土曜、午前中にかかりつけのクリニックに行き、その後、水槽の水替えを済ませたら、午後から映画。
今日の1本目、シネマジャック&ベティで、
「僕が跳びはねる理由」。
これは、自閉症の作家・東田直樹が13歳の時に執筆し世界的ベストセラーとなった「自閉症の僕が跳びはねる理由」を元にしたドキュメンタリー映画で、サンダンス映画祭で観客賞を受賞するなど高い評価を受けた。
監督はイギリスのドキュメンタリー作家、ジェリー・ロスウェル。
東田直樹が2005年に執筆した「自閉症の僕が跳びはねる理由」――そこに紡がれた言葉は海を越え、今もなお世界中の自閉症者やその親たちに希望を与え続け、同時に、”普通“と言われる人たちにも新しい気付きを与えてくれる。
映画は、世界各地の5人の自閉症の少年少女やその家族の証言から、“普通”の人たちと彼らの世界がいかに異なるのかを明らかにして行く……
自閉症者は、その行動(言葉が話せない、特定の動作を繰り返す)などから、知能に問題がある、と見られがちで、才能の発揮も、ある種の特異性とみられてしまう。だが、それは彼らの感受性の違いでしかなく、その知性も精神も、同じ人間であるのだ……と示した原作小説は、それが自閉症者自身の言葉と言う事もあって強いインパクトを生んだ。
映画は、5人の自閉症者の姿から、東田直樹の言葉が、紛れもない彼らの真実である事を示していく。
特定の言葉を繰り返すだけで会話が出来ない自閉症者が、文字盤で語る言葉に溢れる知性と洞察力には目を見張るし、自閉症者の記憶の引き出し方には衝撃すら覚えた。
だが、そんな現実を切り取った描写を繋ぐ数々の映像は、期待していた自閉症者の見る世界の具現化ではない、ただのイメージ映像でしかない。そんなポエティックなイメージ映像が、映画を間延びさせ、映画中盤では眠気さえ覚えてしまった。
折角、映画と言う表現形態を取るのであれば、原作の文字表現を映像化する事に力を注いで欲しかった所だ。
続いて2本目は、
「裏アカ」。
これは、TSUTAYA CREATORS' PROGRAM FILM 2015準グランプリを受賞した人間ドラマ。
木村大作、降旗康男、原田眞人、成島出といった監督のもとで助監督を務めてきた加藤卓哉の監督デビュー作。
主演は、「火口のふたり」の瀧内公美。
青山のアパレルショップ店長の真知子。一見、華やかな世界だが、店の経営は苦しく、客は、年下のカリスマ店員・さくらに注目するなど、不満の燻る満たされない日々を過ごしていた。
ある日、真知子は、SNSに裏アカウントで際どい写真を投稿。思わぬ反響に快感を覚える中、フォロワーの一人ゆーとと一度限りの関係を持ってしまい……
この物語だが、いささか幼稚で。工夫がない。
確かに、華やかな都会の暮らしの背後にある孤独を癒やし、心の空白を満たす承認欲求を満たすのが日常とは別の顔、と言う着目点は悪くない。
だが、主人公の真知子は、都会に出て来たばかりの若い娘ではなく、地位もキャリアもある女性だし、そんな彼女が惹かれる男の、「何事にも生きている実感がない」と言う設定は作り上げた感が強く、失笑さえ覚える。
表の世界に不満があって始めた裏アカウントでの承認欲求が、表の世界で認められても続いていく辺りも、物語の構成的に疑問を覚えた所だ。
だが、清冽さがありながら、ここまで脱げる女優として、日本では貴重な存在の瀧内公美の存在が、何とかこの映画を最後まで保たせた感じ。
ここまで身体を張った、瀧内公美に応える意味でも、映画にも頑張って欲しかった所だ。
……土曜日、この後の上映回では、上映後に主演の瀧内公美の舞台挨拶がある、と言うアナウンスがあったものの……さすがに、もう1回観る気にはなれず、と言うか、次の映画のチケットも購入済み。残念。
大岡川沿いの桜も散ってしまったなぁ……今年も「桜祭り」は出来ず終いか……
そして、黄金町からみなとみらいへ急ぐ――丁度、上手い具合いにタクシーがつかまり、余裕で間に合った。
本日3本目は、Kinoシネマみなとみらいで、
「旅立つ息子へ」。
これは、東京国際映画祭で二度のグランプリに輝くイスラエルのニル・ベルグマンが、実話をモデルに親子の絆を描くヒューマンドラマ。
引退した元デザイナーのアハロンは、自閉症スペクトラムを抱える二十歳の息子ウリと二人で暮らしている。
アハロンは、ウリの世話を付き切りで続けていたが、将来を心配した別居中の妻タマラは、ウリの特別支援施設への入所を決める。だが、施設入所の日、嫌がるウリに手を焼いたアハロンは、2人で逃避行の旅に出るのだが……
同日に「僕が跳びはねる理由」を観たせいもあるが、自閉症のウリに生活能力がない、と決めつけ、身の回りの世話を焼き、「自分が面倒をみなければウリはダメなんだ」と繰り返すアハロンが、子離れが出来ない……と言うか、ウリを言い訳に隠居生活を送る偏屈者に見えてしまい、何だかもやもや。
映画は、ロードムービースタイルで、逃避行の中で出会う人々から、アハロンの過去と、と隠居生活に至る理由が見えて来るなど巧さも見えるし、イスラエルの名優シャイ・アヴィヴィがアハロンを実在感を保たせて演じている。だが、どうにも、妻のタマラの主張の方が真っ当に見えてしまうのが困ったものだ。
映画は最後に急展開を見せる。
子離れしたくない親が、如何に子供に張り付こうとも、自分の足で歩き出した息子は、親から離れてしまうのだ。
そんなシーンは、本来感動的なものだったのかも知れないが、そこに至る回り道を見せられただけのように感じられてしまったのが残念……
映画の後、今日は岡野町の「サイゼリア」へ。
週末と言う事で結構混んでいて、入場待ちのリストに名前を書いて待っていると、後から来た8人連れを先に店に入れ、更に、自分より後から来た2組を店に入れ……さらに名前を書いた紙を丸めて捨てようとした所で、
「順番トバしてない?」
と訊いたら、漸く入れてくれた……単純見落としだろうが、「申し訳ない」のひと言もなし。「サイゼリア」は店員教育に気をつけろよ、自分のようなヘタレならともかく、今の対応、かなりの確率で客はキレるぞ。
今日の夕食はラムステーキ。
肉は悪くない、だが、料理の方もほったらかしだったようで、テーブルに来た時には冷めてしまっていたのが残念……
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