mixiユーザー(id:12290887)

2016年07月14日20:05

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四カマのキハ65(その3)推進軸はどう動く?

長いことお待たせしまして申し訳ないです。
 さっそくキハ65について、今回は推進軸と動力伝達方式について書いてみます。
 キハ65はキハ181系と同じで、動力伝達の方法がこれまでの気動車とは大きく異なっております。それではキハ65以前の一般型気動車の動力伝達方式は以下の通りです。

 これは液体変速機から推進軸を経て台車にどのように動力が伝わっているかを示す略図です。
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 この図の左側にエンジンがありまして、エンジンで発生した動力は液体変速機を経て推進軸で台車の逆転機に伝わり、車輪を回転させて車両を動かします。
 この方式を採用している形式をご存じでしょうか?
 ・キハ10系(この形式からこの方式を採用)
 ・キハ20系
 ・キハ30系
 ・キハ45系
 ・キハ55系
 ・キハ58系
 ・キハ80系
 まあわかりやすく言えば、DMH17系エンジン搭載車と言っても良いですが、実は上記以外の形式もこの方式を採用している形式があります。
 それは、
 ・キハ37系
 ・キハ38系
 ・キハ31系
 ・キハ32系
 ・キハ54系
 ・キハ185系
 これらの形式は、国鉄末期に廃車発生品を再利用して誕生した機材流用車の形式であり、エンジンは直噴ターボディーゼルエンジンですが、変速機や台車を再利用した形式です。但し、キハ54系500番台は更新工事により変速機、台車を交換し、既にこの方式ではありません。
 さて、この液体変速機に(シンコー型)と書かれていますが、これは神鋼造機が開発製造したシンコーTC2型のことです。
 またこのシンコー型とは別に新潟鐵工所が開発製造したニイガタDF115型もあります。
 国鉄形気動車は、どちらの形式の液体変速機を搭載できるようになっており、シンコーTC−2型は乾式単板クラッチを採用し、変速と直結の切換は圧縮空気を使用し、ニイガタDF115型は湿式多板クラッチを採用し、変速と直結の切換は油圧を使用しています。
 
 では逆転機の方に話を進めましょう。
 エンジンの回転方向は同じでして、残念ながら逆方向に回すことは出来ません。そのために逆転機が必要になるのです。
 どうやって前進と後進に切り換えるのかと言えば、次の図を御覧下さい。
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 3組の傘歯車の組み合わせに、車軸に付いている歯車の位置を変えることで車輪の回転方向を変えることが出来ます。


 それではキハ65はどう変わったのかと言いますと、
 下の図を見て下さい。エンジンからの出力を受ける液体変速機内に逆転機が内蔵されました。
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 また新製時にはこれまでの変速機とは違い、クラッチは乾式単板クラッチでも湿式多板クラッチとも違う、爪クラッチを採用しました。
 この爪クラッチについては別の機会に書くことにしますが、大変な苦労を強いられたのです。

 そしてこれが推進軸。
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 これまでの気動車の物よりも太くて強度を増した物に変わりました。

 それからこれまでの気動車で逆転機だった部分はどうなったかと言いますと、
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 減速機という名称に変わりました。これまでの傘歯車から、曲がり歯傘歯車に変更になりましたが、これは500馬力の機関から発生する太いトルクに対応するためこの歯車になりました。
 ちなみにこれまでの気動車でも逆転機としての機能と共に減速機としての機能も持っていました。
 ところでこの図の右側に「入力軸」と言う言葉があり、これは変速機から延びている推進軸で、別名「癸運篆兵粥廖△發靴は「第1推進軸」です。そして図の左側に「癸何篆兵粥廖△發靴は「第2推進軸」と「第2減速機」と言う言葉がありますが、これでわかるとおり、このキハ65はこれまでの1軸駆動方式ではなく、新開発の2軸駆動方式なのです。
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 ちなみに第2減速機は第1動輪(運転台の有る方から数えて、1番目の車輪)にあり、この図に示されている第1減速機は前から2番目の第2動輪に付いているものです。

 この駆動方式の全体図はこうなっています。
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 これまでの気動車とは全く違いますね。
 推進軸が液体変速機から第1減速機を通り、更に第2推進軸に至っています。しかしよく見ますと液体変速機からもう1本の推進軸が第1減速機に向かっています。
 これは推進軸ではなく反力軸と言います。
 この反力軸に付いての説明文をキハ181系の教科書から抜き出します。

 機関、変速機の振動を車体に伝えないために、振動上最も影響の大きいローリングに対して非連成に車体から吊り下げる構造としてあり、そして変速機と減速機を反力軸で結び、反トルクを全てバネ下で受け、車体に伝えないようにしている。
この構造は一端は減速機に付くフランジ付ヨーク組立、それから中間軸、他端は上下にゴムをはめ込んだリンク(吊り手)から成っており、この吊り手を変速機の受けに取り付ける。ヨーク、十字軸、軸受の形状は推進軸よりはやや小型で、軸受けはドライベアリングを使用している。

 と、書いていますが皆さん理解できます?

 要は振動を受けているものと思って下さい。
 この反力軸の存在がキハ181系とキハ65の特徴です。これ以降に登場したキハ66,67にはこの反力軸は採用されていません。

 さて、このキハ65の推進軸に付いて知るには、逆転機の構造を見てみるとよくわかるのです。
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 この図からわかるとおり、図の右側にある逆転シリンダーが上下することで、出力歯車が動いて主歯車か、中間歯車と組み合わされる構造になっています。
 ここで勘のいい人ならもうお解りでしょう。これまでの気動車の推進軸は一方方向にしか回転しませんでしたが、キハ65の推進軸は右回りにも左回りにも回転するのです。
 さらに勘のいい人であれば、キハ65の推進軸はこれ以外の動きをすることに気がつくはずです。
 逆転シリンダーの上下で出力歯車の位置が変わります。この出力歯車には推進軸が繋がっているのです。つまり推進軸の逆転機側は逆転シリンダーの動きに伴い斜め上下に動くのです。
 私も初めてこの動きを見た時、ホンマに驚きました。逆転機を操作すると推進軸が「スコーン」、「スコーン」と圧縮空気の動作音と共に、上に下にと回転せずに動いていたのです。
 こんな動きをすることをどこの鉄道誌でも書いていません。これは図面を見ただけでは分からないと思います。皆さんもこの略図を見てどう動くか考えて下さい。

 さて、次はいよいよ台車の秘密に迫ります。この台車はかなり変わった構造をしており、同様の台車は国鉄でもあの形式しか採用されていません。

 これがキハ65の最大の特徴かもしれませんね。
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コメント

  • mixiユーザー

    mixiユーザー2016年07月15日 10:50
     コレはまた凄い勉強になりますね。

     そういえば昔の記憶をたどると、気動車の床下(の特に推進軸)を見ていると、キハ65やキハ181系は停車中は推進軸は止まっていて、動き出してから回りはじめていたのに対して、それ以外の形式は停車中も推進軸はずっと回りっぱなしだったように記憶しています。
     2000系などの近年の気動車も停車中は推進軸は止まっているものと記憶してます。

     メカニズムやメンテナンスの面はともかく、乗り心地という点では逆転機を変速機に内蔵してしまったタイプの方がばね下重量が軽くなって、乗り心地が良くなりそうな気がしますが、そのあたりはどうなんでしょうかね?

     反力軸は、素人考えですが、機関の大出力化に伴って反トルクによる乗り心地の悪化に対する懸念として設置されたものの、実際はあまり影響がないことが判ったので後年の66/67以降は無くなった、、、と想像してますw
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2016年07月15日 18:09
    「新系列気動車」と呼ばれたキハ65や181系の真骨頂ともいえそうな部位ですね〜!

    反力トルクは振子気動車では結構深刻な問題でしたっけ。2台機関搭載はその理由だとか。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2016年07月16日 23:23
    > SHIKOKUさん。

    >それ以外の形式は停車中も推進軸はずっと回りっぱなしだったように記憶しています。

    それはつれ回りという現象です。惰性で回っていることがあるのです。

    逆転機を変速機に内蔵したのは、これまでの逆転機は時々前進位置から突然、中立位置にすっぽ抜けることがあったのです。その原因を調べていくとこれまでの方式に問題があることが判明し、逆転機は変速機に内蔵という構造になったようです。

    反力軸に関する考え方は正にその通りです。
  • mixiユーザー

    mixiユーザー2016年07月16日 23:29
    > 渦潮uzusioさん。

    振子気動車の場合、仰るとおりエンジンからの発生トルクを向きの違う2台のエンジンの位相で打ち消しているわけでして、巨大な大出力エンジン1台搭載車ではまず実現しなかったでしょう。

mixiユーザー

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