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2020年09月10日00:31

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水曜は……

 水曜は、イオンシネマ海老名で、
 「人数の町」。
 これは、第1回木下グループ新人監督賞準グランプリに輝いた、CMプランナー・荒木伸二の初長編映画。
 主演は、「水曜日が消えた」の中村倫也。

 借金取りに追われる蒼山は、黄色いツナギの男に助けられ「居場所を用意する」と、ある施設に案内する。そこでは、ネットの書き込みや、代理投票などの労働と引き換えに衣食住が与えられていた。
 ひとり暮らしが基本だが、行動は自由だし、住民同士でのセックスは、むしろ推奨される有様。だが、家族も子供も作ってはならない。
 最初は戸惑っていた蒼山だが、ここの暮らしにも慣れて来た頃、行方不明になった妹をここに探しに来たという紅子と出会う。他の住人達とは異なり思い詰めた様子の彼女を蒼山は気にかけるが……

 この物語だが、作り上げられた世界観はなかなか見事。荒木伸二監督のオリジナルだそうだが、原作もの映画が溢れる中で、監督デビュー作となるオリジナル脚本で、この完成度と言うのは恐れ入る。
 新しい廃墟のような独特の存在感を持つ“施設”は、福島のリゾートホテルだそうで、そうしたシチュエイションにも恵まれたせいもあるだろうが、日本のインディーズ映画らしからぬ、世界観とスケール感を感じさせて見事ではある――ただ、フリーセックスなのに、子供は作っちゃダメ、と言うのは疑問を覚えた部分だが……

 キャストもなかなか。中村倫也と石橋静河と言う実力ある2人を主役し、個性的な顔ぶれを揃えた。印象的だったのは蒼山の事実上のガイド役となる緑を演じた立花恵理――最初、小島瑠璃子?と思ってしまった……

 惜しいのは物語の方。紅子の子供がいつ出来たのか……これがどうにも辻褄が合わないし、最後のオチもちょっと弱い。
 また、施設の住人が“人数”だと言われて蒼山が激高するのだけど、そんなのすぐに判りそうなものじゃないか……むしろ、外の世界では行き場がなく、生き辛さを感じていた蒼山が、施設を拡大し、これこそがユートピアだ、とするくらいの結末が欲しかったような気もする。
 実際、ただ“人数”とカウントされ、そこにいる事に価値がある、と言う事など、現実世界にだって幾らでもあるのだ。それを切り売りする商売があってもいいし、この物語が描く“施設”のリアルさは、そんな”ありそうな”感じにあるのだ。物語としては、もっとそこを思い切って描いてもよかったように思った。

 まぁ、それにしてもよく考えられた世界観と実力派キャストで、見応えのある映画である事は間違いない。
 荒木監督の次作にも期待したい。
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