童（わらべ）の夢

高校の友達の影響でＦ１を見始めた私だだったが、大学に入るとＦ１に興味のある人になかなかお目にかかれなかった。時代はＦ１ブームの真っさ中だったはずだが、首都圏と関西とでは違いがあったのか。

ただ一人だけ、サークルの先輩でＦ１を好きな方がいた。知り合ったときにはすでに社会人１年目だったが、ウチのサークルは卒業してＯＢ・ＯＧになっても遊びに来る人が多かった（私も卒業して１０年以上現役学生とかかわった。素人ばかりの雪山ツアーに同行してスノーボードを教えたこともまであった）。先輩が来たときは気前よくおごってもらえたし、麻雀も高めのレートでやってくれるので私にとっては楽しみだった。

その先輩は工学部を卒業して日産自動車に就職していた。専攻は石油化学だったから有機系の素材、それかエンジンの燃焼あたりに携わる予定だったのか。レースが好きなのにに加え技術にも詳しかったからよく話をした。

入社してすぐに買った（買わされた？）１８０でドライブにも連れて行ってもらった。その頃は大体京都周辺の山やびわ湖に行くのが恒例だった。

ある時に大原に行った。大原に行く手前に八瀬というところがあって、ここに童夢の本社があって、車の中からでもはっきりと見える。ジオットキャピスタとかがあるのかな。今フォーミュラマシンを開発しているのかな、などと話していた。

２年目くらいから忙しくなったのか、サークルに現れることもめったになくなった。ところが、忘れかけていたときに突然ニュースは飛び込んできた。

なんと先輩は日産をやめて童夢に就職したというのだ。

京都に引っ越してきた先輩に色々話を聞いた。最初は風洞実験のためのクレーモデルを作らされる日々だった。レースのことをわからない他の人たちは、レーシングチームに転職して粘土細工か、と笑っていた。

その後は本当にサーキットを転戦するようになった。レースのある日は連絡が付かないのがわかってるので、飲みに誘うかどうかの判断のしやすいこと。

少し後になって大学で教えていたこともあったようだ。もうかなり音信不通になっているがどうされているのだろうか。機会があったらぜひ会いたい。レースの話もしたいが、なにせ麻雀でいっぱい稼がせてもらったもんで。