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2020年05月23日19:48

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土曜は……

 今日は、午前中、かかりつけのクリニックに行き、水槽の水替え。
 天気は予報ほど悪くない……でも、ちょっと熱っぽいし、怠いので無理をせず、午後は部屋で映画を2本。

 1本目は、
 「淵に立つ」。
 これは、第69回カンヌ国際映画祭ある視点部門審査員賞を受賞した、深田晃司監督の人間ドラマ。
 公開当時見逃しており、その後、高く評価されたので気になっており、この機に観る事にした。

 小さな金属加工工場を営む鈴岡利雄は、妻の章江、娘・蛍の三人家族。そんな彼らの前に、ある日、利雄の旧い知人で、最近まで服役していた八坂草太が現れる。利雄は、八坂に自宅の空き部屋を提供、住み込みで働いて貰う事にする。章江は突然の出来事に戸惑うが、礼儀正しい八坂にやがて好意を抱くようになる。だが、ある時、八坂は一家に残酷な爪痕を残し、姿を消す……

 この物語、平凡な家庭に飛び込んで来た異物が家族をかき回す、と言うよくある話と思わせて、実はその家族の方に問題が……と言う話。ホラーにもサスペンスにもなりそうな話なのだけど、これを「後ろめたさ」と言う誰にでも身に覚えのある問題に落とし込み、それを小出しにして見せて行く事で観る者を引き込んで行くのはなかなか巧み。
 そして、破滅までの水位をじわじわ上げながら、一気にひっくり返して8年後に物語を進める展開に、ミステリアスな前半、隠された真実を解き明かしつつも気持ちよくは終わらせないと工夫された後半、と言う構成も素晴らしい。

 八坂と言う得体の知れない男を、異物感満々で演じ切った浅野忠信は見事だけど、正に絵に描いたような小人物である利雄を演じた古館寛治、8年と言う時間経緯を10kg以上の体重増で演じ分けると共に、妻から女、そして母と、家庭内での立場も演じ分けた筒井真理子の巧みさが目立ち、この映画で2人の評価がぐっと高まったと言うのを今さらながら納得した。

 隠された罪を抱え、後ろめたさを抱えて生きる人が、淵を見つめる時、そこで出会うのは天使なのか、悪魔なのか――人が罪を抱えた時、罰すらも時に救いになる……そんな事を考えさせられる映画だった。

 
 2本目は、
 「ミス・アメリカーナ」
 これは、アメリカのシンガーソングライター、テイラー・スウィフトの半生を描くドキュメンタリー映画。これもNETFLIX配信作だが、先行上映されたサンダンス映画祭では大変な人気となったそうだ。

 映画は、テイラー・スウィフトの歌に重ねて彼女の人生を振り返って行く。
 13歳でデビュー、史上最年少にして史上最も売れたカントリー・ミュージシャンとなり、2009年にはグラミー賞をこれまた史上最年少で受賞……と、トントン拍子に進む彼女のサクセスストーリーを描くと見せて、映画はここから彼女の「戦い」を描いて行く。
 グラミー賞のステージに乱入したラッパーのカニエ・ウェストに侮辱され(しかも、カニエ・ウェストは後に「オレが有名にしてやったんだからヤラせろ」と、公開セクハラでしかない歌を発表する)、そのブーイングを自分への非難と思い込んだ彼女は酷く傷つく事になる。しかも、その後も会見場でラジオDJにスカートの下に手を突っ込まれて痴漢行為を受けるなどのセクハラ、そして、世間からのバッシング……と、よくもまぁこれで心折れたり、酒や麻薬に逃避して潰れなかったと思うほど。
 もっとも、余りのバッシングの酷さに彼女は一時休業、そして、彼女の逆襲が始まる、と言うのが後半の見せ場となる。
 
 クライマックスは2018年の中間選挙。カントリー歌手として保守派(=共和党支持)と見られていたテイラーが、地元テネシーの共和党議員を支持出来ない、と表明しようとする下り。
 テイラーは、女性やマイノリティの権利をないがしろにする議員は支持出来ないと言うが、スタッフは、かつて共和党批判して追放されたカントリー歌手、ディクシー・キックスを思い出せ、ツアーの動員数が半減するぞ、と反対。でも、テイラーはくじけない。あのテイラー・スウィフトが涙ぼろぼろ零しながら訴えるのだ。「自分は歴史の正しい側に立ちたい」と――これには胸を打たれた。
 最後、セキュリティ担当のスタッフに「反トランプの姿勢を明確にするのは危険だ、何が起きるか判らない」と言われる辺りがアメリカの恐ろしい所。それでもテイラーは己を曲げず、セキュリティ担当は「(ツアーには)装甲車がいるな」と折れる……
 日本でも芸能人が政策批判をすることであれこれ言われたりもしているが……アメリカも似たような部分があるのだなぁ、と思ってしまった。

 エンドタイトルにもなっており、事実上本作の主題歌である「オンリー・ザ・ヤング」の歌詞がまた心打つもの。
 「勇気を出して声を上げ、世の中を変えよう。それで、未来は変わるのだから」
 と言って、スポットライトの下に立つ、テイラー・スウィフトの姿が以前に増して魅力的に見えた。
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