水曜は、イオンシネマ港北で、
「劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン」。
定時日だと言うのに、17:00までやっていた会議のブラッシュアップ他で、会社出るのが遅れ、ここまで遅らせても、映画館到着は上映時間ぎりぎりで、結局、夕食の時間なし……イオンシネマズのホットドックセットが晩御飯となった。
これは暁佳奈による小説「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」を京都アニメーションがアニメ化したTVシリーズの劇場版にして完結編。
本作製作中の2019年9月に京都アニメーション放火殺人事件による、製作関係者からも犠牲者を出し、完成が危ぶまれていたものの、この9月に漸く劇場公開に漕ぎ着けました。
人々に深い傷を負わせた戦争が終結してから数年。世界は少しずつ平穏を取り戻し、人々が前を向き進んでいく中、郵便局で代筆業に従事するヴァイオレット・エヴァーガーデン。
かつて軍の少年兵として戦場で戦って両腕を失い、大切な人と生き別れた彼女は、手紙の代筆を通して人間らしい感情を少しずつ取り戻していた。
大切な人――かつての上官、ジルベルト少佐への思いを抱えながら、彼が最後に残した「愛してる」の意味を追い続ける日々……そんなある日、郵便社のホッジンズ社長が、宛先不明の手紙の中に見覚えのある筆跡を見つけて……
この物語は、「想いを伝える」がテーマ。言いたいのに伝えられない想いや、時空を超えて届く想い……そうした様々なエピソードを、想いを伝える術である手紙に重ねて描く群像劇だ。
少年兵として、人間らしい感情を奪われて育ったヴァイオレットが、手紙の代筆業である“自動手記人形”となり、物語の狂言回しとなってエピソードを繋いで行く物語、巧みな世界観、美しい美術に破綻のない作画、と、人気となるのも判る作品だ。
この映画版は、原作小説を改変して終了したTVシリーズの結末を描く為に完全新作で作られたもの。
ヴァイオレットとジルベルト少佐との再会を軸に、複数のエピソードを重ねて、人気シリーズのフィナーレに相応しい分厚いドラマを構築している。
これには製作途中で起きた放火殺人事件の影響もあるのだろう……作品には死の影が濃厚で、葬儀で始まり、病死を挟み、夕方から日没と言う落日を背景にしたクライマックスの情景も、それを印象づける。
涙するシーンも多く、物語はなんとも湿っぽいが……正にこれはレクイエムであるのだろう。
製作関係者を多く失い、それを乗り越えて生まれた本作は、そうした悲劇を背負って生まれただけに、作品単品だけでは語れないものを抱えてしまっているのだ。
映画としては、いかにも京都アニメーション作品らしく、美しく、綺麗に出来たアニメだと思う。細かく描き込まれ、正に「絵が芝居をする」と言うレベルに達する事で、絵に命を吹き込む、と言うのは安彦良和の系譜として現在最高位にあるだろう。
ただ、距離を置いて棒立ちで会話するシーンが多くを占めるのは工夫がないし、細かく描き込まれたキャラクターは、その分、大きく動かすのを苦手とするなどの問題も目につくが、それを言うのも野暮と言うものか……
公開週末で5.5億の興行収入を叩き出すなど、本作の人気は相変わらずだが、多くのスタッフを失い、再建さえ困難な京都アニメーションの実情を考えると、何とも言えない想いに囚われてしまう……
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