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mixiユーザー(id:12313)

2017年08月10日03:08

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ドライカレーは日本郵船が発明したものではありません

 さて、福神漬のことを調べていて、気になったことがあります。日本郵船が、ドライカレーの発明者であることを主張しているのです。

>ひき肉や野菜のみじん切りを煮詰めたものをご飯にかけて食べるこのドライカレーは、明治時代に当社の欧州航路船上で日本人コックが考案したと伝えられています。それを明確に証明する資料は残っていませんが、多くのOBが証言しており、まず間違いないでしょう。当館に収蔵されているメニューの中にも、古くは1911(明治44)年4月9日の欧州航路「三島丸」のディナーメニューに、“Lobster&DriedCurries”の文字を見つけることができます。
http://www.nyk.com/yusen/kouseki/200603/index.htm

 ドライカレーは日本郵船のコックが発明したものではありません。

 Lobster & Dried Curriesということは、二種のカレーを同時に出したようですが、ロブスターカレーもドライカレーも、19世紀の料理書に頻出するイギリスの古典的カレーです。

 まず、1881年(明治14年)にロンドンで発行された、学生・若者向け料理入門書、Good cookery by a housekeeper (Mrs. L D Brown)を引用します。google booksで読むことができます。
https://books.google.co.jp/books?id=fkMCAAAAQAAJ

 P66に「”ドライ”カレーとはなにか What is "dry" Curry?」の説明があるので、意訳します。

”肉を蒸煮(stew)することで、体積が減ってドロドロした状態(pulp)になります。これを”ドライ”といいますが、完全に乾かないよう、ある程度の肉汁は残した状態にします。火にかけている間は、木製のスプーンで頻繁にかき混ぜてください。”

 そして別項に、材料の生肉はフォークで細かく切り裂いて使う、給仕する際は、別皿に盛った白いご飯とレモンのかけらとともに食卓に出す、とあります。
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 1891年(明治24年)にマドラスで発行された英字本、Culinary Jottings For Madras第6版におけるドライカレーの一般的な調理法です。

”セミドライ、あるいはドライカレーにしたい場合は、弱火にしてふたを開け、さらに肉汁を蒸発させます。肉が鍋にこびりつかないよう、木製のスプーンで混ぜ続けてください。”
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 どんなカレーも水分を飛ばせばドライカレーになる、ということです。現代のイギリスでも、水分の少ないカレーをドライカレーと言います。
 http://www.bbc.co.uk/food/recipes/dry_curry_of_cabbage_71527

 それでは具体的なドライカレーレシピをみていきましょう。カレーの歴史(コリーン・テイラー・セン著)において、ヴィクトリア朝の代表的な料理書とされたModern cookery for Private Families(Eliza Acton)1845年(江戸時代 弘化2年)のドライカレー。
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 最後にロブスターを使ってもよいとありますが、19世紀イギリスにおけるシーフードカレーの代表がロブスターカレーです。このようにロブスタードライカレーもあります。

 日本郵船のような挽肉を使ったドライカレーはないのか、というと、結論としては無いです。というのも19世紀はまだ家庭に挽肉機が普及していないので、挽肉という概念が存在しません。minceという動詞は存在しましたが、当時の意味は”包丁で細かく切る”という意味です。

 というわけで肉を細かく切るレシピならば存在します。Domestic Economy, and Cookery: For Rich and Poor 1827年のレシピ。江戸時代の文政10年ですから、ちょうど江戸で握り寿司が生まれた頃のレシピです。
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 この他にも、19世紀イギリスの料理本を調べると、たくさんのドライカレーレシピが出てきます。以下にその一覧を載せますが、徹底的に調べたわけではないので、これ以外にも多くのレシピが存在するでしょう。

 というわけで、ドライカレーは日本郵船のコックが発明したものではなく、古典的なイギリスのカレーなのです。

Domestic Economy, and Cookery: For Rich and Poor 1827年
P137 上記のSec, Sec, or Dry Curry

The practice of cookery Mrs. Dalgairns 1830年
P171 A Dry Currie

The practical cook, English and foreign Joseph Bregion, Anne Miller 1845年
P326 A Dry Curry with Vegetables
P327 A Dry Curry
P339 To Make A Dry Lobster Curry

Modern cookery for Private Families Eliza Acton 1845年
P289 上記の A Dry Currie
P291 Selim's curries

The Practice of Cookery and Pastry, Adapted to the Business of Every Day Life Mrs. I. Williamson Myles MacPhail 1858年
P102
A DRY CURRY
DRY CURRY ANOTHER WAY

Mrs. Beeton's Dictionary of Every-day Cookery Isabella Beeton 1865年
The Project Gutenbergから該当部分を転載

CURRY.

Ingredients.Veal, mutton, fowl, or rabbit; a large onion, butter,
brown gravy or stock, a tablespoonful of curry-powder. Mode.Let
the meat be half fried. Cut the onion into small pieces, and fry it
in butter till quite brown; add the meat, with a small quantity of
brown gravy or stock, also the curry-powder, and stew all for about 20
minutes. This is for a dry curry; more gravy and curry-powder can be
used if preferred. Time.20 minutes. Seasonable at any time.

Handbook for the Breakfast Table Mary Hooper Griffith and Farran 1873年
P46 DRY CURRY OF MUTTON

Hints on housewives, by mrs. Frederick mrs. Frederick Macmillan 1880年
P40 Madras Dry Curry

Margaret Sim's Cookery By Margaret Sim 1883年
P81 Dry Curry

Cassell's Dictionary of Cookery 1883年(初版ではない)
P971 Mutton, Dry Curried

The non-alcoholic cookery book. revised by E.M. Greenup Mary E. Docwra 1884年
P37 Dry Curry

Indian Cookery "local" for Young Housekeepers 1887年(第2版)
P77 Thisra curry another way 貝のドライカレー

Mrs. A.B. Marshall's larger cookery book of extra recipes
by Marshall, A. B. (Agnes Bertha) 1891年(版数不明 初版ではない)
P278 Curried Rabbit(Dry) a la Mango

Mrs. Roundell's Practical cookery book 1898年
P424 Dry Curry

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コメント

  • mixiユーザー

    mixiユーザー2017年08月10日 12:50
    カレーにレモンとは、斬新な。えげれす人のアイディアでしょうが、合わない気がします。

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