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2020年09月21日00:36

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日曜は……

 日曜は、午後、シネマジャック&ベティで映画2本。

 1本目は、
 「いつくしみふかき」。
 これは、昨年のゆうばり国際ファンタスティック映画祭で観客賞受賞の人間ドラマ。
 監督は、大山劇団の作・演出家を務める大山晃一郎。

 長野の山村で、加代子が出産に臨んでいるその最中、余所者だった夫の広志は加代子の実家に盗みに入っていたのを見つかり、悪魔として村から追い出される。
 この騒動の際に生まれた進一は、父親は触れてはいけない存在として育てられた。30年後、進一は母親に甘やかされ、一人では何もできない男になっていた。そんなある日、村で連続空き巣事件が発生。進一は犯人に違いないと決めつけられ、村から追い出される。
 一方、広志は、舎弟を引き連れ、人を騙して金を巻き上げていたが、ある事件で、警察に追われ、知り合いの牧師の所に逃げ込む。そこには、居場所のない進一がいて、2人は互いに実の親子だと知らないまま奇妙な共同生活を始める事になって……

 この映画、舞台とした長野県・飯田市でなかなか理解が得られなかったと言う……まぁ、それも当然で、村で盗みを働いたとして山狩りまでして取り押さえ追放し、その息子も「悪魔の血」だとして追い出してしまう、と言う村社会の描写は、一体、何時の時代の話だろうと思わせる。長野の山村が、これではまるで前時代的な閉鎖社会ではないか。
 映画としては、大山晃一郎監督の抱えていた親子の葛藤を土台に、悪党の子が背負う苦悩と、そんな親を理解し受入れられるかと言う問題を描こうとするもの。これは語るべき価値のあるテーマで、それを映画にしようとする真摯さも感じる。だが、前述したように村社会の閉鎖性の描写は時代錯誤、教会を舞台としながらも、キリスト教的な罪と赦しが描かれる訳ではない。ひとりでは何も出来なかった進一の再出発と、出会いを描く成長物語も中途半端、と1本の映画としてはバラバラな印象を受ける。
 これはさすがに、大山監督、意あれど力足りず、と言わざるを得ないのではないだろうか。 


 2本目は、
 「東京の恋人」。
 これは「MOOSIC LAB2019」で、主演の川上奈々美が最優秀女優賞を受賞した下社敦郎監督作を単独劇場公開したもの。
 
 大貫立夫は、大学卒業後、映画の道を目指すも挫折、当時交際していた彼女の実家である群馬の建設会社で働く事になり、結婚もした。
 そんな立夫に、ある日、大学時代の恋人の満里奈から電話が入る。
 「写真を撮って欲しい」と言う満里奈に逢う為、立夫は、週末、数年ぶりに東京へ向かった。土曜は、同様に映画に挫折した先輩宅を訪れ、日曜日、10年ぶりに再会した満里奈は、「海を見たい」と海辺へとクルマを走らせて……

 これは、夢破れた男と、その夢に青春を費やした女の恋愛の顛末を描く映画。
 夢破れ、人生を惰性で生きているような立夫に対し、満里奈の中には未だに燻っているものがある――だから、彼女は「写真を撮って欲しい」と言ったのだ。映画を目指す者ならば、その“写真”には映画の意味が込められているのは判るはずだから。
 また、結婚している事を隠さなかった満里奈と、結婚指輪をクルマに置いて来た立夫の狡さも対比され、それが、最後の満里奈のメッセージを心打つものにする……懲役18年。ひとりの女の献身と愛情、そして人生を変えてしまった代償として彼女が求めた求刑――立夫は自分の夢だけではなく、そんな彼女の想いからも逃げ出したのだ。
 それをあらためて突きつける、これは青春を不完全燃焼で過ごした人に送る悔恨の物語なのだ。

 そんな立夫を演じたのは、「五億円のじんせい」の森岡龍。敢えて、個性を抑え、記号的な二枚目に徹したのは、観る男に感情移入を促す狙いだろうか?
 それに対し、川上奈々美は、20歳当時の、溌剌として輝くような満里奈と、30歳の残り火のような情熱を抱え込んだ満里奈を演じ分けており、これは高い評価を受けたのも納得。AVでは「みぃなな」の愛称でファンも多い川上奈々美、最近ではドラマ色の強い作品に活動の中心を移してはいたが、これほどは思わなかった。最早、立派な映画女優の顔をしていますし、ラストカットの笑顔は強く印象に残った。
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