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2020年04月05日20:05

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久留米のバラモンが好きだな〜!

■久留米のバラモンが好きだな〜!

九州にはいくつかのオーダーフレームメーカーがあって、ローカル線の駅からテクテク歩いて行くと、すごく懐かしい街並みがあって驚いた。一瞬、3丁目の夕日とか、稲村ジェーンのロケ地を彷彿とさせる。どう見ても昭和30年代な雰囲気を醸し出していた。

商店街というより住宅地の中に小さな工房があった。見本の完成車が数台置かれていて、ショップというよりフレーム工房がメインという店構えだった。フレームビルダーは当時まだ若かったが、地元の競輪選手数人にピストフレームを供給していた。

ブランドネームのバラモンとは、この近辺で開催されている凧合戦で使われる戦闘凧のことだった。ヘッドマークはまさにその凧の絵だった。操る糸には細かく砕いたガラスの粉が練りこまれていて、相手の凧の糸を切って勝負を争うのだという。

工房の中にはジグが置かれていて、ピカピカに磨き上げられて、うっすらとオイルが塗られて黒光りしていた。木製の重そうな作業台の上には手入れの行き届いた常磐が置かれていて、愛用している丹下の表面がピカピカに磨かれたチューブが数本置かれていた。

ラグも段ボール箱から取り出してきて、ヘッドの上下と、ハンガーと、シートのラグが置かれ、イタリアンカットの仕上げられたアフターのものと並べられた。相当ヤスリがけされていることがわかった。これを見るだけで相当気合が入って作られている。

近くの福岡には仕上げの良さで知られている有名ブランドもあって、ビジネス競争環境的には厳しいことがうかがえる。だけど、僕はその有名ブランドの、デ・ローザのナベックスプロを削り混んだショートポイントそっくりのロストワックス製法のラグ。

ミラノショーに2台展示されたチネリのレーザーそっくりのデモンストレーションバイクを作ったり、それをオリジナルデザインだと言い放つフレームビルダーの、オリジナルデザインを考えて製品を作った人へのリスペクトの感じられない感覚に疑問を感じているので、同じ地域で頑張っているバラモンについつい肩入れしてしまう。

ラグのエッジは、はみ出したロー材を特殊ヤスリやスクレーパーできっちり削り込まれてシャープにエッジが立っている。このフレームビルダーの性格なのか、ラグの見えない部分まで入念にし上げられている。シートチューブ上端のシートピンが収まる、台座もしっかりロー付けされて、シートポストの固定もバッチリで、スマートなのに実用的だ。

ところで常磐の上でチューブを何本も転がして、真剣に選んでいた理由を聞いてみると、より芯が出ているものを選んでフレームを組んでいるというのだ。引き抜き加工したシームレス管のダブルバテッドの薄肉チューブなので残留応力で曲がりが出ているものがあるので、それを見分けているのだという。

採用しているチューブは丹下のナンバー1とナンバー2が主で、ときどき薄肉の熱処理チューブのプレステージのロードフレームの注文があるという。ロー付けのオーバーヒートにもより神経を使うし、酸処理の時間にも母材を傷めないように気を使うという。

ラグとチューブの本ロー付けを見せてもらった。入念に磨かれた接合部にフラックスをたっぷり塗って、抗張力の高い真鍮合金ロー材を新品に持ち替えて、ロー棒をじわじわ送り込んで、ラグとチューブの隙間へ溶け込ませる量に気を使って、素早くロー材を流し込んで、ロー切れやオーバーヒートを起こさないことに注意していた。

低温ロー付けと言っても、真っ赤に加熱されるので、熱によるひずみが出るので、組み上がったフレームは常磐の上にセットされて、センター出しの修正が行われて、競輪フレームの塗装を手がける工場に委託して、ラグのエッジが映える塗装の仕上がりにも気を使っているという。

ナンバー2で組まれたフレームだが、思ったよりハンガー周辺の剛性は高くない。バック三角の剛性が高くなりがちなので、肉厚の薄いシートステーか、肉厚のあるものの場合は細い部分を使っているという。それはチェーンステーも同じだという。

フロントフォークも先の細い部分を採用して、先で深く曲げてここで路面からのショック吸収を意識した作りで好評だという。自分で作ったベンディングマシンで冷間でブレードを手曲げしてから、ブレードの直線部分の面位置を合わせて、まっすぐに見えるように溶接しているというこだわりのフロントフォークだ。

フレームビルダーの情熱と技がこもっていることをフレームを見るだけでわかる。3丁目の夕日の世界に、昭和な職人気質をキープした人だった。関東では滅多に見られないブランドだが、地元で評判のお店でフレームビルダーと一緒に食べた豚骨スープのラーメンと一緒に、強く印象に残っている。現物を見ればわかる、と言っておこう。

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