まだ当分続けられるが。
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