土曜は忙しい。午前中、かかりつけのクリニックに行き、それから水槽の水替え。
午後はロドスタを6ヵ月点検に出し、点検を終えて戻って来たら家の買い物……米びつが壊れたとかで買いにいかねばならない。
その後、米びつを交換。
夜、ジャック&ベティで、
「屋根裏の殺人鬼 フリッツ・ホンカ」
これは、ドイツ・ハンブルグで1970年代に実際に起きた連続殺人事件に基づく同名小説を映画化したもの。
1970年、ドイツ・ハンブルグ。安アパートの屋根裏に住むフリッツ・ホンカは、風俗街にある寂しい男女が集まるバー“ゴールデン・グローブ”へやってきては、女性たちに近づいていた。しかし、せむしで不細工な彼に声を掛けられても、女たちは顔をしかめるだけだった。
そんなフリッツには屋根裏の部屋に秘密があった……
このフリッツ・ホンカと言う男、先日、また映画化されたテッド・バンディとは対極にあるような男。
知的でスマートな好青年だったテッド・バンディに対し、ホンカと来たら不細工で、頭も回らず、己を律する事も出来ずに欲望に負けては場当たり的に犯行を繰り返すだけ、と言う……こんな粗い犯行、おざなりな後始末で連続殺人が発覚しなかったと言う事自体、呆れるようなものだけど、これはまぁ、彼と被害者らが生きていたのが、第二次大戦後の復興からも取り残された、社会的には存在しないも同然だったからのように思える。
映画は、そんなホンカの犯行を再現。猟奇的なシーンは控えめだが、ホンカの住居の作り込みは、エンドロールで流れる証拠写真の映像とそっくり――この辺りはドイツ人的職人芸だろうか――悪臭までもが感じられそうな作り込みに加え、登場人物までもがそっくり。ホンカの被害者女性たちも事実に基づき高齢者ばかり。ホンカが幻想を抱く、グラマーな女学生以外は、映画らしい華やかさもなければ、カタルシスもない……事実上、ゴミ溜めをのぞき込んでいるような気にさせられる映画だが、不思議な魅力が感じられた。勿論、好き嫌いは別れるタイプの映画とは思うが。
続いて、同じスクリーンで、
「レ・ミゼラブル」。
これは、昨年のカンヌ国際映画祭審査員賞を受賞した社会派ドラマ。また、米・アカデミー賞でも国際長編映画部門でノミネートされており、「パラサイト」がなければ、もっと注目されていただろう、と言われるインパクトのある映画。
監督は、独学で映画を学び、本作がデビュー作となるラジ・リ。
「レ・ミゼラブル」の舞台となったパリ郊外のモンフェルメイユ。現在は移民が多く暮らし、犯罪多発地域となった街で、ある少年が引き起こした事件が大きな騒動へと発展し、取り返しのつかない方向に進んで行く……
映画はサッカーWC決勝戦の日から始まり、今や他民族国家となったフランスがひとつとなってフランスの勝利を祝うのを写すのだが、その水面下では、不満や怒りが燻っている、と言う現実を描いて行く。
ラジ・リ監督は、実際にアフリカ系移民で貧民街で育ち、映画の中でドローンを飛ばして警察の強権的な取り締まりを撮影した少年同様、実際に、そうした場面を撮影していたのだと言う。
(尚、映画でドローンを飛ばしていた少年は監督の息子)
映画は、そんな監督の実体験に基づき、実際のエピソードを元にして暴動が生まれるきっかけから、引き返し不能点に至る直前までを描いて行く。
映画は最後に向き合う警官と少年を描き、その決断までは描かないが、その決断は、この映画を観る人、ひとりひとりに突きつけられているのだ、と感じた。
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