水曜は、帰宅後、アマゾン・プライムで、
「トランス・ワールド」。
これは、2011年にジャック・ヘラー監督、初の長編映画として製作されたもの。低予算のB級映画だが、内容はなかなか。
キャストも、クリント・イーストウッドの息子、スコット・イーストウッドに、後に「エイリアン・コヴェナント」では主演女優となったキャサリン・ウォーターストーン、「シャークナイト」のサラ・パクストンなど、後に活躍する新星を揃えている辺り、先見の明があると見るべきか……
自堕落な生活を送っていたジョディ。ガソリンスタンドで強盗を働き店員に発砲――
一方、クルマがガス欠となり助けを求めに森の中を彷徨うサマンサは、小さな小屋を見つけ、そこでトムと言う男性と出会う。トムもまた事故で身動きが取れず、小屋に避難していたのだ。そこへジョディもやってくる。3人は、何とかこの森から脱出しようとするのだが……
この映画、人里離れた森の中で、抜け出そうにも歩いているうちに元の場所に戻ってしまう……と言う、いかにもB級ホラーのような展開を見せるのだが、これがなかなか見事なSF、ループものとなっている。
3人(終盤に4人)が、それまでいた場所と時間が食い違っている事が徐々に明らかになる中盤以降の謎解きも面白いが、それまで、伏線を散りばめつつ、それを、その場では違和感を大きく感じさせない辺りの演出も巧み。
基本、森の中。小屋ひとつ、地下室ひとつ、俳優4人と言う低予算の映画ながら、その限られた状況を上手く使い、チープさを余り感じさせない……それはしっかりと芝居の出来る俳優――だからこそ、後にみな活躍している――を起用し、大騒ぎさせる安っぽい演出ではなく、しっかり演技で見せているからで、低予算映画のお手本のひとつだろう。
ネタバレになってしまうので、詳しくは書けないが、みんなが破滅から抜け出す展開もいい――難点は、終盤の、その解決方法がかなりドタバタし、スマートでない事くらい。エピローグで別のループが始まるのにもニヤリとさせられる。
日本では劇場未公開のB級の小品だが、山椒は小粒でピリリと辛い、正にそんな映画。
PS
鑑賞後、レビューサイトを見ていてハッとした――エピローグ、トムだけが救われていない。しかも、父は母となる女性を変えて同じ事を繰り返している。
これは、トムが自殺をしているからだ。キリスト教では許されない罪……トムはその贖罪の為、このループの中で、母となる女性を救い続けて行く、と言う事か……
サマンサがドイツ系ユダヤ人、と言う辺りの設定も含め、これはなかなか深いドラマを秘めているようだ……
……これを観た後、レビューを書いてる最中に、TVも、エアコンも、照明も点けっぱなしで寝てしまった……やれやれ。
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