mixiユーザー(id:12410478)

2019年04月11日00:03

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文系の博士課程。就職口もさることながら、研究のインフラ整備が必要です。

ご冥福を心からお祈りします。
何も、命を落とされることは、なかったのに…

この方のやった研究は、
「お金と時間が非常にかかる」という特徴があります。

影印読解(古文書読解)が必要であり、文書(もんじょ)が全国に散らばっているからです。

ですから、「食えないから、死を選んだ」というのは、少々、不正確です。食うためだったら、バイトするなどが考えられます。この方が、少々の収入を得ても、文書閲覧のために全部が吸い込まれたのではないでしょうか。

では、文書のデータベースがあるかというと、主なものしかありません。
「群書類従」という書籍があります。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%BE%A4%E6%9B%B8%E9%A1%9E%E5%BE%93
と、あらゆる国書を集めて、翻刻したものです。

http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2580895  
と、ありがたいことに、国会図書館にアクセスすれば、読めます。

編者、塙保己一は、全盲でした。
その代わり、一度聞いたことは、決して忘れないほどのとてつもない記憶力の持ち主だったそうです。

塙保己一の仕事は、偉大などの言葉では済まないほどです。
(ヘレン=ケラーの父母も、「塙保己一をめざせ」とヘレンに日ごろ述べていたそうです。幼いころに全盲になり、人に掌に文字を書いてもらって、字を覚えました)
存在が知られている書物は、大体、上にアクセスすれば解決します。
この間の論文で、引用の中略がズレたことがあります。査読は通過しましたが、そこは、指摘が入りました。偉い先生もご覧になっています。

しかし、
当然、漏れがあります。個人の手紙のなどは、最初から、収録されていません、
特に、この方のやっている仏典の場合、門参(流派の秘伝)というものがあり、下手をしたら、全国、お手みやげをもって、寺院などを駆け巡らなければなりません。

古書の収集は、「群書類従」に漏れたものも行われております。
平沼騏一郎、大隈重信らによってなった、企ての一つが、我が無窮會です。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%84%A1%E7%AA%AE%E4%BC%9A
しかし、補助金が政府から下りているかというとそうでもありません。
私は研究員ですが、金を出すべき国家事業がここにあるのに、スルーされています。

何も、高額な給与を出せと言っているのではありません。
図書を参照したい研究者に便宜を与えることこそが、問題です。
特にオープンソースとなれば、地方の大学から高い旅費を払って、東京を訪ねる必要はなくなりますから、研究をやっている方なら、どのような立場の方にも便宜を与えられます。

国家が金を出さない結果として、お寺さんの史料の整理も遅れています。
叡山文庫の天海蔵だけでもオープンソースにして欲しいですが、臨川書店などから目録が出ているだけ。
膨大な天海蔵の蔵書を全て見た人がいないので、書名が分かっても、実際にみたら違っていたなどはよくあることです。オープンソースがない以上、足を運ばないとお手上げです。
もちろん、叡山文庫だけの資力ではできませんから、公的資金導入が必要です。

以前に、先輩が叡山文庫で史料を探したことがあります。
その人は、質素ですが、やはり往復の交通費宿泊費その他で七万くらいかかったと思います。志がある人は、苦労して自腹を切っています。

訳が分からない、助成金に年数億払うより、こういう作業が先決だと思いますが。


■文系の博士課程「進むと破滅」 ある女性研究者の自死
(朝日新聞デジタル - 04月10日 07:32)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=168&from=diary&id=5574728
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