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2020年04月05日16:03

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チタン合金フレームと言えばティグ溶接!

■チタン合金フレームと言えばティグ溶接!

ティグ溶接はスチール、チタン合金、アルミ合金のフレームの組み立てに使われる溶接方法だ。原型のティグ溶接は不活性ガスを封入したタンク内で空気を遮断して行うので、大掛かりな設備の中にフレーム素材を入れて、電気抵抗溶接されていた。

炉の中で行う、とても手間のかかる溶接だが、イタリアのパッソーニなどが採用していた。溶接する母材に電気を流し、溶接機の先から出ているロー材にも電気が流されて、母材とロー棒の先端が接触する部分で、電気によるアークで高熱を発して、母材の溶接部分を溶かし、ロー材も溶かして、溶接部分で合金を作って接合するという溶接方法だ。アークによる加熱範囲が狭く、フレームチューブの材料劣化の少ない接合方法と言われている。

アークの光は強烈で専用のアークの光から目を守る面を付けて溶接作業をする。隙間があると日焼けしてしまうほどだ。ロー付け溶接と違い、フレームチューブその物を溶かして接合する。溶接するチューブに電気を流すための専用キットが必要だ。鉄工所で使っているのも電気抵抗溶接だが空気は遮断していない。

最近のティグ溶接は炉が必要なくなって簡易化されていて、普通の環境下で行えるようになっている。要は溶接部分のみを空気から遮断するように、溶接機の先端から不活性ガスを溶接部分へ吹き付けて、空気を遮断して、電気抵抗溶接を行えるようになったのだ。どこでも溶接機と不活性ガスの設備があれば、スチール、アルミ、チタンのティグ溶接フレームを作ることができるのだ。

MTBのオーバーサイズアルミフレーム、BMXのアルミやスチールのフレーム、ロードのアルミやスチールフレームも、ティグ溶接で作られるようになっている。ちなみにコロンブスチューブの製造方法を研究するアドバイザーだったアンドレア・ペゼンティと彼の工房の職人たちは、ティグ溶接のスペシャリストだ。

スチール製のフレームのレーザーや、クラウディオ・キャプッチの乗っていた肉薄の超軽量アルミ熱処理チューブで組まれたフレームも、別ブランドで乗っていたがペゼンティ製だった。このロンバルディア地方のロマーノの工房には、トム・リッチーもティグ溶接のレクチャーを受けにきていた。リッチーはロー付け溶接がとても上手かったとペゼンティが言っていた。

リッチーは日東のアドバイザーでスチール製ステムの溶接にティグ溶接を採用している。職人を集めて講習会を開き、ビードの細かい見事なテクニックを披露している。同時にロー付け溶接によるステムの製作も披露して、ローの周りが素晴らしくヤスリ仕上げが必要ないほどだったという。次に、ティグ溶接したステムを、フィレット溶接で美しいスロープに仕上げたという。

リッチーにインタビューした時に、ペゼンティが褒めていたとか、日東のクラフトマンが驚いていたと話すとすごく喜んでいた。昔、オレンジカウンティの丘の上にトタン板で組んだ小屋で、ティグフィレット溶接でMTBフレームを溶接していた頃、オレンジカウンティのあちこちにMTB工房やパーツ作りが始まったころに会いに行ったことを話した。日本にMTBの動きを紹介したワイルドキャットの平木さんともここで出会っている。

シマノの開発担当だった岡島さんとツーリングコンポのデオーレXTを持って訪問したことを話すと、思い出してくれて、カシャカシャっとアンテナを伸ばすでかいモバイルホンをジャージのポケットへ入れて、土漠のフィールドを自分で組んだMTBで走っていたのが印象的だったと話すと、そうだったな〜と、大笑いしていた。

その時に、最適ギヤ比を実現するために、PCD110mmのロードクランクが欲しいという話をすると、前2枚、後ろ9段のQファクターの狭い、ツーバイナインドライブのMTB用にスギノに作ってもらっているリッチーロジックのクランクがあるで、提供しようと言われて、サイスポのコンパクトドライブの特集が始まったのだ。

リッチーはティグ溶接の難しさを語り始めた。溶接部分の金属面を出した下仕上げの重要性、しっかり母材を溶かした感触と合金ができている感覚が重要という。最初はビードを一定感覚に整えることに注意がいってしまい、仕上がってもポロリと剥がれることがあったという。

本当にそうなのだ、ティグ溶接を体験した時に、スチールも、ロー材に粘りがあってボテボテのビードになりがちなアルミも、これで母材まで溶けて、ロー材との合金が形成されてくっついたと思ったテストピースを万力に止めて、カツンとハンマーで叩くとポロリとはがれてしまうのだ。ベテランクラフトマンは見ているだけでわかるらしく、テストピースを見て、これはダメと言い当てられた。冷や汗流して真剣に溶接しているのに、全く母材が溶けてロー材と合金ができる感触が掴めなかった。ティグ溶接は難しいという印象だけが残る体験だった。

チタン合金フレームのスペシャリストがパナソニックのPOS工場にいた。やこのクラフトマンのチタンフレームのビードの美しさと接合強度は評判だった。ジグ上で点付けで設計図通りにチタン合金製のフォーン加工されたチューブが固定されて、自在に動かせるハンガーにセットされて、接合部分が細く盛り上がりの少ない美しいビードで溶接されていく。これはマジに凄腕、日本の匠というにふさわしい。

チタン合金といっても、いくつかの種類がある。合金チタンはアルミ、チタン、バナジウムの合金で、6、4、5の配合比率のもので6Al
4Ti5Vと表示される。3、2、5の配合のエアクラフトや軍需用チタン合金がある。粘りや引っ張り強度や耐衝撃性や加工のしやすさ、耐熱性や、耐酸性の違いがある。日本が得意なのは純チタンに酸素透過した抗張力チタンだ。合金チタンは軍需産業や航空機製造の分野からスピンオフしたものだ。

航空機用の軽量ネジをCNC加工していたメーカーが自転車パーツ用の軽量ネジやシャフトを作ったり、航空機用部品や軍事用部品の鍛造や引き抜きチューブのメーカーがフレームや部品を作っている。モラッティはフレームやパーツメーカーとして有名だったが、ウクライナ、カザフスタン、ロシアに生産拠点があった。サンドビックやライトスピードもチタンフレーム製造で有名だった。イタリアにもブランドに供給する、表に出ないゴーストメーカーがある。

製品開発アドバイザーのリッチーは商品価値を高めようと、ビードも仕上がってからさらに綺麗にしようと削ると、極端に接合強度が低下してしまうことも学んだという。ティグ溶接後に低温ロー材でフィレット溶接して強化する、リッチーロジックの丹下製のバテッドチューブを使った軽量フレームのP22もXCレースへ実際に実践投入したという。アルミのティグ溶接フレームにもチャレンジしているという。

ブリヂストンサイクルもブリヂストンアメリカを設立して、アメリカでのバイク販売に取り組んでいた。リーベンデールをプロデュースしているグラント・ピーターセンも所属していて、リッチーと組んでサスペンションなしのリジットの軽量MTBを開発していた。リッチーロジックのロードパーツを思わせるスマートデザインのパーツ群が採用されていて、アメリカのみでの販売モデルを逆輸入して手に入れて乗っていた。

ピーターセンはカンパニョーロマニアで、日本に来ると電話して来て、キャンピーはあるかと、家へ遊びに来ては自転車の倉庫に行って、そろそろビンテージ物になるレコードやグランスポーツなどのストックを分けてくれとか、インナーギヤが44Tまでの旧PCDのレコードクランクとハンガーを見つけて大喜びで、この時代の奴がアルミ合金の材質が硬いんだ、旧ピッチサークルのスペアのギヤ板も探し出して、いっぱいパーツを抱えてアメリカへ持ち帰っていたのだ。

リッチーはスチールにこだわっていた、マスターピースを作っては東洋フレームへ持ち込んでリーッチーブランドで量産していた。MTBのフレームはオーバーサイズアルミ合金チューブへ移行して、溶接アルミと呼ばれる6000系で、最適なロー材を選んでも、粘度が高いのか表面張力があるのか、ティグ溶接のビードの盛り上がりが大きくなって、美しくないという、特に強度が必要なエンド部分の溶接痕がボテボテしてしまうのが気にかかるというのだ。台湾のビルダーの作るアルミフレームは、美しいビードでしっかり接合されていると腕の良さを褒めていた。

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