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2020年03月15日00:54

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土曜は……

 土曜は朝から冷たい雨。
 とりあえず、午前中に散髪を済ませ、それから水槽の水替え。

 午後は、シネマジャック&ベティで映画2本。
 1本目は、
 「娘は戦場で生まれた」
 これは、2019年のカンヌ国際映画祭で最優秀ドキュメンタリー賞を受賞。
 監督は、本作がデビューとなるシリア人女性、ワアド・アルカティーブと、数々のTVドキュメンンタリーを手がけてきたエドワード・ワッツ。

 未だ内戦の続くシリアで、反政府勢力の拠点であったアレッポ。
 アレッポ大学に通うジャーナリスト志望のワアドは、政府の強圧的な治安活動に対するデモへの参加をきっかけにスマホで撮影を始める。
 反体制勢力が自治を獲得したアレッポに反政府勢力が合流してから激化する戦闘、介入したロシアによる無差別攻撃と、彼女は、アレッポの戦いの実情を市民の目線で克明かつ生々しく記録して行く……

 映画原題は「FOR SAMA」――SAMA(サマ)とはワアド監督の娘の名で、それには“空”の意味があると言う。
 映画は、ワアド監督が娘に語りかけるものとして作られている。
 だから、この映画は決してシリア内戦だけを描いたものではなく、ワアド監督と、ハムザ医師との出会い、そして結婚、友人家族との団らんなど、家族を描いているのが女性ならではの視点だろうか。
 また、砲爆撃の中で生まれたサマは爆発音をまるで恐れず、爆撃の中でもすやすやと眠っている、と言うのにも驚かされる。人はどんな環境にも適応してしまうのだ、と言う事に。

 ワアド監督のカメラは、通常の報道カメラが避けるような、死体や、破壊された人体、病院の床を埋める血痕などを生々しく描き出して行く。
 実際、幼い息子を亡くした母親が叫ぶのだ。
 「あなたカメラ回しているの?しっかり撮って、これを世界に伝えて」と。
 世界が目を背け、見ないようにしている戦争の実態……そこで生きているからこそ写し取れるものがそこにあるし、だからこそ、そんな映像には力がある。
 「私は私に出来る事としてカメラを回した。では、あなたに何が出来るのか」
 と訴えかけてくるものがあるのだ。
 そんな強いインパクトの映像が続く本作だが、爆撃で重傷を負って病院に担ぎ込まれた臨月の女性から帝王切開で取り出された子供が息を吹き返すシーンが強く印象に残った。

 映画最後は、国連の介入により民間人がアレッポから退去するシーンで終わる。
 決して感動的とも言えない最後だけど、それでも涙が止まらなかったのは、地獄のようなアレッポから抜け出した安堵からか、或いは、そんなアレッポで最後まで自由を求め続けたその想い……人は理念の為に、ここまで強くなる事が出来るのかを思い知らされたからだったのか……簡単には気持ちを整理出来そうにない。


PS
 この映画、撮影の殆どが手持ちカメラによるもので、POV映像に弱い自分は途中から映像酔いして気持ち悪くなってしまった。


 2本目は、
 「ロングデイズ・ジャーニー」
 これは、中国新世代の若き鬼才ビー・ガン監督による奇想の一作。
 本作の後半60分は、3D・ワンシークエンスショットという挑戦的な手法が用いられている。

 父の死を機に故郷・凱里へ戻って来た男、ルオ・ホンウ。久しぶりに帰郷したルオに、死んだ幼馴染みの白猫や、彼の心をずっと捉えて離れることのなかったある女のイメージが付き纏う。彼女は自分の名前を、香港の有名女優と同じワン・チーウェンだと言った。ルオはその女の面影を追って、現実と記憶と夢が交錯するミステリアスな旅に出る……

 映画前半は、謎の女を追うミステリーと言う趣で、フィルム・ノワール調の演出がスタイリッシュ。
 しかし、全くつかみ所のない設定、物語の連続性を否定するような脈絡のない展開、解ける所か深まる謎……と何だか醒めたまま夢を見ているような気分にさせられ、そして映画館のカットから、ウワサの60分ワンカットパートへ……
 その没入感を生み出す演出、ある種の文学性を感じさせる物語と台詞……一体、自分は何を観ているのだろうか、と思わされながらも、いつの間にか終わってしまった138分。
 ビー・ガン監督の卓越した(と言っていいのだろうか?)才能に圧倒された。

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